紫苑「ドラコルル長官」
己と同じくらいの背丈の男に背後から声をかけられ、ドラコルルは振り向いた。男は真っ黒なスーツに身を包み、胸元に喪主の証として白い花を挿していた。
「将軍は──」
「あちらです」
男は人集りの方を手で示した。政界の名だたる重鎮、軍の関係者、ピシアの者たち。様々な人間が入り乱れる集団の中をすり抜ける男の後を、ドラコルルはついて行く。
「ここです」
会場の奥、花が飾られた壁よりも手前に、大きな棺が鎮座していた。
その周りを、男と同じく壮年の男女、そして若者がそれぞれおよそ10人ずつ囲んでいた。ドラコルルは彼らにお辞儀をしてから、棺の側に立った。
まだ蓋は置かれていない。沢山の花に埋もれ、そこに横たわる人物に向かって、ドラコルルは口を開いた。
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