夜道にご用心 今年も守護天節の時期が訪れた。既に施設の子ども達にはお菓子を配り終え、その足でイシュガルドへと向かっていた。仮装は子ども達がするものだから、そう言って普段の戦闘服で行こうとしたら何故かがっしりとアリゼーとヤ・シュトラに肩を掴まれたかと思うとそのままずるずると奥の部屋へと連れ込まれたのだった。
改めて自分の格好を見下ろしてみる。今は肩から掛けた外套に身を包んでいるが、その下は少し自分には露出が多すぎる衣装だ。肩も胸元もがっつり開いているが、子ども達は喜んでくれたようで助かった。が、次には向かうのはイシュガルド。蒼天街の子ども達にお菓子を配ることは変わらないが、かの地には顔見知りが多い。特に噂好きのエマネランに見つかればあっという間に噂は広がるだろう。彼に限って悪口を言われるということはないだろうが、それでもその噂が彼の人に伝わったらと思うと――ぶるりと身を震わす。穏やかな表情で優しい笑みを浮かべて女性を虜にしてしまう彼は存外欲深い。内に秘めたる熱が強いからこそあそこまで上りつめることができたのだろうと思うが、それは恋人に対しても向けられるらしい。いくら英雄と呼ばれようと一介の冒険者である私に見向きする者がいるかというとそんなことはない。
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