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    エス

    zeppei27

    DONEなんとなく続いている主福のお話で、単品でも読めます。リクエストをいただいた、諭吉の「過去のやらかしがバレてしまう」お話です。自伝の諭吉、なかなかの悪だからね……端午の節句と併せてお楽しみください。
    >前作:枝を惜しむ
    https://poipiku.com/271957/11698901.html
    まとめ
    https://formicam.ciao.jp/novel/ror.html
    昔の話 気まぐれに誰かを指名した後、その人の知り合いを辿ってゆけば、いずれ己に辿り着くらしい。世界広しといえどもぐるりと巡れば繋がっていると聞いたところで、福沢諭吉には今ひとつわかりかねる話だった。もっともらしい話をした人物が、自分に説諭しようという輩だったから反発心を抱いたということもある。その節にはいくらか激論を戦わせてもの別れになり、以来すっかり忘れてしまっていた。
     だが、こと情人である隠し刀に関していえば、全ての人と人が何某かの形で繋がっているのではないかという気にさせられる。勝海舟邸に出入りするようになって日が浅いが、訪れる人が悉く彼の知り合いだった、などは最早驚くに値しない。知らぬうちに篤姫からおやつを頂戴していた際には流石に仰天させられたし、勝の肝煎である神田医学所はもちろん、小石川植物園にまでちゃっかり縁を繋いでいる。幕府の役人でさえそう縦横無尽に出入りすることはままならない。彼の自由さは本物であり、語る冒険譚は講談の域に達している。
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    slow006

    DONEリプorマロ来たセリフで短編書くで、リクエストしてもらいました!
    思い出を全部大事に抱えているのは、及川の方だと思っている。
    ねぇ、こうちゃんいつのまにか眠っていたようだった。
    日曜の昼下がり、暖かな春の空気に包まれて菅原はすっかり眠くなってしまった。ぼんやりとした頭と気怠い身体に逆らうことなく、居間にあるソファーに深く腰掛け、微睡むこと早一時間。せっかくの休日が……と、のろのろ身体を起こすが、左手だけ自由が利かず、立ち上がるまでには至れない。仕方がないかと半開きになったベランダへと続くガラス扉のほうを見る。すると、網戸越しにベランダの手すりの上をするりと通るかたまりが見え、菅原は二十代の頃に暮らしていたアパートを思い出した。同じようにベランダの手すりの上を滑るかたまり。斑ら模様を歪ませながら手すりの上を器用に歩くのは、菅原の住むアパートの、二軒先の戸建てで飼われている猫だった。さぞ良いものを食べているようで、外を出歩いているのにも拘らず毛並みが良く、水晶玉のような瞳はきらきらと輝いていたのを覚えている。いつだって仏頂面をしているその猫はどこか及川の幼馴染である岩泉を彷彿とさせるため、菅原は勝手に「岩泉」と呼んでいた。それに対し、及川は「スガちゃんさあ、よく見て!岩ちゃんはもっと愛嬌ある顔してるし!」と遺憾の意を示したが、菅原がそれを受け入れることはなかった。そもそもこの猫が家人に「ミーコ」と呼ばれていることを知っている。それでも、菅原にはもう岩泉にしか見えないので「岩泉」なのだ。
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