あるいは喝采、そして慟哭(1) 璃月港のまっただなかに、死んだ男が落ちてきた。
——否、死んだ「はずの」男が落ちてきた、という表現が正しいだろうか。脳内の半分を占める現実逃避と共に、ものの見事に地面へと叩きつけられたらしい男へと手を伸ばす。しかし触れた頬は、冷たい。
「……そうか、やはり再会は……このような形で、か」
分かっていた。今ここに落ちてきた理由こそ知らないが、胸の奥で何かがひび割れる音を聞く。落下の音を聞きつけてか、集まってきた人々の声もどこか、遠い。
「うわ、ここどこ!? あっ璃月港か」
しかし直後、ばちりと開かれた深海の瞳。起きあがろうとして失敗したのか、顔を歪めてもがいている。
……彼が今感じている、痛みというものは生命活動において最も重要な感覚だった。つまりそれは、彼の命がまだ続いていることを意味する。
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