夕月葵(または凌霄花)
REHABILIこぎさに。甘いちゃ。ほぼキスしてるだけのお話。リハビリ用。溺れるほどに ゆるりゆるりと甘くあまく……
撫でる手のひらが審神者の肌を滑り落ちて、くすぐるような動きをする指が離れたかと思えば、またと触れる手がその小さな身体を抱き寄せる。
そうして審神者の首筋に小狐丸の唇が触れれば軽く吸い付いて、ちゅっちゅっと優しく何度もと吸っては離れていく。そしてもう一度……と。ぺろりと這う小狐丸の熱い舌の感触に審神者が思わず小さな声をあげてしまえば、笑う気配とともに身体の向きが変えられた。
「いつまで我慢をするおつもりですか?」
審神者に覆い被さる大きな身体は彼女を逃がさないようにしているようで、けれど体重などかけてはこない。元々その囲いから抜け出すことなど容易でありながら触れる小狐丸を拒まず好きにさせてしまうのは、審神者のほうもそれを望んでしまっているからだ。
4843撫でる手のひらが審神者の肌を滑り落ちて、くすぐるような動きをする指が離れたかと思えば、またと触れる手がその小さな身体を抱き寄せる。
そうして審神者の首筋に小狐丸の唇が触れれば軽く吸い付いて、ちゅっちゅっと優しく何度もと吸っては離れていく。そしてもう一度……と。ぺろりと這う小狐丸の熱い舌の感触に審神者が思わず小さな声をあげてしまえば、笑う気配とともに身体の向きが変えられた。
「いつまで我慢をするおつもりですか?」
審神者に覆い被さる大きな身体は彼女を逃がさないようにしているようで、けれど体重などかけてはこない。元々その囲いから抜け出すことなど容易でありながら触れる小狐丸を拒まず好きにさせてしまうのは、審神者のほうもそれを望んでしまっているからだ。
夕月葵(または凌霄花)
TRAINING小狐丸は自分の「ぬしさま」以外にはどこか冷たくて、自分の「ぬしさま」にはとてもとても甘くて優しいのです。小狐丸はとても冷たい。いや、正確には『こちら』にいる小狐丸ではなく、よその――まだ主を持たなかった小狐丸であるが。
初めて逢った時こそ表面的には物腰柔らかで紳士的ではあったにせよ、触れるはおろか近付くことすら許さないような、審神者を見るあの冷めた瞳の中にあったのは――……
あの日見たのは月夜に舞う美しき獣。月の光を受けて輝く白銀がとてもきれいで――、ふわりと長い髪をなびかせ舞い降りた彼は、そこに現れた溯行軍を素早い動きで一掃した。
その場にいた動けぬ人の娘を助けたのか、それとも単に目の前にいたアレ等が邪魔であったのか――後者かもしれないなと審神者は思いながらも、今ではあの小狐丸が認めた者に対する瞳を見れば、それもまた揺らぐ。
「いかがされましたか、ぬしさま?」
「……っ」
優しい瞳を向けるのは『わたしの小狐丸』であり、そこに愛しさと甘さを宿すのも、この小狐丸だけで。
あの野生の獣がそれを向けるのは、自身の唯一だけだ。
そう、宿るものの違いに審神者が気付いたのは、あの小狐丸と度々山で遭遇していたから。主を持たぬ狐と思えば、いつの間にやら気に入りの者を見つけていたのか。 1048