君は俺の恋人「いらっしゃいませ!」
「〝サムの限定ドリンク〟ですね? 今ご用意します」
「こっちの小物とあわせて……全部で860マドルです!」
「ありがとうございました!」
購買部に響く、流れるような接客の声は朗らかで、客に良い印象を与えるものだ。当然ながら声を出す彼女本人も終始店員として満点の笑顔で接客をしているものだから、購買部を後にする客──普段から監督生を目にしているはずの奴らでもどこか緩んだ顔で出ていっている。
そして俺はその様子を横目で見ながら、眉間に皺を寄せているという状況にいた。
彼女から「アルバイトをしようと思っているんです」という話を聞いたのは少し前のことだった。
オンボロ寮に住む彼女とグリムの生活費は学園長から支給されているが、それも必要最低限に少し色を付けた程度のものだそうだ。それだけで生活することはできるが、やはり大食漢のグリムの必要最低限以上の食費や、学園生活に直接必要はないが彼女の必要とする雑貨や衣服の類など、欲するものは次々にでてくる。
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