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    七面倒

    @8BQVYovXOqztYTF

    かきかけの小説、感想等々

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    七面倒

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    『最後のお願い』を自己解釈もりもりで文章化。よく小説を書くためのHowToで言われる視点固定について、カプものの二次創作ならそこまでこだわらなくてもいけまっせ、みたいなことを言いたくて書いたものです。

    #サンプリ

    二分間の両思い「ルフィが出てきたら、そのまま君とはここでお別れ……って、遠ッ!?」
    聞こえてる、プリンちゃん? と声をかけながら、サンジはふとゾウを出た日のことを思いだした。

    ーー思えば、君とは不思議な出会い方をした。

    ベッジに見せられた写真に写っていた完璧な美少女。潤んだ瞳に羞じらう仕草、深い谷間……男の理想を詰め込んだあの姿はほとんどが見せかけで、サンジはまんまと罠にかかった、馬鹿なネズミの一匹に過ぎない。
    それでも。と、サンジはますます遠ざかっていく彼女に右手を差し出す。君がとびきり魅力的なレディだってことは、本当だ。

    「じきお別れだ……。色々ありがとう!」

    \*\*\*\*

    差し出された手に、プリンは胸の奥がぎゅっと痛むのを感じた。
    ーー私はあなたを騙して殺そうとしたのに……お礼なんて言わないでよ、サンジさん。
    傷ひとつない彼の手は美しい。そこに嘘がないからだ。ただあるのは、まっすぐなやさしさだけ。
    プリンは、自分の手を拳の形に握りしめた。短く整えた爪が肉に食い込む。
    謝りたい。ちゃんと謝らなきゃ。祈るように唱えても、嘘に慣れた唇は言うことを聴かない。

    「うるせェ!」

    いつも通りに罵声を浴びせ、違う、違う!と首を振るプリンに向けて、垂れた目元がいっそう優しげに弧を描いた。

    「あはは、敵だもんな。
    結婚は罠で、全部ビッグ·マム海賊団の大芝居だった。けど……」

    サンジはそう言うと、にっと歯を見せて笑った。

    「おれの婚約者役は、プリンちゃんでよかった」

    ふいに圧し殺したうめき声が聞こえ、サンジは慌てて立ち上がる。

    「あ、いや別にバカにしたわけじゃ……」

    弁解の言葉も耳に入らず、プリンはごしごしと目元を拭った。

    「おい、サンジ……♡さん。お願いがあるの……! 最後に、一つだけ……お願いがあるの……!」

    うそをつくのは、もうやめよう。自分にも、大切な人たちにも。
    決意を胸に、プリンはしっかりと大地を蹴る。涙で曇った視界の中に、ぼんやりと明滅する炎の色が浮かぶ。彼女はそれにむかって、まっすぐ手を伸ばした。

    口元から奪われた煙草が、うすく煙を残して落ちてゆく。束の間それに奪われたサンジの意識を、次の瞬間、衝撃が塗りつぶした。唇をふさぐ甘い香りと、胸板に感じるふたつのふくらみ。

    ――ど、どっちも柔らかッ……♡

    湯煎したチョコレートのように溶けていく意識をなんとか繋ぎ止め、サンジはぎゅっと目を閉じる。押しつけられる唇は意外なほどぎこちなく、乾いた肌が擦れ合う感触がもどかしい。
    このまま抱きしめたい。そう、強く思った。丸い頬に手を添え、細い腰を引き寄せて。表面をなぞるだけじゃなく、もっと深く彼女を知りたい。その味を、香りを、質感と体温を。そうすれば、きっと。

    ――おれは、なにがあってもきみを忘れない。

    だが、それを実行することはできなかった。サンジが動くより早く、プリンはまっすぐ背筋を伸ばすと、サンジの目を覗き込んでにこりと微笑んだ。涙で濡れた三つの瞳が輝く。この世のどんな宝石にも、満天の空の星にも似たもののない、世界の不思議そのもののような色合いでで。

    ああそうか。と、サンジは胸の中でつぶやく。
    きっと、きみを化け物と呼んだ連中は、蔑んだわけじゃない。ただ、畏れたんだ。あまりに神秘的で、人智を超えた美しさを。人は弱くて、似たものどうし寄り集まらなければ生きられない。異質なものは、排斥せずにはいられない。

    ――なァ、プリンちゃん。きみとおれって、本当は、すごく似てるのかな。

    かつてひとりの少年が、夢の海への情熱に突き動かされたように。
    突然の嵐にも似た熱病に駆り立てられ、プリンは自分の意思でここに来た。兄弟たちが血眼で探す侵入者をかくまって、脱出まであと一歩の場所まで運んでくれた。生まれたときから自分を縛り付けていた強大な『家族』。そのしがらみを振り切るために、どれほどの勇気が必要か。サンジほどそのことを理解している人間もいないだろう。

    ――ありがとう、なんて。それっぽっちの言葉で足りるもんか。

    からからに乾いた舌を湿らせて、サンジは大きく息を吸った。別れの言葉は取り消しだ。そんなものより、もっとふさわしい言葉が見つかった。
    行動を起こしたのは、プリンが先だった。細い指が金の髪をかきわけて、頭蓋骨の丸みを捉える。指先にぐっと力がこもり、かすかな震えが伝わってくる。


    ――これは……まさか、二度目のチャンス!?

    予想より早くおとずれたリベンジの機会に、サンジの心臓は跳ね上がる。だが喜んだのも束の間、奇妙な感覚が彼を襲った。とぷん。水面に小石が落ちるような音がして、意識がぐらぐらとかきまわされる。薄れていく脳裏に、彼女の声が響いた。

    「ありがとう……さよなら!」

    ずるずると何かを引きずり出される感触がそれに続き……最後には、その言葉さえ消え失せた。
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    七面倒

    MAIKING長くなりそうなので尻叩きに。完成品はR-18です。
    年齢操作?ネタ鏡の前で、ジャケットを体にあててみた。
    我ながらよく似合ってる、とサンジはひとりほくそ笑む。なんといっても色が良い。漆黒の生地と大きめの金ボタン、そこに自前の金髪が見事に調和している。あえて重厚なダブルプレストを選び、カラーシャツで抜け感を出したのも奏功した。クールさと大人の茶目っ気が同居する出で立ちは、ジジイのスペシャリテにも負けない絶妙のハーモニーを奏でている。
    ぴんと立った折り目をなぞり、サンジは明日のことを夢想する。さらりとしたおろしたての手触りが心地良い。

     ――このスーツでフロアに出れば、レディたちの注目を集めること間違いなしだ。

    たとえば、いくら口説いてもにこにこするばかりのアマンダ。挨拶代わりに頭を撫でるリリア。煙草はやめなさいと飴玉をくれるマダム・セーブル。彼女たちだって、きっと理解してくれる。そこにいるのは“チビナスちゃん”ではなく、一人前の男なのだと。コック連中も態度を改めるに違いない。そんなんでグリルに手が届くのか、なんて小馬鹿にしてくる新参者も、あそこ《・・・》の毛も生えてねェくせに、なんて下品なジョークを飛ばす古株も、みんなまとめて思い知らせてやれる。それに、何といっても。
    10116

    七面倒

    DOODLEジューンブライド滑り込みに失敗したもの。
    書きたいとこだけ抜き出しました。
    お父さんって呼びたい話「お父さん、って呼んでもいいですか?」

    恥ずかしそうに紡がれた言葉に、パティとカルネはむさくるしい顔を見合わせた。



    東の海にその名を知らぬ者のない海上レストラン、『バラティエ』。そのオーナー室では、ちょうどワインの仕入れにまつわる大口の契約が行われていた。
    契約の相手は、近年世界の食料市場に進出している貿易会社『シャーロット兄弟商会』。その代表としてバラティエにあらわれたのは、二十歳になるかならないかという女性だった。
    当初、船から降り立った彼女――シャーロット・プリンの姿に、バラティエのコックたちは鼻白んだ。こちらが片田舎のレストランだからといって、こんな小娘を名代に寄越すとは。舐めている。コックたちがそう感じたのは、なにも彼らが狭量だからではない。そもそも、バラティエは客以外の女性が出入りすることが少ないのだ。オーナーの主義は広く知れわたっていて、少し気の利いた取引先なら使いの者も男と決めている。もちろん、オーナーは出入りの業者の性別など気にも留めておらず、完全なる余計なお世話なのだが。
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     ――このスーツでフロアに出れば、レディたちの注目を集めること間違いなしだ。

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