はなねこ
TRAINING幼なじみ高校生現パロのシャディミオ小話です。バレンタインネタ第2話です。(あと2話ほど続きます)ミオリネ・レンブランの冒険2 園芸部のロッカーが入っているクラブ棟へ向かうため、格技場の前を通りかかったときだった。格技場と体育館の間の路地から、袴姿の男子生徒が歩いてくるのが見えた。シャディクだ。
ついさっきまで彼の話をしていたせいか、心臓がとくんと音を立てる。
向かう方向は同じなわけだから、あと数メートル進めば否応なしに合流する。この状況で無視をするのも不自然だ。よし、ここは『先んずれば人を制す』でいこう。
「シャディク」
「やあ、ミオリネ」
声をかけたわたしに、シャディクがにこっと笑いかける。
ええっと、何を話そう。とりあえずシャディクの前まで進んで足を止める。
「弓道部の練習?」
弓道場は格技場の奥に位置している。「あ、でも、金曜日は弓道部、お休みよね」
3651ついさっきまで彼の話をしていたせいか、心臓がとくんと音を立てる。
向かう方向は同じなわけだから、あと数メートル進めば否応なしに合流する。この状況で無視をするのも不自然だ。よし、ここは『先んずれば人を制す』でいこう。
「シャディク」
「やあ、ミオリネ」
声をかけたわたしに、シャディクがにこっと笑いかける。
ええっと、何を話そう。とりあえずシャディクの前まで進んで足を止める。
「弓道部の練習?」
弓道場は格技場の奥に位置している。「あ、でも、金曜日は弓道部、お休みよね」
はなねこ
TRAINING幼なじみ高校生現パロのシャディミオ小話です。長くなりそうなので分けています。(全部で3話か4話くらいになりそう)季節外れのバレンタインネタです。
ミオさんがうじうじしています。
スレちゃんにミオさんの背中を押してほしいなあと思って書いていたら、書き進める内に強火のシャミ担みたいになってしまいました。
ミオリネ・レンブランの冒険1「もうすぐバレンタインですね」
二月に入り一週間ほどが経過したある日の放課後、校舎裏の片隅で、花壇に移すクロッカスの芽出し球根を運びながらスレッタが言った。夢みるように瞳をきらきらさせて、
「ミオリネさんはシャディクさんにチョコあげるんですよね?」
と訊ねてくる。質問というよりほぼ確信めいた口ぶりだ。
「あげないわよ」
ざしゅっ。
わたしは移植ゴテの先端を土に刺した。適当な深さまで土を掘り起こす。軍手に土が跳ねる。
「ええっ」
芽出し球根が入ったコンテナボックスを抱えたままスレッタが小さく叫ぶ。
「あああああげないんですか?」
露骨に信じられないって顔しないでよ。
「あげないわ」
もう一度――今度は先ほどより幾分ゆっくり、わたしは同じ言葉を繰り返す。
3874二月に入り一週間ほどが経過したある日の放課後、校舎裏の片隅で、花壇に移すクロッカスの芽出し球根を運びながらスレッタが言った。夢みるように瞳をきらきらさせて、
「ミオリネさんはシャディクさんにチョコあげるんですよね?」
と訊ねてくる。質問というよりほぼ確信めいた口ぶりだ。
「あげないわよ」
ざしゅっ。
わたしは移植ゴテの先端を土に刺した。適当な深さまで土を掘り起こす。軍手に土が跳ねる。
「ええっ」
芽出し球根が入ったコンテナボックスを抱えたままスレッタが小さく叫ぶ。
「あああああげないんですか?」
露骨に信じられないって顔しないでよ。
「あげないわ」
もう一度――今度は先ほどより幾分ゆっくり、わたしは同じ言葉を繰り返す。
はなねこ
TRAINING幼なじみ高校生現パロのシャディミオ小話です。恋する乙女なミオミオさんです。※サビさんは三年生ではなく保健室の先生(時代小説が好き)です。
デパストハルシオン まぶたを持ち上げると、目の前に見覚えのないカーテンがあった。
泣き出す寸前の空のようなくすんだグレー。わたしの部屋のカーテンじゃない。この色は、わたしの趣味じゃない。ここはどこ?
かすかに消毒薬の匂いがする。わたしはこの匂いを知っている。つんと鼻をつく薬品の匂い。この匂いは、ここは――保健室?
どうやらわたしは保健室のベッドで眠っていたみたいだ。どれくらいの時間眠っていたのかは分からないけれど、熟睡した後のように頭がすっきりしている。すっきりしているわりに、どうも記憶が曖昧だ。
寝返りを打とうとして、身体を動かせないことに気がついた。何かに拘束されている。わたしを拘束しているのは、誰かの――腕?
5008泣き出す寸前の空のようなくすんだグレー。わたしの部屋のカーテンじゃない。この色は、わたしの趣味じゃない。ここはどこ?
かすかに消毒薬の匂いがする。わたしはこの匂いを知っている。つんと鼻をつく薬品の匂い。この匂いは、ここは――保健室?
どうやらわたしは保健室のベッドで眠っていたみたいだ。どれくらいの時間眠っていたのかは分からないけれど、熟睡した後のように頭がすっきりしている。すっきりしているわりに、どうも記憶が曖昧だ。
寝返りを打とうとして、身体を動かせないことに気がついた。何かに拘束されている。わたしを拘束しているのは、誰かの――腕?
はなねこ
TRAINING幼なじみ高校生現パロのシャディミオ小話です。シャディ大好きミオさんです。キスキスクマクマ ややこしい計算式をどうにかクリアして、つと目を上げる。視界の端に映り込んだミルクティー色の巻き毛に、お腹の底に引っ込めていた怒りがふつふつと再燃した。
「あのクソ親父っ!」
プリーツの膝の上、一撃を食らったトマトのクッションが衝撃でぽすんとへこむ。
「むかつくむかつくむかつくっ!」
何度も何度もぽすんぽすんぽすん。パウダービーズが詰められたクッションはへこんでもへこんでも、へこたれることなく一瞬でトマトのかたちに戻る。
「さっきから何を荒れているんだい?」
年度初めの学力テストを明日に控えた午後四時三十分、参考書とノートを拡げたローテーブルを挟んで、わたしの向かいに座るシャディクが首を傾げる。返事をする代わりに、わたしはベッドの上に転がっていたクマのぬいぐるみを目で指し示した。
2551「あのクソ親父っ!」
プリーツの膝の上、一撃を食らったトマトのクッションが衝撃でぽすんとへこむ。
「むかつくむかつくむかつくっ!」
何度も何度もぽすんぽすんぽすん。パウダービーズが詰められたクッションはへこんでもへこんでも、へこたれることなく一瞬でトマトのかたちに戻る。
「さっきから何を荒れているんだい?」
年度初めの学力テストを明日に控えた午後四時三十分、参考書とノートを拡げたローテーブルを挟んで、わたしの向かいに座るシャディクが首を傾げる。返事をする代わりに、わたしはベッドの上に転がっていたクマのぬいぐるみを目で指し示した。
はなねこ
TRAINING幼なじみ高校生現パロのシャディミオ小話です。ちょこっと下世話なネタを扱ってますのでご注意ください。ポッピングミントシャワー(前編) 自宅へ戻ると、自室のベッドで幼なじみが寝ていた。
ラグの上に、くしゃくしゃになったバスタオルが落ちている。彼女が身につけているネイビーのTシャツ――見覚えがあり過ぎるそのTシャツは、俺が昨夜寝巻き代わりに着て、今朝方洗濯機へ放り込んだものだ。小柄な彼女が着るとほとんどワンピースになってしまう。襟ぐりが広すぎて華奢な肩が見えてしまいそうだった。裾からのぞく人形みたいな太腿の白さに、つい目を逸らしてしまう。
――どうして彼女は俺の部屋にいるんだ?
――どうして彼女は俺のTシャツを着ているんだ?
ふと思いつくことがあった。踵を返し、洗面所へ向かう。
予感は的中した。
乾燥まで終わったドラム式洗濯機の中に、昨夜着ていたTシャツは見当たらなかった。その代わり、ランドリーバスケットの中に俺達が通う高校の制服が一式、ぞんざいに投げ入れられていた。衣替えしたばかりの夏用スカートが濡れて、しっとりとプリーツの色を濃くしている。彼女の制服だ。
1977ラグの上に、くしゃくしゃになったバスタオルが落ちている。彼女が身につけているネイビーのTシャツ――見覚えがあり過ぎるそのTシャツは、俺が昨夜寝巻き代わりに着て、今朝方洗濯機へ放り込んだものだ。小柄な彼女が着るとほとんどワンピースになってしまう。襟ぐりが広すぎて華奢な肩が見えてしまいそうだった。裾からのぞく人形みたいな太腿の白さに、つい目を逸らしてしまう。
――どうして彼女は俺の部屋にいるんだ?
――どうして彼女は俺のTシャツを着ているんだ?
ふと思いつくことがあった。踵を返し、洗面所へ向かう。
予感は的中した。
乾燥まで終わったドラム式洗濯機の中に、昨夜着ていたTシャツは見当たらなかった。その代わり、ランドリーバスケットの中に俺達が通う高校の制服が一式、ぞんざいに投げ入れられていた。衣替えしたばかりの夏用スカートが濡れて、しっとりとプリーツの色を濃くしている。彼女の制服だ。
はなねこ
TRAININGシャディミオの皆様の素敵なシャディミオを拝見している内に自分でも書いてみたくなった、高校生で幼なじみのシャディミオ現パロSSです。※シャ高二、ミオ高一設定、つきあってません。
ウェザーリポート 雨の日はきらい。
湿気のせいでせっかくスタイリングした前髪がはねちゃうし、スカートのプリーツだってあっちこっちへとっちらかっちゃうから。
特別教室の鍵を返し、職員室を出る。窓の外へ目を向けて――あ、ヤバい。天気予報だとそんなこと言ってなかったのに、空が今にも泣き出しそうだ。
足早に昇降口へ向かう。スクールバッグには(奇跡的に)折りたたみ傘が入っているけれど、いつ雨が降り出すか分からない。本格的に振ってくる前に、帰るに越したことはない。
廊下の角を曲がる。ほんの数メートル先、二年生のげた箱の前に、スマホを見ながらひとり佇む男子生徒の姿が見えた。長髪で背が高くて、後ろ姿だけで誰だか分かる。ひとつ年上の幼なじみ。
2307湿気のせいでせっかくスタイリングした前髪がはねちゃうし、スカートのプリーツだってあっちこっちへとっちらかっちゃうから。
特別教室の鍵を返し、職員室を出る。窓の外へ目を向けて――あ、ヤバい。天気予報だとそんなこと言ってなかったのに、空が今にも泣き出しそうだ。
足早に昇降口へ向かう。スクールバッグには(奇跡的に)折りたたみ傘が入っているけれど、いつ雨が降り出すか分からない。本格的に振ってくる前に、帰るに越したことはない。
廊下の角を曲がる。ほんの数メートル先、二年生のげた箱の前に、スマホを見ながらひとり佇む男子生徒の姿が見えた。長髪で背が高くて、後ろ姿だけで誰だか分かる。ひとつ年上の幼なじみ。
あもり
DONEシャディミオの年少期の幻覚話です。12話前、公式が何も出さないので、幻覚が熱を持ったので書きました。シャディクが孤児院に拾われる前は、雪国で過ごしていた幻覚設定があります。
シャディミオ、というかシャディク+ミオリネみたいな雰囲気ですがシャディミオです。
幻雪「シャディク、あんた雪って見たことある?」
薄ら寒い大人たちの挨拶の猛攻を上手く抜け出し、外の廊下を歩いていた時のことだった。久しぶりにパーティで出会ったミオリネは少しだけ背が伸びていて、背中に流れた髪の毛が歩くたびに揺れている。前を歩く彼女が視線を向けた先は、無駄に大きい窓の外は無機質な鉄の要塞、時折常夜灯が点滅するのが見えるだけだ。夢見る天然資源は何ひとつ映っていない。
「映像だけなら」
「そう」
彼女がわずかに肩を落とした。意地を張る癖のある幼馴染にしては、珍しいほど分かりやすい仕草だ。
「……何かあったの、ミオリネ」
「うるさい」
「俺は君の質問に答えたよ」
質問にちゃんと答えなさいよ、と先日の喧嘩で目の前の彼女から貰った言葉をそのまま返す。ミオリネも思い出したのか、ぴたと足を止める。意地が悪いのはお互い様だ。ただ、今日は随分と踏み込みすぎてしまったらしい。
2653薄ら寒い大人たちの挨拶の猛攻を上手く抜け出し、外の廊下を歩いていた時のことだった。久しぶりにパーティで出会ったミオリネは少しだけ背が伸びていて、背中に流れた髪の毛が歩くたびに揺れている。前を歩く彼女が視線を向けた先は、無駄に大きい窓の外は無機質な鉄の要塞、時折常夜灯が点滅するのが見えるだけだ。夢見る天然資源は何ひとつ映っていない。
「映像だけなら」
「そう」
彼女がわずかに肩を落とした。意地を張る癖のある幼馴染にしては、珍しいほど分かりやすい仕草だ。
「……何かあったの、ミオリネ」
「うるさい」
「俺は君の質問に答えたよ」
質問にちゃんと答えなさいよ、と先日の喧嘩で目の前の彼女から貰った言葉をそのまま返す。ミオリネも思い出したのか、ぴたと足を止める。意地が悪いのはお互い様だ。ただ、今日は随分と踏み込みすぎてしまったらしい。