相合傘「ここで一句」
「ど、どうぞ」
タリアさんの急な話題転換に戸惑いながら返事をする。
「相合傘 濡れてる方が 惚れている」
「…えっ、あ、これはそのっ!」
どこかで聞いたような言葉だけど、自身の濡れた肩を見て俺の事を言及されているのだと気づく。
「貴方は優しいから。きっと、誰と相合傘しても、濡れるんでしょうね。」
「そんなことは...」
「あるわよ。私にはわかるわ。おばあちゃんを入れても貴方は濡れてるわよ。」
「...だとしても、おばあちゃんには惚れてないよ。善意からだよ。」
「それも知ってるわ。」
少しだけ考え込んで沈黙になる。その間の空白は雨が埋めてくれるので、ありがたい。
「......でも、タリアさんには善意以外の気持ちも含まれてます。」
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