drsakosako
TRAINING連れて行ってはくれないくせにタル鍾
「先生が知らなくて、俺が知ってる事ってある?」
「俺に訊ねる質問として、前提が破綻していないか」
「そう? 例えば、俺が持ってる巾着の裏地の布が何処産かとか」
「公子殿の個人情報、という事か?」
「そんな大仰なものじゃないよ。今みたいな、些末な事柄だ」
「そうか。……では、そうだな……スネージナヤの……蒲公英酒に似た、……」
「酒?」
「通りがかった酒場で見かけた。酒かどうかは分からない」
「オレンジの香りがした?」
「ああ、レモンのような匂いも、少し」
「分かった。酒が苦手な人でも飲みやすい、オレンジ、レモン、リンゴの果汁を混ぜたジュースに近いものがあるんだ」
「甘そうだな」
「甘いよ。会食とかそういう場ではまず出てこないものだから、確かに先生は飲んだことなさそう」
555「俺に訊ねる質問として、前提が破綻していないか」
「そう? 例えば、俺が持ってる巾着の裏地の布が何処産かとか」
「公子殿の個人情報、という事か?」
「そんな大仰なものじゃないよ。今みたいな、些末な事柄だ」
「そうか。……では、そうだな……スネージナヤの……蒲公英酒に似た、……」
「酒?」
「通りがかった酒場で見かけた。酒かどうかは分からない」
「オレンジの香りがした?」
「ああ、レモンのような匂いも、少し」
「分かった。酒が苦手な人でも飲みやすい、オレンジ、レモン、リンゴの果汁を混ぜたジュースに近いものがあるんだ」
「甘そうだな」
「甘いよ。会食とかそういう場ではまず出てこないものだから、確かに先生は飲んだことなさそう」
drsakosako
TRAINING僕のために怒ってよタル鍾
素肌に触れるシーツは冷たく、窓からそよぐ爽やかな朝の風は髪を優しくさらう。天気は快晴、空の下の璃月の街並みは今日も美しい。この上ない目覚めの朝であるはずなのに、タルタリヤの眉根には皺が寄っていた。
「あのさ、先生」
タルタリヤの目の前には、つい数分前まで自分と同じように無防備に肌を晒し、瞼を重たげにして布の海に溺れていたはずの男。鍾離は常通りのぴしりとした隙のない衣服に身を包んでいた。些かの不満げな声色を全く隠す事もなく、タルタリヤはシーツにくるまったまま、ベッドの端に座る鍾離の背中に声をぶつける。
「そろそろ公子殿も起きてはどうだ」
「や、それもそうなんだけど」
「何処にかかる『も』だ」
「いま俺話しかけただろ? そこの『も』だよ」
812「あのさ、先生」
タルタリヤの目の前には、つい数分前まで自分と同じように無防備に肌を晒し、瞼を重たげにして布の海に溺れていたはずの男。鍾離は常通りのぴしりとした隙のない衣服に身を包んでいた。些かの不満げな声色を全く隠す事もなく、タルタリヤはシーツにくるまったまま、ベッドの端に座る鍾離の背中に声をぶつける。
「そろそろ公子殿も起きてはどうだ」
「や、それもそうなんだけど」
「何処にかかる『も』だ」
「いま俺話しかけただろ? そこの『も』だよ」