桑さに本進捗 強くなる斜陽に落ちる影が濃くなる。
「君って、いつもすぐに謝るよね」
気付けば足元を見ていた顔を上げる。思わず立ち止まってしまった私と違って、桑名江は数歩前に進んでから歩みを止め振り返った。
元々読み取りにくいその表情は、西に傾いた太陽を背負った所為でさらに見えづらくなっていた。
「何でも謝れば済むと思っているの?」
敵意を向けられていると感じた。柔らかな声音に棘が生えている。
裏切られた気分だった。優しさを感じた途端これだ。贈り物だと思って受け取ったらいつの間にか両手が血だらけになっていたような、そんな感覚。
「…………あなたには関係ないことでしょ」
声が強張る。ショックと同時に、ふつふつと湧く苛立ち。
黒潰れて見えない口元がうっすらとほほ笑んだ気がした。
「まあそうだね、僕は君の刀ではないし。彼らに大事に大事にされている君が、僕を振るえるとも思わないよ。ほら早く帰ろう、君の帰りをみんなきっとまだかまだかと首を長くして待っているだろうから」
踵を返して歩き出す彼は私のことなどどうでもいいみたいだった。信頼関係を築くなんて夢のまた夢なのかもしれない。嫌われている、きっと。
重くなった心は身体すら重たくさせた。呼吸する間にも広がる距離になんとか一歩踏み出してその後ろを付いていく。はぐれないように歩くことなんていつぶりだろう。よく考えれば、どんなに身長差があろうとも誰かに置いて行かれることなんて審神者になってから一度たりともなかった。みんな、いつも私に合わせてくれていたのだと今更になって実感する。
──変わらないといけないのは自分が一番わかっている。