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    双葉ツカサ

    Tonya

    MOURNINGお題「泣くくらいなら、笑ってやる」
    流ロク 双葉ツカサ、ヒカル
    公園を駆け回っていた幼児がこてんと前のめりに倒れ、ワッと泣き出した。母親らしい女性が慌てた様子で駆け寄っていく。
     ありきたりな光景。甲高い泣き声に注意を向けていた周囲の人々も、事態を把握するとすぐ各々の行動に戻っていく。一人、ベンチに腰かけている少年を除いて。
    『……うるせぇな』
    「あ、ヒカル。起きたんだ」
     頭の中だけで行われる特殊なコミュニケーション。あるいは自問自答。
    「大丈夫かな。派手に転んだみたいだけど」
     顔面をぶつけたらしく、幼児の小さな鼻が赤くなっていた。
    『あんなの本気じゃねえよ』
     気を引くためだ。何を、とはあえて言わない片割れの言葉にツカサは首肯する。たしかに母親に抱き起こされると、幼児はすぐ涙を引っ込めた。
    「きっとそれは……いいことだよ」
     つまずき倒れたとき、手を差し伸べてくれる人がいるのはきっと幸せなこと。ほら、あの子供だってもう笑顔になっている。
     じゃあ、もしそんな相手がいなかったら。
    『ケッ、くだらねえ』
     疑問を浮かべるのと同時にヒカルが吐き捨てる。
    『他人の手を貸りなきゃ立てねえなんざ、雑魚の証みたいなものだろうが』
    「どうだろう。でも、うん… 728