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    あもり

    @34182000

    二次創作小説置き場です。
    現在格納済み:fgo、遙か3、バディミ、スタオケ、水星の魔女、マギなど色々

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    あもり

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    シャディミオの年少期の幻覚話です。12話前、公式が何も出さないので、幻覚が熱を持ったので書きました。
    シャディクが孤児院に拾われる前は、雪国で過ごしていた幻覚設定があります。
    シャディミオ、というかシャディク+ミオリネみたいな雰囲気ですがシャディミオです。

    #シャディミオ

    幻雪「シャディク、あんた雪って見たことある?」
     薄ら寒い大人たちの挨拶の猛攻を上手く抜け出し、外の廊下を歩いていた時のことだった。久しぶりにパーティで出会ったミオリネは少しだけ背が伸びていて、背中に流れた髪の毛が歩くたびに揺れている。前を歩く彼女が視線を向けた先は、無駄に大きい窓の外は無機質な鉄の要塞、時折常夜灯が点滅するのが見えるだけだ。夢見る天然資源は何ひとつ映っていない。

    「映像だけなら」
    「そう」
     彼女がわずかに肩を落とした。意地を張る癖のある幼馴染にしては、珍しいほど分かりやすい仕草だ。
    「……何かあったの、ミオリネ」
    「うるさい」
    「俺は君の質問に答えたよ」
     質問にちゃんと答えなさいよ、と先日の喧嘩で目の前の彼女から貰った言葉をそのまま返す。ミオリネも思い出したのか、ぴたと足を止める。意地が悪いのはお互い様だ。ただ、今日は随分と踏み込みすぎてしまったらしい。
    「……わない、って」
    「ミオリネ?」
     背中越しで小さな声で何か言ったようだが、分からなくて思わず聞き返す。怒ったような、恥ずかしいようなーそんな感情を足して割らない顔をして、お姫様はようやくこちらを向いた。
    「約束!今からいうこと、誰にも言わないって誓える!?」
    「いいよ、約束する」
    「……この約束は誰に誓える?」
    「君に」
    「ーあんたのパパが教えろって言っても?」
    「君の約束を優先する」
     ミオリネの瞳を真っ直ぐに見つめて応えた。すると、目の中から少しずつ怒りのようなものが和らいで行くのが見えた。彼女はよく怒るけれど、どちらかというと的確に相手を凍らせるように怒る。ここまで感情的に噛み付くことは珍しい。よっぽど言いたくないー逆を言えばミオリネにとって、本当に大切なことなんだろう。
    「……なら教えてあげる……。あのね、」
     彼女は自分の髪の先をそっと掴む。そして先ほどとは違う、心の底から嬉しそうな顔を浮かべる。

    「お母さんがね、ー私の髪は雪みたいに綺麗ねって褒めてくれたの」
     
    柔らかくなっているミオリネの表情とは真反対に、自分の顔が静かに硬直していくのがわかった。無理やりにいつもの顔の表情になるよう、力を入れる。その傍らでそっと記憶が囁きだす。
     
     頬に冷たい何かがあたっては溶けていく。

    ーシャディク。
     
     そう。あの日も、雪が降っていた。

    ーシャディク、ねぇ、起きて。死んでない?

     自分に話しかける幼い口から、白い息が漏れる。

    「雪はとても寒くて冷たいけれど、本当に白く輝くんだって」

    ミオリネの声は砂糖菓子のように甘ったるい。

    ーよかった。生きてた。××?××は……、冷たくなっちゃった。

     ノロノロと視線を向ける。視線の先、同じようにボロに包まれた子どもの姿がある。その力なく伸びた手のひらの中は、すでに雪が降り積もっていた。
     

    「雪も色々あるんだって。でもね」
    安心して溶けそうなほどにあたたかい。

     ××は、その日雪の中に埋められた。本当は雪なんかじゃなく、土の下に埋めてやりたかった。雪が溶ければ、××の身体は、獣の餌になることがわかっていた。けれど、凍りついた地面は子どもの爪だけでは何にもならない。

    「1番素敵なのは、朝のお日様を浴びた、一面の雪景色なんだって。いつか、あなたと一緒に見たいわねって言ってくれたの」

     こうしてみると、次々と蘇る雪の思い出は碌でもないものばかりだ。あぁ反吐が出る。雪が綺麗?綺麗の下に何が埋もれてしまっているのか、見てみぬふりをしているお貴族様らしい発想だ。雪につぶれて、冷たく凍える市民以下のことなんて存在しないとすら思えている方の、なんと素敵で傲慢なお言葉か!

     目の前の彼女が語る溶けそうなほどに甘ったるい温度の言葉と、自分の中の凍えた記憶の声が混ざり合っう。
     頭が割れるように痛い。凍った土の温度が指の先に蘇る。気持ちが悪い、気持ちが悪い、気持ちが悪くて仕方がない。けれど、

    「約束、してくれたの。お母さんが私に」
    君の声がする。

     俺は何も言わず、表情を変えず、心の底に飲み込んで黙って聞いていた。例え思い出したくもない記憶の蓋を、よりによって彼女にこじ開けられても。

    「だから決めたの、お母さんと一緒に地球に行くって。それから、一緒に朝の雪を見るの」
    幸せな、君の声がする。それで十分じゃないのか。
     
     例えそれがら自分に向けられていなくてもよかった。彼女が幸せなら構わない。

     ミオリネの幸せな声をいつまでも聞いていたい。

    「……以上、終わり。ちゃんと約束守ってよね」
     俺の演技は上手くいったらしい。彼女は何一つ気づかず、幸せな記憶の箱を閉じて、いつもの少し不機嫌そうな顔を浮かべていた。俺もそれに合わせて、いつものように返事をする。
    「わかっているよ。でもミオリネ、ここにも雪を降らせることはできるだろう、君なら」
    「お母さんが見たのは地球の雪なの。人工雪で私を褒めてくれたわけじゃないの」
    「なかなか細かいなぁ。……行ってみたい?」
    「当たり前じゃない!」
     彼女は、俺の言葉にいたく怒ったようで頬を赤らめていた。話を聞いてたの、と言いたげな顔つきだ。  かわいいミオリネ。可哀想なミオリネ。君が地球に行くことはきっとないだろう。ミオリネが地球に行くことは、肉食獣の中に目隠しされたうさぎを放り込むようなものだ。何の覚悟も、なんの奪われることも考えていないお姫様がいく冒険ではない。
     それに、
    「そんなにいいものではないかもしれないよ」
    「……やっぱりアンタ、見たことあるでしょ」
    「さぁてね」
     俺は彼女を地球へ、朝一面の銀世界へと一緒に連れていくことが出来ない。そのことがわかっていたから、ミオリネが本当に欲しかった言葉を与えることは嘘でも言えなかった。彼女には嘘をつきたくなかった。
     だからはぐらかすように答えれば、揶揄われたと勘違いしてくれたミオリネは、ふんと鼻を鳴らす。そして、挑むようにこちらを見る。
    「まぁ見てなさい、シャディク。私はきっと朝の雪を見に行く。その時はー、」
     ゴウン、と近くのシャトルが開閉する音が響く。ミオリネの言葉の続きはそのまま轟音に飲み込まれてしまった。


     
     あの日、君が俺に宣戦布告した言葉は何だったのか。聞き返すことが出来なかった臆病な俺は、いつまでもその空白を埋めることが出来ないままでいる。まるで、溶けない幻の雪のように。
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    あもり

    PAST24年3月17日春コミで出した、無配ペーパーの小話再録です。そのに。
    2のこちらは、ムーとティトスです。新刊準拠の話ですが読んでなくても「本編最終章終了後、ジュダルが行方不明になったので単独で白龍がレームへ訪問しにきた後の二人の会話劇」とさえわかってれば問題ないです。
    私の割と癖が強く出た話となりました。こっちはしっとり目です。ノットカップリング。
    受け継がれるもの 練白龍が去った後、次の面談先へと元気よく歩くティトス様とは裏腹に、色々と考えあぐねてしまう自分がいた。練白龍は割合、裏表がない青年だ。今回の訪問もどちらかと言えば公人としての彼ではなく、私人としての立場に近いのだろう。だからこそ、あそこまでさらけ出したともいえる。しかし、自身が腹の内を掻っ捌いたようなものだからと言って、それを、同じだけのことを相手に求めさせるのはあまりにもリスクが高すぎる。落ち着いたと思ったが全くそんなことはない。やはり練家の男だと、かつての紅炎を思い出す。
    「ムー」
     くるりとティトス様が振り返った。丸い瞳をこちらに向けてじっと見、そして俺の顔に手を伸ばそうとしていたためすぐに屈む。なんでしょう、と言えば少しだけ笑って口を開いた。
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    あもり

    PAST24年3月17日春コミで出した、無配ペーパーの小話再録です。そのいち。
    アラジンと白龍、2人のデリカシーゼロな話です。
    カップリング要素は白龍とジュダルですが、この話にジュダルは直接出てきません。あとアラジンと白龍はカップリングではありません。2人は飲み友マックスハート!って感じです。そうかな?
    めちゃくちゃ楽しく、カラッとかけました。
    デリカシープラスマイナス お酒というものは、人が普段理性で押さえている様々な箍を外してしまいやすい。アラジンは滅法それに強かったが、対面に陣取る白龍はめちゃくちゃに弱かった。お酒の席はある程度まではご愛嬌。その中で繰り広げられる、馬鹿らしさも面倒くささも、味ではあるのだが。

    「白龍くん飲み過ぎだよ」
    「今日は全然飲んでませんよ」
    「後ろの空の酒樽みてから言ってくれる?」
    「大体こんなに飲みたくなるのはあいつが悪いんです」
    「ジュダルくん?」
    「そうです」
     また勢いよく杯を空ける。あーあーと思いながらも、アラジンは黙って眺めていた。ここまで勢いに乗った白龍の、お酒を止める方が面倒だと経験則でわかっているからだ。
    「俺はずっとアイツがいつ遠征から帰ってきてもいいように色々と準備をしていたんですよ、こっちは!それなのにアイツときたら勝手に色々と初めておいて、」
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    あもり

    PAST先日のたかやま先生ぴくちゃ~日向南ズが空港だったこと、自分が同人誌に書きおろし収録した日向南のふたりの話の舞台も空港で、おまけに「これからの始まりにワクワクするふたり」だったよなあと…。終わりに向けての書き下ろし絵が日向南の2人が空港だったこと、たまたまの巡りあわせですがぐっと来たので期間限定で再録します。当時お手に取っていただいた方、そして今から読む方もありがとうございました!
    ホームスタート、隣には 窓の下、鮮やかな夕日が静かに夜へ落ちていく。小さい窓に張り付いている幼馴染の肩越しにその光を見たとき、ああ僕らは故郷を出ていくんだと実感した。

    ***

     やっとのことで地元の空港のチェックインカウンターに辿り着いたのは、予定時間ぎりぎりのことだった。いざ出発するとなったらどこから聞きつけてきたのか、高校の同級生やら近所のお好み焼き屋のおばさんやらであっという間にわいわいと取り囲まれて、遠慮なく別れを惜しんでくれた。といっても本拠地は相変わらず日向南だというんだけど、みんな勘違いしてないかこれ。そのうち単位交換ではなくて転校したという話に切り替わってそう、というか後半そんな感じで近所のおじさんに言われた。ただもう説明する回数が多すぎたので最後の方の対応はもう拓斗にやや放り投げてしまった。
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