tohatuka1020
PROGRESSマイユ(No.0461♂)の話 ただ褒めてほしかった。
そんな顔をさせるつもりではなかった。
ダンスコンテストで賞をとった幼い自分が、育ての親以外にも褒めてもらおうと他のメンバーたちを探している。子どもには少々重いトロフィーを落とさないように注意しながら、やがて大勢の人の中からやっと見つけたその姿に、気分が弾んで笑顔になった。
「イーネしゃ、ユリしゃ……っ!」
意気揚々と近付こうとして、ぎくりと足を止める。
名を呼んだ二匹の前には、一緒にコンテストに出場した幼馴染がいた。こちらに背を向けて立っている彼の表情は見えなかったが、小さな肩は震えていて明らかに元気がない。
泣いている。
察した瞬間、掲げかけたトロフィーを慌てて胸に抱き戻した。
1016そんな顔をさせるつもりではなかった。
ダンスコンテストで賞をとった幼い自分が、育ての親以外にも褒めてもらおうと他のメンバーたちを探している。子どもには少々重いトロフィーを落とさないように注意しながら、やがて大勢の人の中からやっと見つけたその姿に、気分が弾んで笑顔になった。
「イーネしゃ、ユリしゃ……っ!」
意気揚々と近付こうとして、ぎくりと足を止める。
名を呼んだ二匹の前には、一緒にコンテストに出場した幼馴染がいた。こちらに背を向けて立っている彼の表情は見えなかったが、小さな肩は震えていて明らかに元気がない。
泣いている。
察した瞬間、掲げかけたトロフィーを慌てて胸に抱き戻した。
tohatuka1020
DONEティターニア(No.0700♀)甘酸っぱいの隠し味 自室で新曲の作詞をしているティターニアが椅子から立ち上がる。
煮詰まった頭をすっきりさせるために、コーヒーブレイクを挟むことにした。買ったばかりのコーヒーミルにお気に入りの豆を入れて手動で砕く時間も、気分転換の一環だ。
甘い外見に似合わず苦いものを好むティターニアは、部屋に漂った香ばしいコーヒーの香りを吸い込み、少しだけ口端を上げる。
行儀悪く歩きながら慎重に熱々のコーヒーを啜り、元いた席に戻ってきた。
「はー、美味しい……。やっぱりコーヒーはブラックに限るわ」
砂糖やミルクなんて邪道ね、邪道、と自分しかいない空間で呟く。
体が内からじんわり温まっていくのを感じながら、先ほどまで苦戦していた作詞ノートを見やった。ペンが転がっているノートには一文字も書かれておらず、進捗どうですかと聞かれたら自信をもって進捗駄目ですと言い切れてしまうほどの驚きの白さだ。
8012煮詰まった頭をすっきりさせるために、コーヒーブレイクを挟むことにした。買ったばかりのコーヒーミルにお気に入りの豆を入れて手動で砕く時間も、気分転換の一環だ。
甘い外見に似合わず苦いものを好むティターニアは、部屋に漂った香ばしいコーヒーの香りを吸い込み、少しだけ口端を上げる。
行儀悪く歩きながら慎重に熱々のコーヒーを啜り、元いた席に戻ってきた。
「はー、美味しい……。やっぱりコーヒーはブラックに限るわ」
砂糖やミルクなんて邪道ね、邪道、と自分しかいない空間で呟く。
体が内からじんわり温まっていくのを感じながら、先ほどまで苦戦していた作詞ノートを見やった。ペンが転がっているノートには一文字も書かれておらず、進捗どうですかと聞かれたら自信をもって進捗駄目ですと言い切れてしまうほどの驚きの白さだ。