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    朱雀

    Asahikawa_kamo

    PASTrf四神パロ、朱雀が街でお散歩する話。
    フォロワーさん300人記念としてネップリに登録していたお話でした。
    朱雀散歩「あ、みなと!」
    「みなとだー!」
    「おーおーちびっ子元気か~?」
    「げんきー!」
    「そーかそーか、んならええやん」

     朱雀領南西部にある、桔梗の市。この領で一番に大きい観光名所であり商い処でもあるその市には、時々ミナトと呼ばれる華美な見目の青年が訪れることがあった。市で働く者の間では特に有名で、彼がやってくると近いうちに何故か大きい商機が舞い込むなどという迷信さえあるような謎の男として、まことしやかに囁かれていたのだ。
     とはいえ彼自身が何か市へと干渉するわけではなく、ただ他の客と同じように市で物を買い、飯を食い、時折馴染みの子供と遊んでくれるという、ごくごく普通の客であった。やはり昔馴染みも多いからか、見知らぬ者が増えていれば挨拶をし、見知っていたはずの誰かが居なくなっていたらその所在を訊いたりもするが、それは他の馴染みの商人でも良くやることである。人によっては彼を旅人だと言う者もいたが、それにしては旅人らしい様相もしていない。何処に住んでいるのかも分からないとされているため、市で働く者たちは彼がどこからやってきているのか、何者であるかということをてんで知らないのである。
    1972