じとりと、多量の水分を含んだ風が頬を撫でる。湿気が多く、自身の身体すらも膨張しているような感覚はかなり鬱陶しい。雨季に入ったばかりのこの季節は、国中そこかしこで水浴びや水遊びが行われていた。
王宮内の庭園の隅にあるベンチは、この時間帯木陰に隠れていて丁度良い寝床だった。祭事を執り行うから、と連絡が来たのは二ヶ月前。出席する気などさらさらなく、サボりを決め込んでいたにも関わらずレオナがここにいるのは、それを見越した王宮から学園長に連絡が入ったからだった。半ば強制送還となったレオナは、度々祭事の段取りを抜け出しては王宮内で昼寝を貪っていた。
「おじたーーーん!水浴びしようよっ」
うとうととし始めた頃、背後からキン、と耳に刺さるような声がした。振り向いて目を向けなくてもわかる。この場所で屈託無く自分のことをおじたんなどと呼ぶのは、一人しかいなかった。
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