キスキスクマクマ ややこしい計算式をどうにかクリアして、つと目を上げる。視界の端に映り込んだミルクティー色の巻き毛に、お腹の底に引っ込めていた怒りがふつふつと再燃した。
「あのクソ親父っ!」
プリーツの膝の上、一撃を食らったトマトのクッションが衝撃でぽすんとへこむ。
「むかつくむかつくむかつくっ!」
何度も何度もぽすんぽすんぽすん。パウダービーズが詰められたクッションはへこんでもへこんでも、へこたれることなく一瞬でトマトのかたちに戻る。
「さっきから何を荒れているんだい?」
年度初めの学力テストを明日に控えた午後四時三十分、参考書とノートを拡げたローテーブルを挟んで、わたしの向かいに座るシャディクが首を傾げる。返事をする代わりに、わたしはベッドの上に転がっていたクマのぬいぐるみを目で指し示した。
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