小麦子
DONEイエミオ④幕間のエピソードと③の後の話し。
煙草はハタチになってから!
くゆるおもいイエル達が拠点としている廃墟の屋上で、ミオリネは左右を見渡す。人気のないことを確認し、安いプラスチックの使い捨てライターを慣れない手つきでカチカチと鳴らす。苦労して点火した火は、咥えた煙草を焦がすばかりでなかなか燃え移ってくれない。
「あ、あれ?」
「吸いながらつけるんだよ」
背後から声がして、ミオリネは文字通り飛び上がった。
「…ったく、何してるんだ」
呆れた顔をしたイエルがミオリネを見下ろしていた。そのまま口に挟んでいた煙草をひょいと取り上げられる。
「かっ、返して!」
「返しても何も、俺のだろうが」
持ち主の留守中にジャンパーのポケットから拝借した煙草は、届かない位置まで掲げられてしまった。背の低いミオリネは、取り返そうと手を伸ばしてぴょんぴょんと飛び跳ねる。
3098「あ、あれ?」
「吸いながらつけるんだよ」
背後から声がして、ミオリネは文字通り飛び上がった。
「…ったく、何してるんだ」
呆れた顔をしたイエルがミオリネを見下ろしていた。そのまま口に挟んでいた煙草をひょいと取り上げられる。
「かっ、返して!」
「返しても何も、俺のだろうが」
持ち主の留守中にジャンパーのポケットから拝借した煙草は、届かない位置まで掲げられてしまった。背の低いミオリネは、取り返そうと手を伸ばしてぴょんぴょんと飛び跳ねる。
小麦子
DONEイエミオ③②の続き
そして帰り道を見失った陽が昇る前。
拠点として使っている廃墟からは少し離れた場所で、イエルはひとり煙草を燻らせていた。昨夜降った雨が埃を洗い流して、今朝はことさらに空気が澄んでいる。
皆が起き出す前のこの時間は、イエルがひとりきりになれる、数少ない時間だった。
一日が始まる前の、まっさらな空に向かって、煙を吐く。
自分が吐き出したちっぽけな汚れが、綺麗な空気に包まれて馴染んでいくのを見るのがイエルは好きだった。
何か考えたいことがある時、あるいは何も考えたくない時、イエルはこうしてひとりになる。悩み続けた難題も、頭の中を一度空にしてみると、案外良い解決策が見つかったりするものだ。
ただ、この方法も今頭を悩ませている問題には効果がないようで、先ほどからイエルは空気を汚すだけの、無意味な煙を吐き出し続けている。
3550拠点として使っている廃墟からは少し離れた場所で、イエルはひとり煙草を燻らせていた。昨夜降った雨が埃を洗い流して、今朝はことさらに空気が澄んでいる。
皆が起き出す前のこの時間は、イエルがひとりきりになれる、数少ない時間だった。
一日が始まる前の、まっさらな空に向かって、煙を吐く。
自分が吐き出したちっぽけな汚れが、綺麗な空気に包まれて馴染んでいくのを見るのがイエルは好きだった。
何か考えたいことがある時、あるいは何も考えたくない時、イエルはこうしてひとりになる。悩み続けた難題も、頭の中を一度空にしてみると、案外良い解決策が見つかったりするものだ。
ただ、この方法も今頭を悩ませている問題には効果がないようで、先ほどからイエルは空気を汚すだけの、無意味な煙を吐き出し続けている。
小麦子
DONEイエミオ②①の続き。ミオリネ視点
少年と銀の迷い猫テントの入り口に立ち、声をかけようとして、口をつぐむ。もう何度か繰り返した生産性のないこの行為に終わりを見出せなくなり、ミオリネは立ち尽くしていた。
(だって、なんて言えばいいのよ…)
自覚する自分の幼稚さに辟易する。
昨夜のことだってそうだ。歩道が整備されているフロントと違って、雑多に行き交う人混みの動線に酔ってしまったとはいえ、レネ達とはぐれてしまったのは自分の落ち度だ。
治安がいいとは言えない土地で一人になってしまい慌てていたところ、雑踏に紛れて見慣れた柔らかな金髪が路地裏に入って行くのを見つけたミオリネはほっとしたのだ。
だが、かけようとした声は、見知らぬ女と親しげに話す彼を見て凍ってしまった。
二人の影が重なりそうになるのを見て、自分でも説明出来ない理不尽に怒り出したくなるような、泣きたくなるような感情が湧き上がりその場を逃げ出してしまったのだった。
3639(だって、なんて言えばいいのよ…)
自覚する自分の幼稚さに辟易する。
昨夜のことだってそうだ。歩道が整備されているフロントと違って、雑多に行き交う人混みの動線に酔ってしまったとはいえ、レネ達とはぐれてしまったのは自分の落ち度だ。
治安がいいとは言えない土地で一人になってしまい慌てていたところ、雑踏に紛れて見慣れた柔らかな金髪が路地裏に入って行くのを見つけたミオリネはほっとしたのだ。
だが、かけようとした声は、見知らぬ女と親しげに話す彼を見て凍ってしまった。
二人の影が重なりそうになるのを見て、自分でも説明出来ない理不尽に怒り出したくなるような、泣きたくなるような感情が湧き上がりその場を逃げ出してしまったのだった。
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DONEイエミオ①シャディクがグラスレーに拾われずにイエルとして生きたifルート。
給食さんのイエミオをベースに自分設定盛り込んだ、四次創作。
*イエル(シャディク)がモブ女と絡みます。
紫煙と銀の迷い猫雑多な空気は気怠げな紫煙を纏っている。
少々いかがわしい店が建ち並ぶ路地裏で、イエルは女から頼んでいた物を受け取り、中身を確かめると着古した上着のポケットに捩じ込んだ。
「いつもありがとな」
「いいのよ。イエルの頼みだもの」
女は紅い口紅をひいた唇で、艶やかな笑みを返す。彼女はイエルの古い馴染みの娼婦で、時折こうして情報や物資を流してくれていた。
「それより、今日は寄ってかないの?」
スルリと慣れた手つきで女はイエルの肩に手を回した。女性特有の柔らかな肢体が密着する。大きく開いた胸元から押し付けられて形を変えた谷間が見えて、視線を上に泳がす。
「あー…」
正直、そういった欲はあった。
いつもなら礼も兼ねて一晩付き合う所だが、今夜は何故か気乗りしなかった。
2499少々いかがわしい店が建ち並ぶ路地裏で、イエルは女から頼んでいた物を受け取り、中身を確かめると着古した上着のポケットに捩じ込んだ。
「いつもありがとな」
「いいのよ。イエルの頼みだもの」
女は紅い口紅をひいた唇で、艶やかな笑みを返す。彼女はイエルの古い馴染みの娼婦で、時折こうして情報や物資を流してくれていた。
「それより、今日は寄ってかないの?」
スルリと慣れた手つきで女はイエルの肩に手を回した。女性特有の柔らかな肢体が密着する。大きく開いた胸元から押し付けられて形を変えた谷間が見えて、視線を上に泳がす。
「あー…」
正直、そういった欲はあった。
いつもなら礼も兼ねて一晩付き合う所だが、今夜は何故か気乗りしなかった。