lull もう日付も変わろうとしているこの時間。新開は視界に捉えたものを疑い、二度、三度と瞬きをした。
(見間違いじゃねえ、弥代だ)
寮から一番近いミミストではない、徒歩圏内ではあるけれど少し離れた場所にあるコンビニ。外出帰りに目的なく立ち寄って店内をふらついていた新開は、入店して来た客が同僚だと気付いて、思いがけない遭遇だと片眉を上げる。
お互いにひとりなのと、自身が知り合いに会って無視を決め込む人間ではないので、そちらに足を運んだ。
「弥代」
「え? ……ああ、新開さん」
顔を覗き込むように少し身を屈めて名前を呼ぶと、一瞬の警戒の後、呼んだのが新開だと理解した弥代は緊張を緩めた。
「こんな時間に買い物か」
「はい」
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