守るべきもの いつものように剣術の稽古が終わり、いつものように教師が帰るまでラディムと見送る。当たり前の日常を送っていたはずなのに、今日は違った。
「あなた、火の国の出ですか?」
剣術の教師が、何気なくラディムに尋ねた。すると奴は、今までにないほど動揺した。視線を泳がせて答えに窮している。尋ねた張本人は撫でつけた髪型を気にしながら、あまり気にしていない様子で続ける。
「火の国の出身なら、『呪い』のこともご存知なのですか? ……すみません、五年前に呪いが発動して、今は廃墟と化していると小耳に挟んだものですから」
「……さあ、知らねぇな。オレはあの国を捨てたんだ。どうなろうが構わないよ」
「そうですか。いえ、お気を悪くされたらすみません。……私の友も、火の国出身だったものですから」
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