tang_brmy
PAST⚠️パソスト公開前に書いたので公式の設定と齟齬がありますhttps://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25044306 の続きのふたりのおはなしというか、起承転結の起に当たるはなし。
なので、衣都ちゃんが出て来ない吏衣都です。出て来るのは吏来さんとミカさんだけ。
「その日」に思いを巡らす吏来さんを捏造しました。
on that day「あら、吏来。いらっしゃい」
「お疲れ」
勝手知ったる何とやら。ジム帰りにAporiaに寄った吏来は、案内されるより先にカウンターの隅の席に腰を下ろす。
「いつもの?」
「うん、お願い」
おしぼりを手渡しながらオーダーを確認したミカが、何かにあてられたように目を細めた。
「機嫌がよさそうね」
「わかる?」
「それはもう。詳しく教えて……と言いたいところだけど、聞くまでもなくお嬢のことなんでしょ」
首を横に振って肩をすくめるミカに、吏来は口の端を上げて答えとする。
(お嬢のこと貰う約束した――とは、流石に言えないよな)
たとえ親友と言えど、衣都を良く知る相手に詳しい話をするつもりはない。ただ、彼女とうまく行っているのが伝わればいいと、曖昧に濁す。ミカもその辺りの機微には聡いので、それ以上は何も聞かずに笑って、吏来の酒を作り始めた。
3692「お疲れ」
勝手知ったる何とやら。ジム帰りにAporiaに寄った吏来は、案内されるより先にカウンターの隅の席に腰を下ろす。
「いつもの?」
「うん、お願い」
おしぼりを手渡しながらオーダーを確認したミカが、何かにあてられたように目を細めた。
「機嫌がよさそうね」
「わかる?」
「それはもう。詳しく教えて……と言いたいところだけど、聞くまでもなくお嬢のことなんでしょ」
首を横に振って肩をすくめるミカに、吏来は口の端を上げて答えとする。
(お嬢のこと貰う約束した――とは、流石に言えないよな)
たとえ親友と言えど、衣都を良く知る相手に詳しい話をするつもりはない。ただ、彼女とうまく行っているのが伝わればいいと、曖昧に濁す。ミカもその辺りの機微には聡いので、それ以上は何も聞かずに笑って、吏来の酒を作り始めた。
michiru_wr110
DONEbrmy弥代衣都(+皇坂+由鶴)
捏造しかない・弥代衣都の中に眠る、過去と現在について
image song:遠雷/Do As Infinity
『きょう、ばいばいで。また、ママにあえるの、いつ?』
軽やかに纏わる言霊(弥代衣都・過去捏造) 女は視線で睨めつけるように傘の骨をなぞり、露先から空を仰いだ。今日という日が訪れなければどれほど良かっただったろうか、と恨みがましさを込めて願ったのに。想いとは裏腹に順調に日を重ね、当たり前のような面をして今日という日を迎えてしまった。
無機質な黒色の日傘と、切り分けられた青空。都会のように電線で空を区切ることも、抜けたように広がる空を遮るものもない。しかし前方には、隙間なく埋め尽くされた入道雲が存在感を主張している。
女の両手は塞がっていた。
片方の手には日傘。そしてもう片方の手には、小さな手の温もり。
歳相応にお転婆な少女は女の腰にも満たない背丈で、時折女の手を強く引きながら田舎特有のあぜ道を元気に駆けようとする。手を離せば、一本道をためらいなく全力疾走するであろう、活発な少女。しかし女は最後の瞬間まで、この手を離すつもりはない。手を離せば最後、何もしらない無垢な少女はあっという間に目的地へとたどり着いてしまうに違いない。
3347無機質な黒色の日傘と、切り分けられた青空。都会のように電線で空を区切ることも、抜けたように広がる空を遮るものもない。しかし前方には、隙間なく埋め尽くされた入道雲が存在感を主張している。
女の両手は塞がっていた。
片方の手には日傘。そしてもう片方の手には、小さな手の温もり。
歳相応にお転婆な少女は女の腰にも満たない背丈で、時折女の手を強く引きながら田舎特有のあぜ道を元気に駆けようとする。手を離せば、一本道をためらいなく全力疾走するであろう、活発な少女。しかし女は最後の瞬間まで、この手を離すつもりはない。手を離せば最後、何もしらない無垢な少女はあっという間に目的地へとたどり着いてしまうに違いない。