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    1_raru3

    ブレワシリーズ書いてます。
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    ブチ切れた座長が暴走する話。想いが暴走している話。
    司に対する自己解釈が前提部分なところがあるので注意。あと司の口が悪いので注意。

    覚醒のヴィオレンツァ とある壊れたセカイの中、ワンダーランズ×ショウタイムの面々は強力な穢れの結晶と戦っていた。だが、その結晶は本当に強力な存在であった。彼らもある程度のダメージを与えることはできたが、それ以上にこちら側の被害が深刻であった。全員満身創痍である。やばい、と感じとったナビ役のKAITOは少し前から他のセカイの面々へと救援要請を出すことに奔走していた。
    「ブーツが…!これじゃあ跳べないよぉ…」
    「はぁっ、はぁっ、類、大丈夫…?」
    「参ったね、全然動けない。せめてカイトさんが戻ってくるまでは持ち堪えたいのだけれど…」
    「カイトが戻ってきたらセカイからの緊急脱出でオレ達のセカイ、もしくはセカイの狭間まで戻って来れるのだがな…」
     まず、積極的に敵の狙いを取りに行った司が吹っ飛ばされた隙を突かれて、チームのブレインたる類がやられた。次に、類のそばにいてかつ体力の無い寧々がやられた。えむは奮闘していたが、ブーツの刃を破壊され、体勢が崩れた瞬間に吹っ飛ばされた。人一倍頑丈な司も、復帰後仲間達がこれ以上の追撃を喰らわないようにと奮闘したが、努力も虚しく動けなくなってしまった。ワンダーランズ×ショウタイムは、誰1人として動くことができない状態に置かれていた。そこに、敵がゆらゆらと近づいてくる。大方、彼らに止めを刺すつもりだろう。
    『オレ達はこのままこいつにやられてしまうのか?』
     そんなことが司の脳裏をよぎる。
    『それは嫌だ。オレ達はまだまだ前へ進む。』
    『大好きで大切なこの場所を守りたい』
     さまざまな想いが、司の中から溢れてくる。
    『オレがあんなことをして、一度崩れかけて、でもみんなが戻ってくれたことでまた立ち上がって。あんなことをしたオレを受け入れてくれて。』
    『もう二度とあいつらを傷つけさせたりなんてしない。させない。あいつらが崩れてしまったらと思うと、怖くて怖くて仕方ない』
    『あいつらを傷つけているあいつが許せない。オレの居場所を崩そうとするあいつを絶対に許さない。』
    『あんな奴からこの場所を守りたい、守ってみせる!』
     司は、謎の力が溢れてきたような気がした。それを知覚した瞬間、司の意識は急速に遠のいていった。
     ゆらりと、司が立ち上がる。彼もまた満身創痍であるはずなのに、立ち上がった彼を驚いたように3人は見つめる。その顔を覗いた瞬間、司の様子がおかしいと直感する。目は虚で、しかし敵の姿をしっかりと見つめている。俯いた顔に影がかかっており、今のままでははっきりとした表情は見えない。
    「…さない。」
     司が何か呟くと、旗が淡く光り始める。これは、司の能力が発動した証拠。だが、こちらもおかしい。本来ならば旗が煌めくように、黄色に近い色で光るはずなのに、今の光は赤に近い。激情のような、怒りのような赤。
     赤い光に導かれるように、彼らのセカイに存在するぬいぐるみ達が呼ばれていく。彼らもまた、様子がおかしかった。纏う空気が違う。いつもは無邪気で、元気で、賑やかで、戦う時も司の指示に従って頑張っている。今は、怒りと、恨みと、その他いっぱいのマイナスの感情を詰め込んだような、周りを震え上げるような、怖い空気。いつもは笑って泣いてとわかりやすい表情も、無表情。えむは初めて、ぬいぐるみ達に恐怖の感情を覚えた。
     寧々と類は、敵の動きを気にかけながらも、様子が明らかにおかしい司を観察していた。司は、今度は3人にも、敵にもはっきりと聞こえるような声量で、叫ぶ。
    「許さない、お前を絶対に許さない!オレの居場所を、大切なワンダーランズ×ショウタイムを、傷つけ、崩して、破壊しようとするお前を許さない!」
     司は、顔を勢いよく上げた。俯いていた顔が上げられたことで、今は彼の表情がよく見える。変わらず、いつもの司ではないような、正気でないような瞳。言葉の通り、その存在自体を許さないような、今まで戦ってきた相手に対するものとは違う、明らかな憎悪と殺意が読めるような表情をしていた。寧々も類も、そのような司を見たことがなかった。
     司が旗を振るう。ぬいぐるみの瞳が、旗と同じような赤に光る。旗を敵へと向けて振るうと、大量のぬいぐるみ達は一斉に敵へと向かってとんでいった。的確に、相手を足止めし、傷つけるような動き。いつもの彼らよりも明らかに一撃が重いように見える。司の力だろうか。
    「お前を、絶望さえも生温いような目に遭わせる。お前にそのような感情があるかどうかはわからんがな。だがお前は、オレの大切なものを傷つけた。当然の報いだ。」
     えむと寧々は、司達の空気に飲まれて震えていた。類も、司が本来言うことはありえないような悪意に塗れた言葉を聞いて、唖然としていた。
     ぬいぐるみの一撃は、変わらず的確に叩き込まれていく。相手の動きがふらふらとしてくる。これ以上相手は攻撃はできないし、止めをさしたら消滅するだろう。明らかにオーバーキルだ。だがぬいぐるみの攻撃も、司の指示も止むことがない。この状況を見て、類がは、と正気に戻る。
    「司くん!もうやめてくれ!これ以上は無意味だ!早く止めを…」
     類の呼びかけに反応して、司が類の方を向く。指示は、止まらない。
    「何故だ、類?あいつは、お前達を傷つけたんだ。こんなものじゃあ、まだ足りない。お前が満足していても、オレが満足していない。オレの今の苦しみを、あいつに。こんなもので終わると思うな」
     至極当然と言わんばかりに司は返した。類は今の司には言葉での説得が通じないと判断し、無力さに唇を噛む。そこに、セカイからの通信が繋がる音がした。
    “みんな、大丈夫かい!?”
    「カイトさん!」
     カイトからの通信に、司以外の3人は一斉に反応する。少し遅れて、司も返答した。
    「カイトか。大丈夫だ。緊急脱出はもう少し待ってくれ。あいつを、徹底的に潰すから。」
     通信と、その場の状況から異常を察知したKAITOは司以外の3人に繋がるように通信を続ける。
    「カイトお兄さん!司くんがおかしいの!とっても怖いの!」
    「カイトさん、どうして司はああなっちゃったの…?」
    “司くんは、暴走してしまっているね。何か大きな想いが引き金となって、その想いを遂行する為だけに動いているのだろう。多分、本来の司くんは意識がない。想いによって本来以上の力が引き出された事で、本来の人格と意識を封印して想いを成す事だけを目的とする何かになってしまっている”
    「その状態は、ちゃんと元に戻るのかい?」
    “ああ、もちろんだよ。目的を成す事ができたら、多分気絶すると思う。本来以上の能力を使って、身体が限界だろうから。目が覚めたら元の司くんだよ”
    「…それでは、彼の気が済むまであの行為を見続けなければいけないのかい…?」
    “…あぁ、そうなるね。辛いようならば、無理をして見なくてもいい。僕がみんなを脱出させるから”
    「それじゃあ、寧々とえむくんだけでも。僕は、彼を見届けるよ」
    「っ、類、わたしたちも…!」
    「寧々。無理はしないで、先に僕らのセカイに戻ってほしい。向こうで先にみんなを安心させて欲しい。そっちに何人か来ているんだろう?」
    “そうだね。瑞希ちゃんや遥ちゃん…主に君たちの知り合いが集まってる。Leo/Needのみんなには辛いだろうから、来ないようにお願いしたけどね。正解だったようだ”
    「…と言うわけだ。寧々、えむくん、先に戻ってみんなを安心させてくれるかい?」
    「…うん、わかった」
    「ぜぇーったいに帰ってきてね!」
    「もちろんさ」
     そして、セカイと繋がる光が現れ、えむと寧々はワンダーランドのセカイへと戻っていった。類は改めて、今の惨状へと目を向ける。
     未だに、攻撃の手は止まらない。類は、先程の司の言葉を思い返していた。彼がこうなってしまった原因。大切な居場所が壊れることへの恐怖。守るための暴走。自分達が彼にとってこうなるほど大切なものであるということを証明がされてしまい、このような状況だが少しにやけてくる。自分達への彼の愛情が伝わってくるみたいで。
     思いを馳せている間に攻撃の手が弱くなっていき、ぬいぐるみ達の動きが敵を拘束するような形へとなっていく。司は、気が済んだのだろうか。旗を持ち直す。穢れの結晶へと距離を詰める。止めは自分が刺すのだろう。駆ける。跳ぶ。旗槍の先を、狂いなく穢れの結晶のコアへと、急所へと目掛けて振り下ろす。
    「終わりだ。消えろ」
     本来この距離ならば聞こえるはずのない彼の恨みと殺意が篭った呟きが、やけにはっきりと類の耳に届いた。
     穢れの結晶は、どろりと溶けて消えていった。司は旗を突き立てて肩で息をしていたが、ふらりと倒れていく。
    「司くん!」
     類は思わず駆け出した。本来なら動かないはずの足。これが火事場の馬鹿力というものだろう。司が倒れ込む寸前に受け止めることに成功した。反応は無い。KAITOの言葉通り、力を使いすぎたことによって気絶したのだろう。
    「カイトさん、終わったよ。司くんも無事だ」
    “あぁ、ありがとう、類くん。さて、僕らのセカイに帰ろうか”
     虹色の光に包まれる。2人は、ワンダーランドのセカイへと帰っていった。

     ワンダーランドのセカイ。司と類は壊れたセカイから帰ってきた。迎えにきたMEIKOに連れられテントのベッドへと司を寝かすと、半泣きのえむが突撃してきた。
    「づがざぐーーー!ぐーーー!無事で良かったよーーー!!!」
    「うぐっ…えむくん、心配かけてごめんよ。あと、司くんが寝ているから少し静かにしよう」
    「あっ…ごめんね!」
    「類、司…無事でよかった」
     寧々が、入り口からそっと入ってくる。少し心配そうな表情だ。
    「司先輩!無事ですか?」
    「類ー!司先輩ー!無事でよかったよ!」
     冬弥が駆け込んできた。それを追いかけるように、瑞稀も部屋へと入ってくる。
    「青柳くんに瑞希。心配をかけたね」
     ベッドがある部屋はだんだん賑やかになっていく。冬弥曰く、天馬家には司は仲間のところに泊まりに行くと咲希が伝えたらしい。これで、司は家族を気にせずしっかり休めるはずだ。
     全員の無事を確認したことで、心配でやってきた他のユニットの面々は帰っていった。それからしばらくしたのち、司が反応を示した。
    「…っうぅ……ここ、は…?」
     それに気がついた3人は一斉に司の方へと向く。
    「司くんっ!だいじょーぶ?」
    「司ぁ!…目覚めてよかった…」
    「司くんが無事でよかった。起きて急で悪いけれど、どこまで覚えているんだい?」
    「っ…えーと…確か…あいつに、やられて…ボロボロになって…っ!そうだ、あいつ!あいつはどうなったんだ!?」
     どうやら司は暴走した記憶は無いらしい。どういう風に司にあれを伝えるか困っていた。そこに、KAITOが訪れる。
    「司くん、無事でよかった。あいつは、大暴れしたことによってあそこの天井が崩れて、その下敷きになったよ。君達はその寸前に緊急脱出させた。あの後、僕もしばらく様子を見たけれど、反応がないから消滅したんだと思う」
     KAITOはつらつらと、誤魔化す言葉を連ねる。司に対して嘘をつくのを躊躇う反面、あの状況を記憶のない司に説明する事が憚られた3人は内心KAITOに感謝した。
    「そうだ、みんな大丈夫だったのか?みんなが倒れていくのを見て、オレは怖くて…守りたくて…」
    「最後まで寝込んでいたあんたが何言ってんの。あんたが目覚めないことにこっちはハラハラしていたんだけど」
    「今の今まで寝込んでいたんだ。咲希くんに連絡して泊まると伝えるようにお願いしたから、君はしっかり休んで欲しい」
    「…あぁ。心配をかけてすまなかったな」
     その後、仲間達を心配させた負い目と咲希によって退路を絶たれたことから司は朝までセカイで過ごすことにした。えむは残ると言い張ったが、彼女は家の人も心配するだろうからと説得してなんとか家に帰らせることにした。夜にこっちに訪れると宣言して、セカイから帰っていった。類と寧々も同じ約束をして一度帰っていった。
     司はそれを見届けた後、バーチャルシンガー達セカイの住人に世話をされながら、うとうとと眠りへと落ちていった。

     眠りへと落ちていく。あの、恐ろしい記憶を思い出す。仲間を失いたくない。あの意識が途切れた後、自分が何をしたのかは覚えていない。だが、みんなが無事だったから。自分は、みんなを守れたのだろう。安心した。そして、深い眠りへと落ちていった。
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