久遠冬花
moonrise Path
DOODLE冷蔵庫でタイムトラベルをする久遠冬花煙社降臨節暦 第十夜/ふどふゆ ガバッと世界の開く音がして閉じていた瞼を開く。意識は宇宙の深い眠りの底からたおやかに、しかし人間には信じられないスピードで浮上し、タイムトラベル酔いの涙で潤んだ瞳の中に蘇る。水面を越して見上げるような揺れる視界は青白く、冬花は自分が冷蔵庫の中にいるのを自覚した。到着したんだわ……、と思ったけれども胸がざわつく。嫌な予感。目の前には明王がいる。髪の長い、大人の不動明王。だけど、変。
冬花は二度、三度とまばたきした。涙が散る。視界がクリアになる。冷蔵庫の前に佇んだ明王は、は、と呟いたまま口を開けている。手にはシュトレンの皿。その瞬間に理解した。
「誤配送だわ」
明王は、お前……、と言いかけてちらっと後ろを振り向き、また冬花を見た。途端に恥ずかしくなった。下着姿なのだ。タイムトラベルの仕様上、仕方ないのにそれを説明する余裕がない。もう一度、飛ばなきゃ。帰らなきゃ。待って、どこへ? 座標が思い出せない。
912冬花は二度、三度とまばたきした。涙が散る。視界がクリアになる。冷蔵庫の前に佇んだ明王は、は、と呟いたまま口を開けている。手にはシュトレンの皿。その瞬間に理解した。
「誤配送だわ」
明王は、お前……、と言いかけてちらっと後ろを振り向き、また冬花を見た。途端に恥ずかしくなった。下着姿なのだ。タイムトラベルの仕様上、仕方ないのにそれを説明する余裕がない。もう一度、飛ばなきゃ。帰らなきゃ。待って、どこへ? 座標が思い出せない。