Divine
しじみ
DOODLE櫻城州の都、有明にある喫茶店を訪れた女学生から見た景色。喫茶海猫 櫻城の都、有明にはいくつかの喫茶店があって、有明の人々はお年寄りから学生まで喫茶店で一服することを楽しみにしている。大体どの人にもお気に入りの店があり、それぞれの店の個性を好んだおなじみの顔ぶれが集まるのが常だ。
この喫茶海猫は数ある喫茶店の中でもことさらに店主のこだわりが強い店として有名で、西海の喫茶の雰囲気を再現することに余念がない。その思い入れが本物であることを証するように、この店には他の店よりも神国海軍属の客が多かった。文州をはじめ世界中に赴き現地の文化に触れてきた彼らに愛されていることが更に評判を呼び、喫茶海猫でパンケーキを前にティーカップを傾けることは大人びた楽しみとして学生たちの憧れになっていた。
4754この喫茶海猫は数ある喫茶店の中でもことさらに店主のこだわりが強い店として有名で、西海の喫茶の雰囲気を再現することに余念がない。その思い入れが本物であることを証するように、この店には他の店よりも神国海軍属の客が多かった。文州をはじめ世界中に赴き現地の文化に触れてきた彼らに愛されていることが更に評判を呼び、喫茶海猫でパンケーキを前にティーカップを傾けることは大人びた楽しみとして学生たちの憧れになっていた。
しじみ
DOODLE創作海軍の海が出てこないSS。極華神国櫻城州。伝統と西海の文化が入り混じる有明の都に暮らす州立大学の学生、犹守弥栄は学費を稼ぐために軍の社会貢献活動に協力する仕事をしている。
仕事の内容は有明で起こる原因不明の奇妙な事件の調査。
「人喰い廊下」で子供が消えた。そんな話を聞き、弥栄と軍人安達真純はある学校に向かう。
人喰い廊下 休憩時間を知らせる鐘が鳴ると待ちわびていたように扉という扉から生徒たちが飛び出す。座学ばかりで有り余った力のやり場を求めて生徒たちは思い思いの遊びに興じ始める。その日、級友たちとじゃれ合い、ふざけて追いかけ合っていた少年は気付けば三階の廊下のつきあたりにやって来ていた。何も考えていなかったとは言え、このひと気のない廊下にやって来たことを彼は少し後悔した。
――人喰い廊下で転んではいけない。
学校ではそんな噂がささやかれていた。その場所で転ぶとついさっきまでそこにいたはずの人が瞬きほどの間に煙のように消えてしまうのだという。実際に人が消えるところを見たわけではなく普段は噂を思い出すこともないが、今はそんな噂がやけに胸に引っかかり気味悪く感じられた。少年がまごついている間に背後から追いかけてきた級友の声が聞こえてきた。聞き慣れた声に安堵し不安な気持ちを振り切るように再び駆け出そうとした少年は、しかしそのとき不意に何かに足を取られてしまった。すぐにでも立ち上がりたいと思いながらもじわじわと足首から伝わる冷たい感覚が先ほどから身に迫る不穏な気配を強くして、彼は床に両膝をついた姿勢のまま動けない。恐る恐る肩越しに振り向いた少年は、水でも浴びたように全身が冷えていくのを感じた。
9243――人喰い廊下で転んではいけない。
学校ではそんな噂がささやかれていた。その場所で転ぶとついさっきまでそこにいたはずの人が瞬きほどの間に煙のように消えてしまうのだという。実際に人が消えるところを見たわけではなく普段は噂を思い出すこともないが、今はそんな噂がやけに胸に引っかかり気味悪く感じられた。少年がまごついている間に背後から追いかけてきた級友の声が聞こえてきた。聞き慣れた声に安堵し不安な気持ちを振り切るように再び駆け出そうとした少年は、しかしそのとき不意に何かに足を取られてしまった。すぐにでも立ち上がりたいと思いながらもじわじわと足首から伝わる冷たい感覚が先ほどから身に迫る不穏な気配を強くして、彼は床に両膝をついた姿勢のまま動けない。恐る恐る肩越しに振り向いた少年は、水でも浴びたように全身が冷えていくのを感じた。