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    しののめ

    MAIKING【アルカヴェ】As the river flows swiftly 配膳がいない世界に迷い込む壁の話 超書きかけ
     朝目が醒めてすぐ覚えた違和感は、形にならずそのまま霧散した。外からは朝を告げる鳥の声がしていて、僕はゆっくりと身体を起こす。覚束無い足取りでのろのろと身支度をする。何かを口に出しかけて、けれど次の瞬間には忘れてしまっていた。首をかしげる間もなく、時計に急かされるまま、僕は静かな家を後にしたのだった。
     それが、今朝の話。太陽が頂点に昇って傾き始める頃合いまで、僕は朝の違和感なんてどこかへ忘れ去ったままだった。クライアントとの打ち合わせが円満に終わった夕方、カフェでぼんやりと噴水を眺めていた僕は、とある約束を思い出す。もしかして今日は、あの日じゃないか?
     あの日、というのは、僕たちが月に一度か二度ほどの頻度で開いている相談──もとい、酒の席のことである。発端は友人であるティナリの弟子たるコレイ、彼女の学習進度等について食事会を開いたことだったが、今ではそれ以外のこと──例えば日常の愚痴やちょっとした議論、果ては七聖召喚まで──の比重も大きくなりつつある。彼らがどう思っているかは知らないけれど、少なくとも僕にとっては、楽しいひとときになっていた。だから、普段ならばこうして直前まで忘れている、なんてことはまずないのに──
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