十年を埋める「あれ? おまえの行きつけだったか」
ラッコがサウナで声を掛けたのは、くりまんじゅうだった。くりまんじゅうは外のベンチで整いながら、遠目にラッコの姿を確認していたがその時は、気まずいが声を掛けてくることはないだろうと高をくくっていたのだ。しまった、逃げておけばよかった。
「ああ」
「実は最近子供たちに教わったんだ。懇意にしているのがいてな」
「ハチワレの猫とうさぎか。あとそいつらのあとを一生懸命くっついていく白いの」
「よく知ってるな! 妙に懐かれて、先生なんて呼ばれてる」
嫌味か。くりまんじゅうは自分の手元にワンカップがないことを後悔する。
「あいつら成人だぞ」
「え、小柄だから子供だと思っていた」
「ここいらのサウナは治安が悪いから成人じゃないと入れねえよ」
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