12/1発行ぶぜさに新刊冒頭「もし、刀の俺たちの意識にも”生まれ変わり”ってものがあるんなら、またアンタを探し出してそばに行くから」
だからどうか泣くなよ。
薄れる意識の中で微笑んだ。横たわる腕の中では女が鼻を啜る音がする。これが最期の時間。もう視界も朧げだ。完全に目を瞑った方がはっきりと顔を思い浮かべることができただろうに、折角得たこの身体をまだ動かせるならと懸命に瞼を持ち上げて審神者の濡れた頬を視界に焼き付けた。少し丸くて、柔らかくて、透き通った白い肌。何度も触れて、時にはこうして涙を伝わせたことだってある。
「あるじ、」
顔が見たくて呼び掛けた声は格好つかずに掠れていた。女がこちらを見上げて、視線を合わせたかと思えばまた顔を歪ませる。泣き腫らした瞳は可哀想なほどに真っ赤だった。漆黒の瞳は美しい水の膜を帯びており、涙に濡れたまつ毛がどこか愛おしく感じた。
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