本当に忙しい人は休み方がわからない、とはどこの誰が行ったのだったか。
イーリス聖王国の首都、その中心に堂々とそびえるイーリス城は主に王族の居住区である右翼と、政を司る左翼に分けることができる。
ルフレは左翼ー…その中でも最も格式高い、この国の王が執政に励む一室で内心大きな溜息をついた。
それというのもつい先刻、目の前の半身とも呼べる友が無慈悲な通告をしたからだ。友は頭痛を抑えるような顔をして重々しくいったものだ。
「ルフレ、働き過ぎだ。」
「ええ?そんなことないと思うけど。」
「いいや、証拠は上がっている。お前今日を入れて既に一ヶ月城に泊まり込んでるそうじゃないか。
その間休みなく財務処理、交易品の検品、南西の港から修繕要請を受けていた大橋の費用の申請と地元の工夫の選定、自警団にも顔を出して武器庫と食料庫の在庫管理、就寝時間は日を跨がない時のほうが少なく、日を追うごとに瞬きの回数が平均4回増えているとー」
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