週末とユートピア ヒューマノイドは、夜を持て余す。
西暦████年、人間とヒューマノイドが暮らすことが当たり前となった近くて遠い未来。科学が発展したユートピアに最も近いと謳われる街、キャパシティ。
日付を跨いだ深夜。空には星々が瞬き、月明かりが土曜日の街を照らす。
仕事を終え、喧騒を求める者はネオン管の指し示す建物に吸い込まれ、静寂を求める者は眠りに就く。
踊り明かして日の出を待つ手段を知らず、眠りに落ちる機能を持たない者──それが人間を模した機械、もといヒューマノイド。
キャパシティの中心の小さな一軒家。そこで暮らしているヒューマノイドの彼女も例外ではない。
10代半ばの女性の人間の姿を模したそれは、読書という形で夜の世界を旅していた。
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