姉 私が思い出せる限りの昔から、私の両親は不仲でした。夜中に厠へ行こうと起きたとき、両親が云い争いをしている声が扉から漏れていて、暗い廊下をそれ以上は進めずにうずくまってしまったことがあります。ただ、そのころはまだ、子どもの前では喧嘩をしないという意識は、両親にもあったようです。父と母、バラバラでちぐはぐながら、どちらもにかわいがられた記憶もあります。
待望の江氏の嫡男として弟が産まれ、子はかすがいどころか、それにより両親の仲は決定的にこじれました。
元々、雲夢江氏と異なり、母の実家である眉山虞氏は身分による規律と権威を重視し、家風も、個人の気質も相容れません。母にそっくりな風貌の弟は、成長するにつれて性格も母とよく似ていることがわかり、両親の喧嘩も増えていきました。このころには、もはや親の喧嘩を子どもに隠すということすらしなくなりました。
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