藤丸立香に魅了の魔術をかけた。
結果は驚くほどあっさりかかってしまった。
彼女は魔術師ではないので当たり前である。当たり前なのだが、ここまで耐性がないとは少々驚いた。そして少々驚いた自分に驚いている。オレは彼女に何を期待していたのだろう。
とはいえこれで条件はクリアした。この手の結界はシンプルゆえに強固な強制力を持つものだが、条件さえ満たせば解除は容易いのがセオリーだ。現に先ほどまではなかった空間に出口らしき扉が出現している。
「出よう」
促せば素直についてくる。魅了の魔術などなくても彼女はオレの言葉に従っただろう。彼女はオレを無防備に信用している。
結界から脱出し次第解除するつもりで扉を潜った。あっけないものだ。何がしたかったのかまるで意味のない結界だった。
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