七面倒
MAIKING長くなりそうなので尻叩きに。完成品はR-18です。年齢操作?ネタ鏡の前で、ジャケットを体にあててみた。
我ながらよく似合ってる、とサンジはひとりほくそ笑む。なんといっても色が良い。漆黒の生地と大きめの金ボタン、そこに自前の金髪が見事に調和している。あえて重厚なダブルプレストを選び、カラーシャツで抜け感を出したのも奏功した。クールさと大人の茶目っ気が同居する出で立ちは、ジジイのスペシャリテにも負けない絶妙のハーモニーを奏でている。
ぴんと立った折り目をなぞり、サンジは明日のことを夢想する。さらりとしたおろしたての手触りが心地良い。
――このスーツでフロアに出れば、レディたちの注目を集めること間違いなしだ。
たとえば、いくら口説いてもにこにこするばかりのアマンダ。挨拶代わりに頭を撫でるリリア。煙草はやめなさいと飴玉をくれるマダム・セーブル。彼女たちだって、きっと理解してくれる。そこにいるのは“チビナスちゃん”ではなく、一人前の男なのだと。コック連中も態度を改めるに違いない。そんなんでグリルに手が届くのか、なんて小馬鹿にしてくる新参者も、あそこ《・・・》の毛も生えてねェくせに、なんて下品なジョークを飛ばす古株も、みんなまとめて思い知らせてやれる。それに、何といっても。
10116我ながらよく似合ってる、とサンジはひとりほくそ笑む。なんといっても色が良い。漆黒の生地と大きめの金ボタン、そこに自前の金髪が見事に調和している。あえて重厚なダブルプレストを選び、カラーシャツで抜け感を出したのも奏功した。クールさと大人の茶目っ気が同居する出で立ちは、ジジイのスペシャリテにも負けない絶妙のハーモニーを奏でている。
ぴんと立った折り目をなぞり、サンジは明日のことを夢想する。さらりとしたおろしたての手触りが心地良い。
――このスーツでフロアに出れば、レディたちの注目を集めること間違いなしだ。
たとえば、いくら口説いてもにこにこするばかりのアマンダ。挨拶代わりに頭を撫でるリリア。煙草はやめなさいと飴玉をくれるマダム・セーブル。彼女たちだって、きっと理解してくれる。そこにいるのは“チビナスちゃん”ではなく、一人前の男なのだと。コック連中も態度を改めるに違いない。そんなんでグリルに手が届くのか、なんて小馬鹿にしてくる新参者も、あそこ《・・・》の毛も生えてねェくせに、なんて下品なジョークを飛ばす古株も、みんなまとめて思い知らせてやれる。それに、何といっても。
七面倒
REHABILI『最後のお願い』を自己解釈もりもりで文章化。よく小説を書くためのHowToで言われる視点固定について、カプものの二次創作ならそこまでこだわらなくてもいけまっせ、みたいなことを言いたくて書いたものです。二分間の両思い「ルフィが出てきたら、そのまま君とはここでお別れ……って、遠ッ!?」
聞こえてる、プリンちゃん? と声をかけながら、サンジはふとゾウを出た日のことを思いだした。
ーー思えば、君とは不思議な出会い方をした。
ベッジに見せられた写真に写っていた完璧な美少女。潤んだ瞳に羞じらう仕草、深い谷間……男の理想を詰め込んだあの姿はほとんどが見せかけで、サンジはまんまと罠にかかった、馬鹿なネズミの一匹に過ぎない。
それでも。と、サンジはますます遠ざかっていく彼女に右手を差し出す。君がとびきり魅力的なレディだってことは、本当だ。
「じきお別れだ……。色々ありがとう!」
\*\*\*\*
差し出された手に、プリンは胸の奥がぎゅっと痛むのを感じた。
2025聞こえてる、プリンちゃん? と声をかけながら、サンジはふとゾウを出た日のことを思いだした。
ーー思えば、君とは不思議な出会い方をした。
ベッジに見せられた写真に写っていた完璧な美少女。潤んだ瞳に羞じらう仕草、深い谷間……男の理想を詰め込んだあの姿はほとんどが見せかけで、サンジはまんまと罠にかかった、馬鹿なネズミの一匹に過ぎない。
それでも。と、サンジはますます遠ざかっていく彼女に右手を差し出す。君がとびきり魅力的なレディだってことは、本当だ。
「じきお別れだ……。色々ありがとう!」
\*\*\*\*
差し出された手に、プリンは胸の奥がぎゅっと痛むのを感じた。
七面倒
DOODLEジューンブライド滑り込みに失敗したもの。書きたいとこだけ抜き出しました。
お父さんって呼びたい話「お父さん、って呼んでもいいですか?」
恥ずかしそうに紡がれた言葉に、パティとカルネはむさくるしい顔を見合わせた。
東の海にその名を知らぬ者のない海上レストラン、『バラティエ』。そのオーナー室では、ちょうどワインの仕入れにまつわる大口の契約が行われていた。
契約の相手は、近年世界の食料市場に進出している貿易会社『シャーロット兄弟商会』。その代表としてバラティエにあらわれたのは、二十歳になるかならないかという女性だった。
当初、船から降り立った彼女――シャーロット・プリンの姿に、バラティエのコックたちは鼻白んだ。こちらが片田舎のレストランだからといって、こんな小娘を名代に寄越すとは。舐めている。コックたちがそう感じたのは、なにも彼らが狭量だからではない。そもそも、バラティエは客以外の女性が出入りすることが少ないのだ。オーナーの主義は広く知れわたっていて、少し気の利いた取引先なら使いの者も男と決めている。もちろん、オーナーは出入りの業者の性別など気にも留めておらず、完全なる余計なお世話なのだが。
3195恥ずかしそうに紡がれた言葉に、パティとカルネはむさくるしい顔を見合わせた。
東の海にその名を知らぬ者のない海上レストラン、『バラティエ』。そのオーナー室では、ちょうどワインの仕入れにまつわる大口の契約が行われていた。
契約の相手は、近年世界の食料市場に進出している貿易会社『シャーロット兄弟商会』。その代表としてバラティエにあらわれたのは、二十歳になるかならないかという女性だった。
当初、船から降り立った彼女――シャーロット・プリンの姿に、バラティエのコックたちは鼻白んだ。こちらが片田舎のレストランだからといって、こんな小娘を名代に寄越すとは。舐めている。コックたちがそう感じたのは、なにも彼らが狭量だからではない。そもそも、バラティエは客以外の女性が出入りすることが少ないのだ。オーナーの主義は広く知れわたっていて、少し気の利いた取引先なら使いの者も男と決めている。もちろん、オーナーは出入りの業者の性別など気にも留めておらず、完全なる余計なお世話なのだが。