恋の卵1「今日は冷えるな」
時刻は「明日」をまたぐ頃。風呂から上がってバスタオルで髪を拭きながら、アキはそんな一言を漏らした。
勤務を終えて帰宅する道中では、ちらちらと粉雪が舞っていたが、風呂に入る前に窓から見た外は大粒の牡丹雪が降っていた。確か夕食時に見たテレビでも、今夜は一番の冷え込みだと言っていたか。
北海道出身のアキにとっては東京の冷え込みなんて大したことでは無いのだが、やはり風呂あがりとなると寒いものは寒い。このまますぐに布団に潜り込んでしまおうと、寝間着を着ると髪をドライヤーで乾かし、歯磨きまでも一息に終えてしまう。
明日が晴れることを祈りながら洗濯機の予約運転を設定し、冷え切った廊下に出て自室までを急いで戻る。
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