2人っきり獄原ゴン太は風になるかの勢いで山を駆け回る、紳士を目指すが為に着ているスーツが草や木の枝によっていつもよりボロボロになっており、整理されてない道を、大地を蹴り上げ、木を傾げ、風になる勢いだった、そんな今にも野生に帰りそうな獄原の背中に小さな物、獄原と比べたら小柄な少年が背負わされていた。
王馬小吉はもはやいつもの冗談も嘘も獄原に対しての文句も言えないぐらいヘロヘロな状態だった、いつもの王馬ならこの暴れ馬の如く山を駆け回る獄原に対して色々文句を言うが獄原が道でない道を通る為、草木の中を潜るわたまに木の枝にぶつけられるわ、服は草や葉っぱまみれだわ、もはや何も言えないくらい疲弊しきっていた。
山に入る前、王馬は獄原に「今日、ゴン太は王馬くんに対して紳士的じゃない事をするけど良いかな!?」と言われた、王馬はそれを簡単に承諾した、ただでさえ紳士に程遠いゴン太が紳士を捨ててどんな非紳士な事をするのか、とても興味を持ったのだ、だが獄原が王馬を背中におぶった途端、すごい速さで駆け出し山に入り始め、王馬はこの判断は間違いだったなと疲労の中後悔していた。
数時間、いや数時間も経ってないのだろうか獄原はある場所でぐったりとした王馬を降ろす、そんな王馬の状態に獄原は慌てる様に心配し謝罪する。
「ごめんね王馬くん!ゴン太どうしても王馬に見せたいモノがあって…!それで、その、ごめんっ!!」
「あー…せめて山に入る事は教えてほしかったなー…」
疲れている王馬だが、周りを見渡す、もう夜になっている為辺りは暗くまだ目が慣れていないが水が流れる音がしていた為、山の中にある川の近くに連れてこられたのだろうか、夜空を見上げると星々が光り輝いていた。
「ゴン太はコレを見せるが為にオレをここまで連れてきたの?いやー、泣けるねー」
王馬は棒読みにそう言いつつも夜空を眺める。
内心2人っきりでこんな夜空を眺められるなんて、意外とゴン太ってロマンチストな所があるなと、…もっと通る道を考えてくれれば紳士的で紳士に近づけたんじゃないか、とも考えると獄原が呟く。
「えっと、星さんもそうなんだけどね、ゴン太が王馬くんに見せたいのはね」
そう言ってる途中で獄原は周りを見渡す。
すると、王馬と獄原の周りに小さな光が舞い回る様に姿を現した。
「見て!王馬くん!蛍さんだよ!」
そう言い獄原は川の中に足を入れる程はしゃぎ回る、獄原が川辺に連れてきたのはコレを見せる為だったのかと王馬は蛍の光を目で追っかけながら納得する。
星といい蛍といいコレがゴン太なりのオレへの誕生日プレゼントなんだろう、ちゃんと何処へ行くかも言わず無理矢理連れてことには色々言いたい事はあるけど、嘘をつけないゴン太なりに内緒にしたかったんだろうな。
「へぇ〜、ゴン太にしては悪くない誕生日プレゼントだね!」
「えっ!なんでわかったの!?」
「にししっ!オレが自分の誕生日忘れてるとでも思った?バカなゴン太じゃあるまいし。」
そう言い笑う王馬に
「ゴン太はバカだから、王馬くんにどんなプレゼントをあげれば紳士的なのかわからなくて…だから!王馬くんが蛍さんや星さんで喜んでくれて、嬉しいよ!!」
そう喜ぶ獄原、
蛍達の小さな光の中で無邪気な笑顔を見せる獄原に対して、少し心臓の鼓動が早くなった気がした王馬、この日は蛍が眠りにつくまで2人っきりの誕生日会を過ごした。