赤とんぼ
⛰暮正⛰
DONE第四回膝髭ワンドロワンライ 「赤とんぼ」不退転 膝丸がこちらを見たまま動かなくなって、いったいどれくらいが経ったのだろう。髭切は、困ったなあと思いながら、残り少なくなった湯呑を弄んだ。膝丸が淹れてくれる緑茶はいつも熱くて、猫舌のきらいがある髭切はことさらゆっくり飲む。話題が転じたときにはまだ半分以上あったから、それなりに長いこと見つめられているという体感も気のせいではないだろう。
縁側に出て茶を飲み始めたときは、他愛もない話をしていたのだ。
外気がすっかり涼しくなって、日中はずいぶん過ごしやすくなった。
部屋から見える柿もまだらに染まり始めて、枝のしなりが強まってきている。
昼夜問わずに鳴く虫の名を挙げ連なったりしながら、秋霖の合間の晴れの日をささやかに楽しんでいた。
1697縁側に出て茶を飲み始めたときは、他愛もない話をしていたのだ。
外気がすっかり涼しくなって、日中はずいぶん過ごしやすくなった。
部屋から見える柿もまだらに染まり始めて、枝のしなりが強まってきている。
昼夜問わずに鳴く虫の名を挙げ連なったりしながら、秋霖の合間の晴れの日をささやかに楽しんでいた。