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    雪見

    桜庭🌸

    DONE #杏千版ドロライ お題「フリー」お借りしました。
    杏千 / キメ学軸
    「雪見だ〇ふく」と「一夜の秘密(ド健全)」を共有した兄弟が、やがて杏千になっていくお話🍨
    はんぶんこ「千寿郎、兄と悪いことをしよう」
     にやりと笑った兄は、汗をかいた俺の手を引いてベッドを出た。両親の部屋と空っぽの自分の部屋の前を忍び足で通り、階下に降りる。キッチンに繋がるドアの蝶番の擦れる音すら気になって、慎重にドアを閉める。ぱっと明かりがついたのに驚いたが、センサーライトによるものだ。足元から広がる光の中で、兄が冷凍庫を開けている。流れ漏れた冷気が、ひやりと頬をなでる。その横で何かを探す兄の横顔は、実にうれしそうだ。「悪いこと」をしようとしているとは思えない。兄の真意がわからない。廊下に続くドアの擦りガラスが明るくならないことを祈っていた。
    「ほら、千寿郎。お待たせ」
     兄の声にほっとして振り向くと、「悪いこと」にしてはちっぽけな、見慣れたものが差し出された。すでにパッケージは剥がされているが、そのアイスの名はすぐにわかった。真っ白な大福が、和菓子切用のスペースまで設けられた専用の容器にぽよんと二つ並んで納まっている。外の柔らかい皮と固すぎないアイスの組み合わせがたまらない、俺の大好きなアイスだ。
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