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LÀM XONG明治大正日本風パロ飯P。最終飯Pですが、前半は空P表現あるし💅も出るし総受け感あるので無理な人は避けてね。
【飯P空P】りんごの庭と鳴けぬ鳥/07.かわせみ 「お前があの狭ッ苦しい家に飽いて、また旅に出ちまわねぇように、りんごくらい植えてやらぁ」
……あんなことを言っていたのに、その狭ッ苦しい家に、今ではおれしかいない。四年前、心の臓を病み死出の旅路へ踏み出したのは、あいつの方だった。
ここへ来てから、もう七年と少しになる。
二ヵ月前に訪ねてきた悟飯のことと、りんごの樹の経過を見に来てくれる、悟空の親友の庭師が話していたことが気になり、ここ数日ずっと上の空で庭ばかり眺めていた。
――[[rb:市 > まち]]の反対側の神社に、新しく神職さんが入ったそうだ。俺は見てないが、たいそうな美丈夫で、あんたと似たような柳色の膚だって聞いたけどな……訪ねてみたらどうだ?
2930……あんなことを言っていたのに、その狭ッ苦しい家に、今ではおれしかいない。四年前、心の臓を病み死出の旅路へ踏み出したのは、あいつの方だった。
ここへ来てから、もう七年と少しになる。
二ヵ月前に訪ねてきた悟飯のことと、りんごの樹の経過を見に来てくれる、悟空の親友の庭師が話していたことが気になり、ここ数日ずっと上の空で庭ばかり眺めていた。
――[[rb:市 > まち]]の反対側の神社に、新しく神職さんが入ったそうだ。俺は見てないが、たいそうな美丈夫で、あんたと似たような柳色の膚だって聞いたけどな……訪ねてみたらどうだ?
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LÀM XONG #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【嫉妬】
嫉妬の話書きすぎてて悩んだ……
【飯P】許されるのはただ一人 夕暮れ時、師弟は庭の一角で話し込んでいた。常緑樹の木立が晩夏の陽をやわらげ、吹き抜ける風も心地よい。
「すみませんピッコロさん、模様替えの手伝いなんて……」
「お前こそ、とうに一人暮らしなのに大変だな」
二人にとって、調度を動かすことなど大した作業ではなかった。ただ、チチの注文は細かく、それなりに気疲れしていた。
「嬉しいです。ピッコロさんがお母さんとも仲良くしてくれて」
「そうか?」
「うん……長く一緒に過ごすなら、お母さんと会うことも、多くなるしね」
身体を寄せて囁いた悟飯に、ピッコロは何か答えようとする。しかしその瞬間、甘やかになりかけた空気を蹴散らすように、二人分の足音が駆け込んできた。
「あっ、兄ちゃん!」
1999「すみませんピッコロさん、模様替えの手伝いなんて……」
「お前こそ、とうに一人暮らしなのに大変だな」
二人にとって、調度を動かすことなど大した作業ではなかった。ただ、チチの注文は細かく、それなりに気疲れしていた。
「嬉しいです。ピッコロさんがお母さんとも仲良くしてくれて」
「そうか?」
「うん……長く一緒に過ごすなら、お母さんと会うことも、多くなるしね」
身体を寄せて囁いた悟飯に、ピッコロは何か答えようとする。しかしその瞬間、甘やかになりかけた空気を蹴散らすように、二人分の足音が駆け込んできた。
「あっ、兄ちゃん!」
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LÀM XONGンデちゃんが活躍する番外。本編の数ヶ月後。完結済みの、マスター💅と客🍚がバーテンダー🅿️を取り合う、ネイPシーン多めの連載。全員の番外をぼちぼち載せていきます。
【飯PネイP】煙るバーカウンターにて/ダージリンクーラー 月曜の夜、定休日の『Veil』で、僕らは水煙草を囲んでいた。今日は、ピッコロさんの部屋にあった鉢植えをデンデの温室の側へ植え替えた、そのお祝いだ。扉の小窓には、「貸切」と手書きで貼り出してある。いつもより明るくした照明に、賑やかなラジオ放送。営業中とは全く違う雰囲気だったが、居心地は良い。普段は飲まないネイルさんも、僕に付き合って飲んでくれている。もともと特別強いわけでもない僕は、二杯目を終える頃には、ほろ酔いのあたたかい気分だった。
トレイを持ったネイルさんが、カウンターから戻ってくる。
「ダージリンクーラーと……ピッコロとデンデは普通のアイスティー、少し甘くしてあるから」
ネイルさんがテーブルの端に置いたグラスを、デンデがそれぞれの席に回してくれる。開け放った窓からは、初夏の心地よい夜風が吹き込み、繁華街の喧騒がかすかに聞こえた。
4061トレイを持ったネイルさんが、カウンターから戻ってくる。
「ダージリンクーラーと……ピッコロとデンデは普通のアイスティー、少し甘くしてあるから」
ネイルさんがテーブルの端に置いたグラスを、デンデがそれぞれの席に回してくれる。開け放った窓からは、初夏の心地よい夜風が吹き込み、繁華街の喧騒がかすかに聞こえた。
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LÀM XONG前回の「研究棟に幽霊がいる」噂の続き。ネイPの先輩方に読んでいただけて本当に嬉しいです、ありがとうございます😍💅さんはポストボーイじゃないので運転技術は中の上です。上の上でも良いけど、職場から徒歩で行けるほど近い良い部屋に住んでてほしい。車で移動する必要がない。
【ネイP】解剖台で夢を見た/06.十分間 時計の針は、既に日付をまたごうとしていた。仮眠室の狭いベッドで向き合って横たわり、ネイルはピッコロの背に手を置いていた。
「明日から何日かは、雨が続くらしい」
「……ここにいたら、関係ないな」
ネイルの肩に額を預け、ピッコロは冗談めかして呟く。ネイルはしばし逡巡し、口を開きかけては閉じ、ピッコロの背中にある手にわずかに力を入れた。身体と身体は密着してこそいないが、身じろぐたびに動く背骨のかたさと、眠気によって少し高まった体温が、ネイルの手のひらに感じられる。抑えた声で、ピッコロ、と呼びかけると、顔が上がった。
「ここはもう、危ないかもしれない」
ネイルが声を潜めて告げても、返事はない。ただ無造作に下ろされていた手で、シーツをぐっと握る気配がした。
3960「明日から何日かは、雨が続くらしい」
「……ここにいたら、関係ないな」
ネイルの肩に額を預け、ピッコロは冗談めかして呟く。ネイルはしばし逡巡し、口を開きかけては閉じ、ピッコロの背中にある手にわずかに力を入れた。身体と身体は密着してこそいないが、身じろぐたびに動く背骨のかたさと、眠気によって少し高まった体温が、ネイルの手のひらに感じられる。抑えた声で、ピッコロ、と呼びかけると、顔が上がった。
「ここはもう、危ないかもしれない」
ネイルが声を潜めて告げても、返事はない。ただ無造作に下ろされていた手で、シーツをぐっと握る気配がした。
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LÀM XONG #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【焚き火・笑顔】
このお題、どうしてももう一本書きたくて自主的に1h計りました。死の描写があるので無理な人は避けてね!
十ッパのあれは熱線的なもの?という解釈で書いてます。
【飯P】最期の炎 燃え上がる炎が、山吹色と緋色の間を静かに行き来している。輪郭を変え続ける炎の姿は、あの荒野で毎晩見つめたものと同じだ。
焚き火のための薪を集めるのは、いつもおれの役目だった。はじめは悟飯が自分で集めていたが、薪を集め、食べるものを集め、それから火を熾こし……と余計な時間がかかる。一秒でも多く鍛練に充てるべきだったあの荒野で、役割を分担するのが一番効率的だっただけのことだ。けれど、はじめて「薪を集めておいた」と告げた日、悟飯は想像よりずっと喜んだ。
薪を組むのは、悟飯の方が上手かった。
「お父さんの手伝いで、いつもやってたんです!」
得意気に薪を重ねる悟飯の笑顔は、少しの誇らしさと、高揚と、子供らしい無邪気さに彩られていた。
1837焚き火のための薪を集めるのは、いつもおれの役目だった。はじめは悟飯が自分で集めていたが、薪を集め、食べるものを集め、それから火を熾こし……と余計な時間がかかる。一秒でも多く鍛練に充てるべきだったあの荒野で、役割を分担するのが一番効率的だっただけのことだ。けれど、はじめて「薪を集めておいた」と告げた日、悟飯は想像よりずっと喜んだ。
薪を組むのは、悟飯の方が上手かった。
「お父さんの手伝いで、いつもやってたんです!」
得意気に薪を重ねる悟飯の笑顔は、少しの誇らしさと、高揚と、子供らしい無邪気さに彩られていた。
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LÀM XONG #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【焚き火・笑顔】
お題混合で書いたよ。いつもの感じ。
【飯P】不知火の海原 夏の夜、波打ち際の草場に腰掛けて、師弟は遠い海を眺めていた。湖や狭い湾と違い、視線の先には星空と、真っ暗な海原が広がるばかりだ。
そう、そのはずだった。しかし今日に限っては、水平線にいくつもの光が留まり、暗い海を彩っている。
「漁船か? にしては、動かないな」
「あれは船でなくて、不知火ですね」
「シラヌイ……」
「うん。本当はあそこには何もなくて、海の蜃気楼みたいなもの」
悟飯は顔を上げ、ごく簡潔に説明する。不知火は横一列に水平線に点在し、灯籠を持った何者かの行列のようにも見える。
「……子供の頃、あれは魚や、海の妖精が焚き火を焚いてるんだって教わりました。船であそこまで行って、一緒に焚き火を囲むと、仲間になれて……海の世界で、魚や妖精と、ずっと一緒に暮らせるって」
1529そう、そのはずだった。しかし今日に限っては、水平線にいくつもの光が留まり、暗い海を彩っている。
「漁船か? にしては、動かないな」
「あれは船でなくて、不知火ですね」
「シラヌイ……」
「うん。本当はあそこには何もなくて、海の蜃気楼みたいなもの」
悟飯は顔を上げ、ごく簡潔に説明する。不知火は横一列に水平線に点在し、灯籠を持った何者かの行列のようにも見える。
「……子供の頃、あれは魚や、海の妖精が焚き火を焚いてるんだって教わりました。船であそこまで行って、一緒に焚き火を囲むと、仲間になれて……海の世界で、魚や妖精と、ずっと一緒に暮らせるって」
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LÀM XONGネイPのみの番外、🍚ちゃんと出会う何年も前。完結済みの、マスター💅と客🍚がバーテンダー🅿️を取り合う連載。ンデちゃん含む全員の番外あるのでぼちぼち載せます。
これは🅿️がバーテンダーなりたてで、カクテル練習する話。真面目だからバーテンダー修業も頑張ったはず🥹
【飯PネイP】煙るバーカウンターにて/サイドカー 元々あまり酒を飲まないから、カクテルというものにこんなにも種類があることに驚いた。ネイルは「覚える必要はない、レシピを確認して作っても構わない」と言うが、よく出るカクテルは嫌でもレシピを覚えてしまう。サイドカーも、そうだ。
ネイルの店へ立つようになって、四ヶ月経った。あいつは元々、この街へ出てきた時からずっとバーテンダーをやっていたが、おれはまったくの初心者だ。それでも、開店前にあれやこれやと教わって、一通りのことは出来るようになったつもりでいた。実際、これまで客から褒められこそすれ、苦言を呈されたことなどなかった。
「このサイドカー……なんとなく、味が尖ってる気がする」
そう言われたのは半月前だ。甘い、苦い、ぬるいなら分かるものの……尖っている? そもそもこの客が、ただの感想を言っているのか、文句のつもりで言っているのか、判別できなかった。なんと答えていいか分からないところに、ネイルが横合いから口を出す。
4649ネイルの店へ立つようになって、四ヶ月経った。あいつは元々、この街へ出てきた時からずっとバーテンダーをやっていたが、おれはまったくの初心者だ。それでも、開店前にあれやこれやと教わって、一通りのことは出来るようになったつもりでいた。実際、これまで客から褒められこそすれ、苦言を呈されたことなどなかった。
「このサイドカー……なんとなく、味が尖ってる気がする」
そう言われたのは半月前だ。甘い、苦い、ぬるいなら分かるものの……尖っている? そもそもこの客が、ただの感想を言っているのか、文句のつもりで言っているのか、判別できなかった。なんと答えていいか分からないところに、ネイルが横合いから口を出す。
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LÀM XONG明治大正日本風パロ飯P。最終飯Pですが、前半は空P表現あるし💅も出るし総受け感あるので無理な人は避けてね。
【飯P空P】りんごの庭と鳴けぬ鳥/06.もず 遠くで、甲高い声がした。鋭い金属音のような鳴き声……もずだ。
その名を思い出すまでに、ほんの少し時間がかかった。柿の葉はもうすっかり落ちて、細い枝先に、あの小さな猛禽がとまっているのが見えた。じっと身を膨らませ、風に背を向けている。
「冬は嫌いだなぁ」
背後から聞こえた悟空の声は、「嫌い」と言う割にどこか楽しげで、それでもほんの少し、息が上がっていた。
年末が近付いて、やることはいくらでもあった。流されるようにこの街、この家に腰を落ち着けて、二年になるだろうか。一年も前に書生として家を出て行った悟飯も、今朝は戻ってきている。
古いこの家は、悟空と二人で暮らすには広すぎて、全く使わない場所も多くあった。それでも、年を越すのに何もかもそのままというわけにはいかない。旅暮らしが長く、あまり実感がなかったが……正月とは、そういうものらしい。
2658その名を思い出すまでに、ほんの少し時間がかかった。柿の葉はもうすっかり落ちて、細い枝先に、あの小さな猛禽がとまっているのが見えた。じっと身を膨らませ、風に背を向けている。
「冬は嫌いだなぁ」
背後から聞こえた悟空の声は、「嫌い」と言う割にどこか楽しげで、それでもほんの少し、息が上がっていた。
年末が近付いて、やることはいくらでもあった。流されるようにこの街、この家に腰を落ち着けて、二年になるだろうか。一年も前に書生として家を出て行った悟飯も、今朝は戻ってきている。
古いこの家は、悟空と二人で暮らすには広すぎて、全く使わない場所も多くあった。それでも、年を越すのに何もかもそのままというわけにはいかない。旅暮らしが長く、あまり実感がなかったが……正月とは、そういうものらしい。
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LÀM XONG #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【ピクニック・水筒】
お題混合で書いたよ。この人たちを不用意に山野に放つと修業になってしまう……
【飯P】2000リットルの恋心 「ピッコロさん、次の日曜、ピクニックに行くんです。一緒にどうですか?」
悟飯がそう誘うのは、もう何度目だろうか。ブルマが主催し、悟天はじめ子供たちは毎回、前夜眠れぬほど楽しみにしている。
「……おれはいい」
「えーっ、高原、気持いいですよ。菜の花畑がすごく綺麗だって。行かない?」
「行かん」
「そうですか……じゃあ、水源でお水汲んで来たら、一緒に飲んでくれる?」
それくらいなら、と何気なく頷いたのが、そもそもの間違いだった。
日曜の夜、悟飯は500ミリリットルの水筒を提げて神殿を尋ねてきた。しっかり冷やされているそれを、上機嫌でピッコロに差し出す。
春の夜風は心地よく、悟飯がガーデンテーブルに飾った菜の花をかすかに揺らしていた。
1821悟飯がそう誘うのは、もう何度目だろうか。ブルマが主催し、悟天はじめ子供たちは毎回、前夜眠れぬほど楽しみにしている。
「……おれはいい」
「えーっ、高原、気持いいですよ。菜の花畑がすごく綺麗だって。行かない?」
「行かん」
「そうですか……じゃあ、水源でお水汲んで来たら、一緒に飲んでくれる?」
それくらいなら、と何気なく頷いたのが、そもそもの間違いだった。
日曜の夜、悟飯は500ミリリットルの水筒を提げて神殿を尋ねてきた。しっかり冷やされているそれを、上機嫌でピッコロに差し出す。
春の夜風は心地よく、悟飯がガーデンテーブルに飾った菜の花をかすかに揺らしていた。
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LÀM XONGスタンプとか本当にありがとうございます。ネイPまだよく分からないけど、美しいナメたちがイチャイチャしてると(自分が)嬉しいことは分かってきた🥰【ネイP】解剖台で夢を見た/05.研究棟の幽霊 はじまりは恋愛感情というより、世界から隠れて暮らしているという、共犯意識だったかもしれない。それでも、互いに誰よりも親密に……特別に感じていることは、間違いなかった。
だからこそ、背中合わせだった共寝が、いつしか抱き合って眠るようになるのに、何の疑問も抵抗もなかった。身体は重く吐息は甘く、額が合わさると、どちらも不思議なほど安らいだ。
その晩も、ネイルは仮眠室の書き物机にいた。手元のデスクライトを切って、資料をファイルに綴じる。疲れを覚えた目を瞬いていると、背後で本を閉じる音がした。
「……ネイル」
静かな声に振り向くと、ピッコロはベッドの端に脚を下ろして座っていた。いつもより、やや険しく見えるまなざしで。
2880だからこそ、背中合わせだった共寝が、いつしか抱き合って眠るようになるのに、何の疑問も抵抗もなかった。身体は重く吐息は甘く、額が合わさると、どちらも不思議なほど安らいだ。
その晩も、ネイルは仮眠室の書き物机にいた。手元のデスクライトを切って、資料をファイルに綴じる。疲れを覚えた目を瞬いていると、背後で本を閉じる音がした。
「……ネイル」
静かな声に振り向くと、ピッコロはベッドの端に脚を下ろして座っていた。いつもより、やや険しく見えるまなざしで。
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LÀM XONG #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【翼・光】
(舞空術があるじゃん?)
【飯P】蝋の翼 夕陽が今にも沈まんとし、濃い赤に変じた地平線が視界をくっきりと切り分けている。太陽の最後の光が天頂を目指して伸びていたが、空の東側は既に、夜に染まりつつあった。
たまには身体を動かしたいという悟飯に付き合って、ピッコロは広々とした草原にいた。本気で打ち合えば、もはや勝負にならないことは互いに分かっている。とはいえ充実した時間を過ごし、身体には快い疲れが満ちていた。
「イカロスの物語って、知ってます?」
服を整えながら、不意に悟飯が言った。
「鳥の羽を蝋で固めた翼の、地球人の神話だな」
「そうそう! 太陽に近付きすぎて……翼が溶けて墜ちてしまう」
夕陽を背中から受ける悟飯の表情は、影となりおぼろげだ。まだ少年だと、子供だとばかり思っていたピッコロの記憶を裏切り、瞳はいつの間にか大人びていた。
1714たまには身体を動かしたいという悟飯に付き合って、ピッコロは広々とした草原にいた。本気で打ち合えば、もはや勝負にならないことは互いに分かっている。とはいえ充実した時間を過ごし、身体には快い疲れが満ちていた。
「イカロスの物語って、知ってます?」
服を整えながら、不意に悟飯が言った。
「鳥の羽を蝋で固めた翼の、地球人の神話だな」
「そうそう! 太陽に近付きすぎて……翼が溶けて墜ちてしまう」
夕陽を背中から受ける悟飯の表情は、影となりおぼろげだ。まだ少年だと、子供だとばかり思っていたピッコロの記憶を裏切り、瞳はいつの間にか大人びていた。
Xiorama
TẬP HUẤN #EnDワンドロ 第1回テーマ「花」キャラクター ノアルク
1.5h/見直し時間が足りず修正箇所多い…
今回から初チャレンジしてみました。
EnDワンドロ「花」ノア 17才 ルク 16才
吐き出すー。
「う”っ…くっ”…っ…!」
相手を思う気持ちも、
「くそ…っ…う”っ…」
それを伝えられないもどかしさも、
「は、は、…っ…」
それがとても苦しく、辛かった。
「はぁ…はぁ…今日はやけに止まらなかったな」
自室のお手洗いに俯くノアは、さっきまで吐き出したアネモネの花びらを眺めながら呟く。
体力を使ったのかそのまま床にしゃがみ込み、頭を抱えながら深いため息をついた。
ー花吐き病。
それは、強い片思いから患うことがある奇病。
恋愛なんてそんなものとは無関係な殺伐と偽りの日常を送っていた身として、初期症状を発症したときは心底驚いた。知識だけしか知らなかったその病気はやはり奇病と言われるだけあって治療法がない。出来ることは進行を遅くすることくらいだ。或いは、想い人と実った時、自身から花びらではなく綺麗な花を吐き出すことで完治するらしい。
3192吐き出すー。
「う”っ…くっ”…っ…!」
相手を思う気持ちも、
「くそ…っ…う”っ…」
それを伝えられないもどかしさも、
「は、は、…っ…」
それがとても苦しく、辛かった。
「はぁ…はぁ…今日はやけに止まらなかったな」
自室のお手洗いに俯くノアは、さっきまで吐き出したアネモネの花びらを眺めながら呟く。
体力を使ったのかそのまま床にしゃがみ込み、頭を抱えながら深いため息をついた。
ー花吐き病。
それは、強い片思いから患うことがある奇病。
恋愛なんてそんなものとは無関係な殺伐と偽りの日常を送っていた身として、初期症状を発症したときは心底驚いた。知識だけしか知らなかったその病気はやはり奇病と言われるだけあって治療法がない。出来ることは進行を遅くすることくらいだ。或いは、想い人と実った時、自身から花びらではなく綺麗な花を吐き出すことで完治するらしい。
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LÀM XONG明治大正日本風パロ飯P。最終飯Pですが、前半は空P表現あるし💅も出るし総受け感あるので無理な人は避けてね。
【飯P空P】りんごの庭と鳴けぬ鳥/05.めじろ 書生として家を出てからも、縁側に腰掛けるピッコロさんの姿を思い出さない日はなかった。冬枯れた庭を静かに見つめ、ひたきの声に耳を傾けていた横顔。真っ直ぐに伸びた背中と、抜いた衿から無防備に晒されるうなじ。
家を出た時は、まだ初秋だった。既に真冬となり、空は晴れていてもどこか重い。こんなに長いこと実家を離れたのは、初めてだ。
開け放たれた縁側には湯呑みの乗った盆があり、二つの座布団がぴったりと寄り添っている。冬の陽射しは弱々しかったが、それでも縁側にはあたたかさが蹲っているようだった。
大通りで買った大袋の蜜柑を抱え直して、僕は玄関扉を開いた。ピッコロさんが奥から早足に出てきて、僕を迎えてくれる。久し振りに見るピッコロさんの微笑に、やはり気分が高揚してしまうのを感じた。墨色の袖から、若葉と紅の対照が美しい手首が覗いている。
3457家を出た時は、まだ初秋だった。既に真冬となり、空は晴れていてもどこか重い。こんなに長いこと実家を離れたのは、初めてだ。
開け放たれた縁側には湯呑みの乗った盆があり、二つの座布団がぴったりと寄り添っている。冬の陽射しは弱々しかったが、それでも縁側にはあたたかさが蹲っているようだった。
大通りで買った大袋の蜜柑を抱え直して、僕は玄関扉を開いた。ピッコロさんが奥から早足に出てきて、僕を迎えてくれる。久し振りに見るピッコロさんの微笑に、やはり気分が高揚してしまうのを感じた。墨色の袖から、若葉と紅の対照が美しい手首が覗いている。
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vẽ nguệch ngoạc #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【年齢操作・誕生】
GTの神龍、赤だったよね……? 2010年ごろ、GTを履修して「Pも縮めてよ!」って思った嘆きが令和のデェマで叶えられるとは
【飯P】凍えない夜のために 「ピッコロさん、分かってます? こんなに小さいのに、一人で帰るなんて……危ないでしょ」
強く言い切ると、ピッコロさんは眉根を寄せた。不満を隠しもせず、軽く首を振る。
何故、このような現象が起きたのかは分からない。分かるのは、見たことのない赤い神龍が空に現れ、ほとんど真上の神殿で閃光が走ったことだけ……誰かの願い事に、巻き込まれてしまったのだろうか。
気付けば、修業で砂にまみれていた両手はもみじの葉のごとく縮んでおり、ぶかぶかになった道着が辛うじて肩に引っ掛かっていた。すぐさま、ピッコロさんは手をかざして、丁度よいサイズに調整していたが。
「大袈裟だ。おれは昔から、一人でやってきた」
「小さい身体の時は、信頼できる相手に抱き上げてもらうべきですっ」
1787強く言い切ると、ピッコロさんは眉根を寄せた。不満を隠しもせず、軽く首を振る。
何故、このような現象が起きたのかは分からない。分かるのは、見たことのない赤い神龍が空に現れ、ほとんど真上の神殿で閃光が走ったことだけ……誰かの願い事に、巻き込まれてしまったのだろうか。
気付けば、修業で砂にまみれていた両手はもみじの葉のごとく縮んでおり、ぶかぶかになった道着が辛うじて肩に引っ掛かっていた。すぐさま、ピッコロさんは手をかざして、丁度よいサイズに調整していたが。
「大袈裟だ。おれは昔から、一人でやってきた」
「小さい身体の時は、信頼できる相手に抱き上げてもらうべきですっ」
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QUÁ KHỨ2011年7月に個人サイトで書いた飯Pをシーズン的に引っ張り出してきました。14年も前だから文が下手でも恥ずかしくない✌️【飯P】残響 開け放った窓から、春のあたたかい風が吹き込んでいた。おれは椅子の背にかかったままだった悟飯のジャケットを取り上げ、皺を伸ばしてハンガーに吊るした。
振り返ると、部屋の中は午前とは見違えるほど片付いていた。床に落ちていた悟飯の服や鞄、机に積まれた本はすべて片付けたし、水に浸かったままだった洗い物も、取り込んだままになっていた洗濯物も、すべてあるべき場所に戻っている。
「だいぶ片付きましたね」
いつの間にか隣に立っていた悟飯が、申し訳なさそうに言った。おれはそこに悟飯が立っていることに少し驚いて、けれどすぐに気を取り直し、片付いた部屋をもう一度見渡した。
「すみません、散らかしたままで」
「何を今更」
2542振り返ると、部屋の中は午前とは見違えるほど片付いていた。床に落ちていた悟飯の服や鞄、机に積まれた本はすべて片付けたし、水に浸かったままだった洗い物も、取り込んだままになっていた洗濯物も、すべてあるべき場所に戻っている。
「だいぶ片付きましたね」
いつの間にか隣に立っていた悟飯が、申し訳なさそうに言った。おれはそこに悟飯が立っていることに少し驚いて、けれどすぐに気を取り直し、片付いた部屋をもう一度見渡した。
「すみません、散らかしたままで」
「何を今更」
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LÀM XONG急いで進めてるけど12話くらいにはなってしまいそう……少し先でベッドシーンで丸々一話使ったせいで……。ネイPのP、ちょっと子どもっぽく書いてしまう。
【ネイP】解剖台で夢を見た/04.聴診器の語るもの ネイルは殆ど、家へ帰らなくなっていた。職員がみな帰るのを待ってから仮眠室へ下りるので、それから帰宅となるとどうしても遅くなる。
元々、仮眠室へ寝泊まりすることはそう珍しくなかった。同じフロアに、簡易的なシャワールームもある。食事は水で事足りる。コインランドリーは研究所の道向かいだ。
――家へ帰ったところで、仮眠室の様子が気になって眠れず、警備員が驚くような早朝に出勤することになる。
自らが切り刻んだ研究対象への執着なのか、単純な個への執着なのかは、判然としなかった。それでも、寝袋を持ち込んで寝泊まりするようになるのは、ネイルにとって自然な選択だった。
その日ネイルは、どこか浮き足立っていた。
石室の標本に関する嘘の報告書は問題なく受理され、更に詳しく検査を進めるようにとの文言を添えた、検査項目のリストだけが戻ってきた。それも、時間がかかることを誰もが理解できる検査項目ばかりで、当分の時間は稼げそうに思われる。
3016元々、仮眠室へ寝泊まりすることはそう珍しくなかった。同じフロアに、簡易的なシャワールームもある。食事は水で事足りる。コインランドリーは研究所の道向かいだ。
――家へ帰ったところで、仮眠室の様子が気になって眠れず、警備員が驚くような早朝に出勤することになる。
自らが切り刻んだ研究対象への執着なのか、単純な個への執着なのかは、判然としなかった。それでも、寝袋を持ち込んで寝泊まりするようになるのは、ネイルにとって自然な選択だった。
その日ネイルは、どこか浮き足立っていた。
石室の標本に関する嘘の報告書は問題なく受理され、更に詳しく検査を進めるようにとの文言を添えた、検査項目のリストだけが戻ってきた。それも、時間がかかることを誰もが理解できる検査項目ばかりで、当分の時間は稼げそうに思われる。
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vẽ nguệch ngoạc #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【珈琲・お菓子】
お題混合もできず、コーヒーだけで……
【飯P】寒空と缶コーヒー 冬が深まり、夕暮れの街は凍えそうに冷えきっていた。空はどんよりと曇り、ずいぶん近く垂れ込めて見える。
それでも、ピッコロさんと並んで歩く街は、いつもよりずっと明るく感じられた。家具を買い替えたいから、持ち帰るのを手伝ってほしいと誘い出したのだ。勿論そんなことは建前で、ただ一緒にカーペットやソファなど見て、同棲をはじめる気分を味わいたかっただけなのだが。
「本当に、持ち帰らなくてよかったのか?」
「うん、宅配で大丈夫です。急がないので」
だったら何故呼んだ、と言いたそうなピッコロさんの言葉を遮るように、僕は唯一持ち帰ることにしたカーテンを大仰に抱え直した。
北風が走り抜けるたび、頬や手の甲が冷やされる。もしかすると、夜は雪になるのかもしれない。ピッコロさんも、デンデに無理やり着せられたコートのポケットへ両手を突っ込んでいる。地球人より寒さには強いと言っていたが、冷たさを感じないわけではないだろう。
1951それでも、ピッコロさんと並んで歩く街は、いつもよりずっと明るく感じられた。家具を買い替えたいから、持ち帰るのを手伝ってほしいと誘い出したのだ。勿論そんなことは建前で、ただ一緒にカーペットやソファなど見て、同棲をはじめる気分を味わいたかっただけなのだが。
「本当に、持ち帰らなくてよかったのか?」
「うん、宅配で大丈夫です。急がないので」
だったら何故呼んだ、と言いたそうなピッコロさんの言葉を遮るように、僕は唯一持ち帰ることにしたカーテンを大仰に抱え直した。
北風が走り抜けるたび、頬や手の甲が冷やされる。もしかすると、夜は雪になるのかもしれない。ピッコロさんも、デンデに無理やり着せられたコートのポケットへ両手を突っ込んでいる。地球人より寒さには強いと言っていたが、冷たさを感じないわけではないだろう。
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LÀM XONG明治大正日本風パロ飯P。最終飯Pですが、前半は空P表現あるし💅も出るし総受け感あるので無理な人は避けてね。
【飯P空P】りんごの庭と鳴けぬ鳥/04.雨乞鳥 秋のその日、町娘から無法者たちを引き剥がしたのは、ほんの偶然だった。すぐに立ち去ろうとしたのに、思いがけぬところから腕を掴まれ心底驚いた。腕が伸びてくるのに気付かず、躱すことが出来ないなど、これまで一度もなかったのだから。
「強いなァ、ずいぶん修業したろ? すげぇ奴だ、手合わせしてみてぇ! その格好、旅してんのか? 名前は? どこに泊まってる?」
男は奇妙なほど明るく、燥いだ様子で捲し立て、おれはつい怯んだ。
「ピッコロ……宿は、満室で断られてまだ……」
「なぁんだ、じゃあうち来るといい! 息子とも手合わせしてやってくれよ」
男は腕を掴んだまま、返事も聞かず歩き出す。この町へ入るまで野宿が続いていたから、泊まるところが見つかるのはありがたかったが、その強引な態度は気に入らなかった。
3290「強いなァ、ずいぶん修業したろ? すげぇ奴だ、手合わせしてみてぇ! その格好、旅してんのか? 名前は? どこに泊まってる?」
男は奇妙なほど明るく、燥いだ様子で捲し立て、おれはつい怯んだ。
「ピッコロ……宿は、満室で断られてまだ……」
「なぁんだ、じゃあうち来るといい! 息子とも手合わせしてやってくれよ」
男は腕を掴んだまま、返事も聞かず歩き出す。この町へ入るまで野宿が続いていたから、泊まるところが見つかるのはありがたかったが、その強引な態度は気に入らなかった。
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LÀM XONG10話くらいで終わりたいとか言ってたのに、少し先の話に性的なシーンを入れたので予定が狂って10話で終わるの無理になりました。ネイP次いつ書くか分かんないし、どうせならって……。【ネイP】解剖台で夢を見た/03.新しいラベル 「石室の標本について、何か分かったか?」
「報告書の通り、特段変わったことはありません……何しろ前例がないので、手探りで。慎重に進めています」
ムーリは頷き、引き続き任せる、と研究室を出て行く。ケースの観察窓を覗かれなかったことに、ネイルは胸を撫で下ろした。研究者としては、それが正しい振る舞いだ。以前ネイルがそうせずにいられなかった、無闇に観察窓の蓋を開ける行為は、暗闇で保管されていた検体にどのような影響を与えるか分からない。
ネイルの返答は、完全な嘘ではなかった。このような現象に、前例があるはずもない。腐敗せず、硬直もしない遺骸など……ただし「変わったことはない」という部分は、真っ赤な嘘だ。
石室の標本はもう、標本ではない。さりとて、それを報告できようか? おそらく、上層部の判断で、もっと大きな研究所へ送られることになるだろう。戸籍もない古い時代のナメックが、「呼吸する標本」……良くて「実験動物」として扱われることなど、目に見えていた。
3184「報告書の通り、特段変わったことはありません……何しろ前例がないので、手探りで。慎重に進めています」
ムーリは頷き、引き続き任せる、と研究室を出て行く。ケースの観察窓を覗かれなかったことに、ネイルは胸を撫で下ろした。研究者としては、それが正しい振る舞いだ。以前ネイルがそうせずにいられなかった、無闇に観察窓の蓋を開ける行為は、暗闇で保管されていた検体にどのような影響を与えるか分からない。
ネイルの返答は、完全な嘘ではなかった。このような現象に、前例があるはずもない。腐敗せず、硬直もしない遺骸など……ただし「変わったことはない」という部分は、真っ赤な嘘だ。
石室の標本はもう、標本ではない。さりとて、それを報告できようか? おそらく、上層部の判断で、もっと大きな研究所へ送られることになるだろう。戸籍もない古い時代のナメックが、「呼吸する標本」……良くて「実験動物」として扱われることなど、目に見えていた。
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LÀM XONG明治大正日本風パロ飯P。最終飯Pですが、前半は空P表現あるし💅も出るし総受け感あるので無理な人は避けてね。
【飯P空P】りんごの庭と鳴けぬ鳥/03ひたき 「あいつ、ずっとここにいればいいよな……」
畑仕事の最中、唐突にお父さんが言った。春が目前に迫り、踏みしめる土もずいぶん湿ってやわらかい。野菜の植え付けはほとんど終わりかけて、あとは片手に持った分だけだ。
「そうですね。ずっと旅してるのも、大変だろうし。故郷の人は、見つかってほしいけど……」
お父さんがピッコロさんを連れてきた秋の日から、もう四ヶ月以上経つ。ピッコロさんは何度も出発しようとしたが、そのたび僕は、冬の旅はよくないから春まで待つよう懇々と説得したり、旅先の話をもっと聞きたいと引き留めたりした。お父さんはもっと強引で、荷物や履き物を隠して空惚けたり、単純に腕にしがみついて出発させないようにしていた。
3135畑仕事の最中、唐突にお父さんが言った。春が目前に迫り、踏みしめる土もずいぶん湿ってやわらかい。野菜の植え付けはほとんど終わりかけて、あとは片手に持った分だけだ。
「そうですね。ずっと旅してるのも、大変だろうし。故郷の人は、見つかってほしいけど……」
お父さんがピッコロさんを連れてきた秋の日から、もう四ヶ月以上経つ。ピッコロさんは何度も出発しようとしたが、そのたび僕は、冬の旅はよくないから春まで待つよう懇々と説得したり、旅先の話をもっと聞きたいと引き留めたりした。お父さんはもっと強引で、荷物や履き物を隠して空惚けたり、単純に腕にしがみついて出発させないようにしていた。
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LÀM XONGどうにか10話くらいで終わらせたい……屍姦は書きませんでした、やはり。【ネイP】解剖台で夢を見た/02.アクリル越しの視線 この研究所で正式な「宿直」が廃止されてから、五年ほど経つ。
研究室の真下にある、地下の仮眠室。ネイルだけが鍵を持ち、時おり利用していた。研究熱心なあまり、誰よりも帰宅が遅くなることが多い。今夜も、ネイルのいる部屋にのみ煌々と明かりが灯っている。
石室の標本は、死んではいない。
そう感じるたび、ネイルは「死んでいる」証拠がいくつもあると、論理で直感を抑えようとしていた。目の前に横たわるのは、「誰か」ではなく「何か」なのだと。
その晩、予定していた検査を終えたネイルは、検査機器と記録用の端末を止めて、解剖台の上のN037を見つめた。検査機器の唸りが止むと、検査室はかすかな空調の震えだけを残して静まり返る。
3363研究室の真下にある、地下の仮眠室。ネイルだけが鍵を持ち、時おり利用していた。研究熱心なあまり、誰よりも帰宅が遅くなることが多い。今夜も、ネイルのいる部屋にのみ煌々と明かりが灯っている。
石室の標本は、死んではいない。
そう感じるたび、ネイルは「死んでいる」証拠がいくつもあると、論理で直感を抑えようとしていた。目の前に横たわるのは、「誰か」ではなく「何か」なのだと。
その晩、予定していた検査を終えたネイルは、検査機器と記録用の端末を止めて、解剖台の上のN037を見つめた。検査機器の唸りが止むと、検査室はかすかな空調の震えだけを残して静まり返る。
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LÀM XONG #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【猫・牙】
お題混合で書いたよ
【飯P】寝台の獣 悟飯が神殿を訪れると、ピッコロは自室の寝台へ腰掛け、不思議なものを胸に抱いていた。
白い毛並みに黒の斑、瘦せてはいるが瞳に光はある……いたって普通の、当たり前の猫だ。ピッコロが抱いているから、なんだか未知の生物のように見える。
「死にかけていたところを拾った。もうだいぶ良い」
何気ない調子だったが、話しながらも片手で毛並みを撫でている。扉の側に立ったデンデが、笑って言った。
「一昨日、トランクスさんが来て珍しく組手してたら、この子……ピッコロさんがいじめられてると思ったのか、トランクスさんに飛びかかって噛みついたんですよ」
「へぇ……ピッコロさんに懐いてるんだねぇ」
悟飯は感心して頷く。ピッコロを守ろうと必死になる猫……仲間意識を覚えずにいられない。しかし続いたデンデの言葉に、その感情は一瞬でねじ曲がった。
1613白い毛並みに黒の斑、瘦せてはいるが瞳に光はある……いたって普通の、当たり前の猫だ。ピッコロが抱いているから、なんだか未知の生物のように見える。
「死にかけていたところを拾った。もうだいぶ良い」
何気ない調子だったが、話しながらも片手で毛並みを撫でている。扉の側に立ったデンデが、笑って言った。
「一昨日、トランクスさんが来て珍しく組手してたら、この子……ピッコロさんがいじめられてると思ったのか、トランクスさんに飛びかかって噛みついたんですよ」
「へぇ……ピッコロさんに懐いてるんだねぇ」
悟飯は感心して頷く。ピッコロを守ろうと必死になる猫……仲間意識を覚えずにいられない。しかし続いたデンデの言葉に、その感情は一瞬でねじ曲がった。
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LÀM XONG明治大正日本風パロ飯P。最終飯Pですが、前半は空P表現あるし💅も出るし総受け感あるので無理な人は避けてね。
章番02ですが、01はプロローグというか、15年前にワンシーンだけ書きたくて書いた話、その前後を捏造したのが02以降になります。01読まなくても問題ないです。
【飯P空P】りんごの庭と鳴けぬ鳥/02.せきれい お父さんは、自由な人だった。
ふらりと旅に出たかと思えば、手紙のひとつも寄越さず、突然に帰ってくる。一ヶ月戻らない時もあれば、ほんの三日で引き返して来ることもある。身勝手にも思えるが、必ず僕に、旅先で見つけた興味深いものや美しいもの、何もなければ思い出話を持ち帰ってくれたので、寂しさや悲しさを感じることはなかった。
秋の夕まぐれ、お父さんが持ち帰ったものは、これまで見たどんなものより興味深く、そして美しかった。
新芽色の膚と、一目でここいらの出身ではないと分かる面立ち。着物の奥に存在を知らせる手足は長く、全体的にしなやかな印象で、長躯でも威圧感はない。旅姿の割に極端に荷物が少なく、手にしたまっすぐな杖ばかりが無闇と象徴的だった。
3569ふらりと旅に出たかと思えば、手紙のひとつも寄越さず、突然に帰ってくる。一ヶ月戻らない時もあれば、ほんの三日で引き返して来ることもある。身勝手にも思えるが、必ず僕に、旅先で見つけた興味深いものや美しいもの、何もなければ思い出話を持ち帰ってくれたので、寂しさや悲しさを感じることはなかった。
秋の夕まぐれ、お父さんが持ち帰ったものは、これまで見たどんなものより興味深く、そして美しかった。
新芽色の膚と、一目でここいらの出身ではないと分かる面立ち。着物の奥に存在を知らせる手足は長く、全体的にしなやかな印象で、長躯でも威圧感はない。旅姿の割に極端に荷物が少なく、手にしたまっすぐな杖ばかりが無闇と象徴的だった。
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LÀM XONG #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【ドライブ・私服】
日本のドライブのことしか知らんので日本のドライブのようになってます。
【飯P】サービスエリアで起こして 免許を取って最初の遠出に、ピッコロさんを乗せて海まで走った。車に乗り慣れていないピッコロさんははじめ渋ったが、修業の成果を見て下さい、の一言で首を縦に振ってくれた。
今さら海など珍しくもないが、僕の運転する車に二人で、と思うと改まった景色に思えた。海水の冷たさ、焼けた砂の匂い、きらきらと眩しい波、遠い水平線……。
行きの道中は、あまり覚えていない。ピッコロさんが助手席にいるというだけで、やけに緊張してしまった。日も暮れかけ、まっすぐに帰る今は、気持に多少の余裕がある。
「……もっとひどく揺さぶられると思った」
「運転、下手ではないでしょう、上手くもないけど」
「自分で何もしていないのに景色が後ろへ流れていくのは、良いな」
1866今さら海など珍しくもないが、僕の運転する車に二人で、と思うと改まった景色に思えた。海水の冷たさ、焼けた砂の匂い、きらきらと眩しい波、遠い水平線……。
行きの道中は、あまり覚えていない。ピッコロさんが助手席にいるというだけで、やけに緊張してしまった。日も暮れかけ、まっすぐに帰る今は、気持に多少の余裕がある。
「……もっとひどく揺さぶられると思った」
「運転、下手ではないでしょう、上手くもないけど」
「自分で何もしていないのに景色が後ろへ流れていくのは、良いな」
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LÀM XONG前回のバーカウンターでネイPシーンいっぱい書いたらネイP好きになっちゃったので、書きます。龍族≒下半身凹、戦士型≒下半身凸、更にPは「龍族の先代神 の片割れのパッパ の生まれ変わり だから龍族」という勝手な思い込みで書いてます。そんなに触れないけど……。
【ネイP】解剖台で夢を見た/01.夢より静かに、死より美しく 気味の悪いものが運び込まれた、とため息をついたのは、ムーリだった。
第四処理室の照明は極端に抑えられ、気温は低く保たれている。静まり返った室内に、二つの足音が響いていた。
「ナメックのことはナメックに、というわけですか」
この研究所に何年も勤めているネイルも、この処理室では、自然と小声になってしまう。生きたものは自分とムーリだけのはずなのに、無数の視線を感じる気がしてならない。検体として提供されたもの、身元の分からないもの、司法解剖や病理解剖を待つもの、すべての処置を終え、月に二度の火葬処理日を待っているもの……。
「標本はそこのケースだ。37番。発見された石室の気温と湿度を再現してある……いたって普通の気温だ。自治体の記録を辿るだけでも、少なくとも七百年は閉じ込められていたのに、腐敗も硬直もない」
3438第四処理室の照明は極端に抑えられ、気温は低く保たれている。静まり返った室内に、二つの足音が響いていた。
「ナメックのことはナメックに、というわけですか」
この研究所に何年も勤めているネイルも、この処理室では、自然と小声になってしまう。生きたものは自分とムーリだけのはずなのに、無数の視線を感じる気がしてならない。検体として提供されたもの、身元の分からないもの、司法解剖や病理解剖を待つもの、すべての処置を終え、月に二度の火葬処理日を待っているもの……。
「標本はそこのケースだ。37番。発見された石室の気温と湿度を再現してある……いたって普通の気温だ。自治体の記録を辿るだけでも、少なくとも七百年は閉じ込められていたのに、腐敗も硬直もない」
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LÀM XONG明治大正日本風パロ飯P。最終飯Pですが、前半は空P表現あるし💅も出るし総受け感あるので無理な人は避けてね。
【飯P空P】りんごの庭と鳴けぬ鳥/01.うぐいす(序) 陽の光がうらうらと枯木立を濡らす小春日和、市のはずれの平屋の縁に、一心に針を動かす姿がある。姿――ピッコロと言うその異国人――は、桔梗色の紬を袷に仕立てている最中であった。もう半分も縫っただろうか、長い指を動かして端を美しく処理すると、大きな黒いはさみで余った糸を切り落とした。広げてみれば、ひとまず問題のない出来である。
少しばかりの疲れを感じ、縫いかけた着物を軽く畳んで傍らに置く。目を上げて庭を見渡すと、藪椿がささやかなつぼみをつけていた。広くこそないが、よくよく整った庭である。
真竹の四ツ目垣がぐるりを囲み、その内側に、さざんかの生垣が目隠しのように葉を繁らせている。二重に守られた庭にはさまざまの植物が整然と配置され、四季を通してかれの目を楽しませていた。
2794少しばかりの疲れを感じ、縫いかけた着物を軽く畳んで傍らに置く。目を上げて庭を見渡すと、藪椿がささやかなつぼみをつけていた。広くこそないが、よくよく整った庭である。
真竹の四ツ目垣がぐるりを囲み、その内側に、さざんかの生垣が目隠しのように葉を繁らせている。二重に守られた庭にはさまざまの植物が整然と配置され、四季を通してかれの目を楽しませていた。
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LÀM XONG #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【アイス】
ヤバ🍚路線と迷いましたが情緒に振りました。ヤバ🍚は上手な方がいるからそっちで浴びるぜ。
【飯P】ラムネのバッグを見なかった 悟飯の小さな手が差し出すアイスキャンディは、表面が既に溶けはじめている。
「ラムネと、レモンです。どっちがいい?」
「……悟飯、おれに食事は必要ない」
「食事じゃなくて、嗜好品ですよ。風味のついた水です」
棒の先から、溶けたアイスがひとしずく滴って、青々とした芝に染み込む。
悟飯はよくこうして、菓子だの、果物だのを二つ持って訪ねてくる。ピッコロは、水しか要らないと何度も説明しているのだが。
「持って帰れ」
「溶けちゃいますよ」
「だったらお前が二つ食べろ、いつものように」
「一本食べてる間に、溶けちゃいます」
日陰も暑い、夏の午後だった。溶けかけたアイスと、更に突きつける悟飯に根負けするように、仕方なくピッコロはアイスを受け取った。薄黄色のアイスから垂れた水が手を汚し、ピッコロは眉根を寄せる。
1709「ラムネと、レモンです。どっちがいい?」
「……悟飯、おれに食事は必要ない」
「食事じゃなくて、嗜好品ですよ。風味のついた水です」
棒の先から、溶けたアイスがひとしずく滴って、青々とした芝に染み込む。
悟飯はよくこうして、菓子だの、果物だのを二つ持って訪ねてくる。ピッコロは、水しか要らないと何度も説明しているのだが。
「持って帰れ」
「溶けちゃいますよ」
「だったらお前が二つ食べろ、いつものように」
「一本食べてる間に、溶けちゃいます」
日陰も暑い、夏の午後だった。溶けかけたアイスと、更に突きつける悟飯に根負けするように、仕方なくピッコロはアイスを受け取った。薄黄色のアイスから垂れた水が手を汚し、ピッコロは眉根を寄せる。
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LÀM XONG15話も書くつもりじゃなかったんだけど、ナメのイチャイチャも、バーもカクテルも書けて楽しかった! 読んでくださった方、ありがとうございます。そのうち全員分の番外を書いて、できれば本にもしたい。【飯PネイP】煙るバーカウンターにて(終)/15ライム入りトニックウォーター 送別会シーズンの忙しさも落ち着き、バー『Veil』へは通常の雰囲気が戻ってきていた。とはいえ日曜の夜は、それなりに賑やかだ。繁華街に面した窓は閉まっていて、外の音は聞こえないはずなのに、浮かれた人々の喧騒が店内にまで届いてくる心地がする。
カウンターの花瓶には、デンデが育てた青い花が飾られていた。かすみ草の白に囲まれて、雲の中に漂っているように見える。
「悟飯さん、フレーバーは何にしますか?」
「バニラと……デンデに任せるよ、その方が間違いないから」
「バニラなら、カルダモンかな? 準備しますね」
僕の前まで水煙草を持ってきて、デンデが炭を熾こしてくれる。はじめの頃に比べて、すっかり迷いのない手付きだった。忙しい週末は手織りのカーテンに覆い隠されていた水煙草も、デンデが扱えるようになったため、今は見える位置に堂々と置かれている。
3519カウンターの花瓶には、デンデが育てた青い花が飾られていた。かすみ草の白に囲まれて、雲の中に漂っているように見える。
「悟飯さん、フレーバーは何にしますか?」
「バニラと……デンデに任せるよ、その方が間違いないから」
「バニラなら、カルダモンかな? 準備しますね」
僕の前まで水煙草を持ってきて、デンデが炭を熾こしてくれる。はじめの頃に比べて、すっかり迷いのない手付きだった。忙しい週末は手織りのカーテンに覆い隠されていた水煙草も、デンデが扱えるようになったため、今は見える位置に堂々と置かれている。
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LÀM XONG #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【エプロン・料理】
【飯P】りんごと共に煮えるもの 「自炊しているんだな、感心じゃないか」
コンロにかかった小鍋をかき混ぜる後ろ姿は、部屋を見回しながら呟いたピッコロに笑って答えた。
「毎食買ってたら、お金がいくらあっても足りませんよ。大食らいですし」
「……確かにな」
一人住まいをはじめたばかりの悟飯の部屋に、まだ物は少なかった。二人掛けのテーブルとベッド、台所には冷蔵庫と一口のコンロだけが辛うじて並べてある。晩春の午後、真新しいカーテンのかかった窓の外は、穏やかな色合いに晴れていた。
「それに、大きな鍋に作っておけば、毎日作らなくても、何日か食べられるから……ほら、そこにあるでしょ?」
調理台を兼ねているようなささやかなカウンターに、十人分は煮込める容量のシチュー鍋が鎮座していた。
1547コンロにかかった小鍋をかき混ぜる後ろ姿は、部屋を見回しながら呟いたピッコロに笑って答えた。
「毎食買ってたら、お金がいくらあっても足りませんよ。大食らいですし」
「……確かにな」
一人住まいをはじめたばかりの悟飯の部屋に、まだ物は少なかった。二人掛けのテーブルとベッド、台所には冷蔵庫と一口のコンロだけが辛うじて並べてある。晩春の午後、真新しいカーテンのかかった窓の外は、穏やかな色合いに晴れていた。
「それに、大きな鍋に作っておけば、毎日作らなくても、何日か食べられるから……ほら、そこにあるでしょ?」
調理台を兼ねているようなささやかなカウンターに、十人分は煮込める容量のシチュー鍋が鎮座していた。
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LÀM XONG今回ネイPシーンのみなので繊細な飯P派の方はすみません🥺客🍚とマスター💅のバーテンダーぴ取り合い。ネイP描写多めで書きますがラストは飯P予定。
【飯PネイP】煙るバーカウンターにて/14ヴァージンモヒート 四人分のティーカップを片付けながら、デンデはネイルに温室の鍵とメモを渡した。
「週末には戻りますので、改良中の鉢だけメモの通り世話をお願いします。ネイルさんなら安心です!」
「ああ、カルゴによろしくな」
温室はすっかり任されているというのは、本当らしかった。ネイルも、メモの内容についてあれこれ詳しく質問している。悟飯にも分からない話ばかりのようで、おれたちは蚊帳の外だった。
その晩の閉店は、少し遅くなった。日曜は長居する客が多い。「仕事帰りに一杯」ではなく、最初から飲むつもりで来ているからだ。
CLOSEDの看板を下げ、カウンター以外の照明を落とす。
「せっかく炭が熾きているから、水煙草はどうだ?」
3999「週末には戻りますので、改良中の鉢だけメモの通り世話をお願いします。ネイルさんなら安心です!」
「ああ、カルゴによろしくな」
温室はすっかり任されているというのは、本当らしかった。ネイルも、メモの内容についてあれこれ詳しく質問している。悟飯にも分からない話ばかりのようで、おれたちは蚊帳の外だった。
その晩の閉店は、少し遅くなった。日曜は長居する客が多い。「仕事帰りに一杯」ではなく、最初から飲むつもりで来ているからだ。
CLOSEDの看板を下げ、カウンター以外の照明を落とす。
「せっかく炭が熾きているから、水煙草はどうだ?」
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vẽ nguệch ngoạc #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【水・雨】
【飯P】水のにおい 「また濡れるぞ、もう少しこっちへ来い」
洞穴の奥から声をかけたのは、濡れたマントを外し壁に凭れたピッコロだった。悟飯は戸惑いながらも、言われるがままに洞穴の入口を離れる。
普段は乾ききった荒野が、今はひどい俄か雨に覆われている。雨脚が弱い内は、いつもと変わらず修業に打ち込んでいたが、目の前が真っ白になるほどの土砂降りになっては中断せざるを得ない。少なくとも、まだ幼く、指導を受け始めたばかりで未熟な悟飯は。
「雨、止むでしょうか……」
「この時期の雨は、長くは降らない。雨脚が弱まれば再開だ」
ピッコロから少し離れた入口側に腰掛けて、悟飯は狭い空間を見回した。岩肌が剥き出しの壁面に植物はなく、荒天のせいもあって薄暗い。
1696洞穴の奥から声をかけたのは、濡れたマントを外し壁に凭れたピッコロだった。悟飯は戸惑いながらも、言われるがままに洞穴の入口を離れる。
普段は乾ききった荒野が、今はひどい俄か雨に覆われている。雨脚が弱い内は、いつもと変わらず修業に打ち込んでいたが、目の前が真っ白になるほどの土砂降りになっては中断せざるを得ない。少なくとも、まだ幼く、指導を受け始めたばかりで未熟な悟飯は。
「雨、止むでしょうか……」
「この時期の雨は、長くは降らない。雨脚が弱まれば再開だ」
ピッコロから少し離れた入口側に腰掛けて、悟飯は狭い空間を見回した。岩肌が剥き出しの壁面に植物はなく、荒天のせいもあって薄暗い。
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LÀM XONG今回は飯P比重が高めかな客🍚とマスター💅のバーテンダーぴ取り合い。ネイP描写多めで書きますがラストは飯P予定。
【飯PネイP】煙るバーカウンターにて/13スカイダイビング 「……それ、綺麗な色ですね。何のお酒ですか?」
ネイルさんが静かに注いでいるのは、真っ青なリキュールだ。土曜の夜、『Veil』は週末の割にはゆったりとした雰囲気だった。十一月も後半に差し掛かり、外はすいぶん寒さが深まった。ピッコロさんは、デンデに引きずられてキッチンへ引っ込んでいる。
「ブルーキュラソーです。オレンジの皮だけを使ったリキュールで、元は無色……グリーン、レッドなんかもありますね」
「僕にもそれで、何か作ってもらえますか?」
ネイルさんは頷き、シェイカーへ次々に材料を注ぐ。ここへ初めて来た時は分からなかったラムの瓶も、ラベルを読まなくても分かるようになった。ネイルさんがシェイカーを振る。一分の隙もない正確さで、銀色のシェイカーの上を照明が行き来する。専門外の僕から見ても、その技術がどれほど高いか感じられる繊細な美しさだ。
3733ネイルさんが静かに注いでいるのは、真っ青なリキュールだ。土曜の夜、『Veil』は週末の割にはゆったりとした雰囲気だった。十一月も後半に差し掛かり、外はすいぶん寒さが深まった。ピッコロさんは、デンデに引きずられてキッチンへ引っ込んでいる。
「ブルーキュラソーです。オレンジの皮だけを使ったリキュールで、元は無色……グリーン、レッドなんかもありますね」
「僕にもそれで、何か作ってもらえますか?」
ネイルさんは頷き、シェイカーへ次々に材料を注ぐ。ここへ初めて来た時は分からなかったラムの瓶も、ラベルを読まなくても分かるようになった。ネイルさんがシェイカーを振る。一分の隙もない正確さで、銀色のシェイカーの上を照明が行き来する。専門外の僕から見ても、その技術がどれほど高いか感じられる繊細な美しさだ。
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LÀM XONG荒野、星空めちゃくちゃ綺麗そうだな……#飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負
お題【星・願いごと】
【飯P】小石の環に星落ちる時 数日前までは心地よかった夜風に、やや寒さを感じるようになってきた。荒野の地面は夏の湿り気を失いつつあり、砂埃が容赦なく舞い上がる。草の匂いも、いくぶん渇いてきていた。
悟飯は空を見上げて、欠伸をかみ殺した。パオズ山の自宅からも星はよく見えたが、ここから見る星空は更に明るい。
「あ、流れ星だ!」
焚き火に木の枝をくべながら、ピッコロもつられたように夜空に目を上げる。途端、また一つ星が流れた。悟飯は燥いで、ピッコロに笑いかける。
「見えました? 流れ星!」
「ああ」
素っ気ないピッコロの返答にも、この数ヵ月ですっかり慣れた。何も、怒っていたり、機嫌が悪いわけではない。
悟飯は立ち上がり、小石を拾いはじめる。ピッコロの膝の下から丸い小石を拾い上げると、静かな声が降ってくる。
1956悟飯は空を見上げて、欠伸をかみ殺した。パオズ山の自宅からも星はよく見えたが、ここから見る星空は更に明るい。
「あ、流れ星だ!」
焚き火に木の枝をくべながら、ピッコロもつられたように夜空に目を上げる。途端、また一つ星が流れた。悟飯は燥いで、ピッコロに笑いかける。
「見えました? 流れ星!」
「ああ」
素っ気ないピッコロの返答にも、この数ヵ月ですっかり慣れた。何も、怒っていたり、機嫌が悪いわけではない。
悟飯は立ち上がり、小石を拾いはじめる。ピッコロの膝の下から丸い小石を拾い上げると、静かな声が降ってくる。
加糖 ちょこなん糖
LÀM XONG(改)少し手入れしました(旧)二日で描いたのでワンドロくらいのやっつけ感、もとい勢いで
絵はザクザクですが、どうしても描いて次に行きたかった😂
こんなメモがたくさんあるのです 12
summeralley
THÔNG TIN6/15 星に願いをゆ 28b Summer alley
新刊『廃墟の灯』
A5サイズ10章68ページ成人向け。
廃墟となった無人の街に暮らす飯Pのお話の試し読みです。
03章を途中まで載せます。NAVIOの方には別の章を載せてますので、興味があって見れる方はそちらもどうぞ~
【飯P】廃墟の灯/試し読み03.廃墟の街
砂の散ったアスファルトに、錆びた鉄骨とひしゃげた鉄パイプが転がっている。
山々のように聳える工場群は今やその役割を終え、徐々に朽ち果てつつあるのが、この距離から振り仰いでも明らかだった。
ひび割れた舗道には雑草が繁り、道の両端に並ぶ建物の外壁にも蔦が這いまわっている。ガラスはどれも汚れており、庇はことごとく破れて垂れ下がっていた。看板やシャッターの文字はほとんど消え失せ、赤茶けた錆だけが無闇と存在を主張している。
ピッコロが姿を眩ませたのは、両刃の剣を二人で見た直後だった。
はじめ数日は、悟飯もデンデたちも、どこかで修業に打ち込んでいるのだろう、と考えた。しかし一週間経ち、十日経ち……それでも戻る様子がない。流石に、こんなに長い期間を留守にするのに一言も告げていないのはおかしい。気が全く感じられず、意図的に身を隠していることは明らかだった。
2764砂の散ったアスファルトに、錆びた鉄骨とひしゃげた鉄パイプが転がっている。
山々のように聳える工場群は今やその役割を終え、徐々に朽ち果てつつあるのが、この距離から振り仰いでも明らかだった。
ひび割れた舗道には雑草が繁り、道の両端に並ぶ建物の外壁にも蔦が這いまわっている。ガラスはどれも汚れており、庇はことごとく破れて垂れ下がっていた。看板やシャッターの文字はほとんど消え失せ、赤茶けた錆だけが無闇と存在を主張している。
ピッコロが姿を眩ませたのは、両刃の剣を二人で見た直後だった。
はじめ数日は、悟飯もデンデたちも、どこかで修業に打ち込んでいるのだろう、と考えた。しかし一週間経ち、十日経ち……それでも戻る様子がない。流石に、こんなに長い期間を留守にするのに一言も告げていないのはおかしい。気が全く感じられず、意図的に身を隠していることは明らかだった。
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LÀM XONG #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【パーティ】
【飯P】灯火が消えたらはじめよう 人の多さに辟易して、ピッコロは会場の隅から歓談する人々を眺めていた。グラスはとうに空になって、腰高の塀に置いてある。
初夏の夜空のもと、屋外にガーデンテーブルを並べた、ごくカジュアルなパーティーだった。ちょっとした賞の授与と、研究者たちの懇親……。
招待状には悟飯の名前に添えて「プラスワン」と書かれている。誰か一人、付き添いと参加して良いということだ。ピッコロはそのプラスワンとして、連れて来られていた。
年若い研究者たちは、後輩や友人をプラスワンとしている者がほとんどで、時おり配偶者や、それに準ずる相手を連れている者もいる。研究とは何の関係もない自分に声をかけるとは……研究の場で気の合う者がいないのかと、ピッコロはやや心配になる。
1722初夏の夜空のもと、屋外にガーデンテーブルを並べた、ごくカジュアルなパーティーだった。ちょっとした賞の授与と、研究者たちの懇親……。
招待状には悟飯の名前に添えて「プラスワン」と書かれている。誰か一人、付き添いと参加して良いということだ。ピッコロはそのプラスワンとして、連れて来られていた。
年若い研究者たちは、後輩や友人をプラスワンとしている者がほとんどで、時おり配偶者や、それに準ずる相手を連れている者もいる。研究とは何の関係もない自分に声をかけるとは……研究の場で気の合う者がいないのかと、ピッコロはやや心配になる。
summeralley
LÀM XONG #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【念話】
念話の定義がいまいち分かんないけど
送信⇒自由に出来る
受信⇒ほぼ出来る
思考を覗く⇒相手の能力や精神状態による
的な感じで認識してます。
【飯P】協力お待ちしてます ピッコロはいつものように、神殿から地上を見下ろしていた。見事な星月夜のやわらかい空気が、白い石畳の上にも満ちている。風は強いが、夏の夜には却って心地よさを感じさせた。
悟飯との修業の予定をふと思い出し、念話を飛ばしてみる。話しかける前に思考を覗くと、ひたすら数式が流れていく。どうやら、勉学に励んでいるらしい。
「……遅くまで感心だな。起きていてよかった」
『ピッコロさん? こんな時間に……急用ですか?』
「来週はいつもの草原ではなく、北端の山脈へ行こう、寒い土地にも慣れるべきだ」
……というのは建前で、正直なところ、そろそろ暑さにうんざりしはじめていた。思い切り寒い場所へ行ってみれば、少しは暑さが懐かしくなるかもしれない。
1671悟飯との修業の予定をふと思い出し、念話を飛ばしてみる。話しかける前に思考を覗くと、ひたすら数式が流れていく。どうやら、勉学に励んでいるらしい。
「……遅くまで感心だな。起きていてよかった」
『ピッコロさん? こんな時間に……急用ですか?』
「来週はいつもの草原ではなく、北端の山脈へ行こう、寒い土地にも慣れるべきだ」
……というのは建前で、正直なところ、そろそろ暑さにうんざりしはじめていた。思い切り寒い場所へ行ってみれば、少しは暑さが懐かしくなるかもしれない。
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LÀM XONG #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【修行】
セル編🍚かハイスク🍚かどっちで書くか迷ったけど、最近セル編🍚書いてない気がしたので……
【飯P】指南すべきは宵に尽く 夏の夕暮れの風は、実にゆっくりと夜を連れてくる。濃く湿った夕陽が落ちるにつれて、地平線に近い空の底だけが鮮やかな紅色に染まり、天頂から滑り落ちる濃紺は、紫を経てそこに到達する。
ピッコロさんが無言のままに服を整えるのを、僕は地面に座り込んで見ていた。最後の最後で、躱すことも受け流すこともできず拳を受け止めたから、手のひらに痺れが残っている。手を握り込んで、また開いて、じっと眺めていると、ピッコロさんから声がかかる。
「そろそろ、終わりだな」
「はい! 明日また……」
「違う。おれではもう、セルすら圧倒したお前の修業の相手にはならん。今日で終わりだ」
僕は言葉の意味を理解できず、少しのあいだ返事に詰まった。草擦れのかすかな音が、やけに遠くから響くようだ。一瞬の後に慌てて身を乗りだし、手のひらをかざした。
1770ピッコロさんが無言のままに服を整えるのを、僕は地面に座り込んで見ていた。最後の最後で、躱すことも受け流すこともできず拳を受け止めたから、手のひらに痺れが残っている。手を握り込んで、また開いて、じっと眺めていると、ピッコロさんから声がかかる。
「そろそろ、終わりだな」
「はい! 明日また……」
「違う。おれではもう、セルすら圧倒したお前の修業の相手にはならん。今日で終わりだ」
僕は言葉の意味を理解できず、少しのあいだ返事に詰まった。草擦れのかすかな音が、やけに遠くから響くようだ。一瞬の後に慌てて身を乗りだし、手のひらをかざした。
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LÀM XONG書いてる私にもンデちゃんだけが癒し……。客🍚とマスター💅のバーテンダーぴ取り合い。ネイP描写多めで書きますがラストは飯P予定。
【飯PネイP】煙るバーカウンターにて/11トワイライト 十月も半ばに差しかかった月曜だった。急に打ち合わせが中止になった僕は、国道沿いの広い歩道を一人歩いていた。午後遅い穏やかな日差しの中、街路樹の金木犀が満開で、辺りは目の覚めるような香りに包まれている。
『Veil』のすぐそば、小さな植物園の前に差し掛かって、デンデの昼の職場がここだったと思い出した。途端、門をくぐる誰かが目に入る。長い手足に、柳葉のような膚……ネイルさんだ。僕へ気付くと、笑って手を振ってくれる。
「お仕事帰りですか? 店に飾る花を受け取りに来たんです。ご一緒しませんか?」
「お邪魔になりませんか」
「まさか。デンデも喜びます」
ネイルさんの言葉の通り、僕らを迎えたデンデはとても喜んでくれた。まずは花壇をひとまわりし、育てている花の説明をしてくれる。どの花もいきいきと咲いており、デンデがどれほど大切に世話をしているか伝わってくる。
4478『Veil』のすぐそば、小さな植物園の前に差し掛かって、デンデの昼の職場がここだったと思い出した。途端、門をくぐる誰かが目に入る。長い手足に、柳葉のような膚……ネイルさんだ。僕へ気付くと、笑って手を振ってくれる。
「お仕事帰りですか? 店に飾る花を受け取りに来たんです。ご一緒しませんか?」
「お邪魔になりませんか」
「まさか。デンデも喜びます」
ネイルさんの言葉の通り、僕らを迎えたデンデはとても喜んでくれた。まずは花壇をひとまわりし、育てている花の説明をしてくれる。どの花もいきいきと咲いており、デンデがどれほど大切に世話をしているか伝わってくる。
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LÀM XONG #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【遊園地】
【飯P】夜間も営業しています(1700文字くらい)
出来てるのか? 出来てないのか? どっちでもいいね師弟が揃ってれば……
【飯P】夜間も営業しています 真夜中の遊園地は、当然ながら無人だった。眠りについたメリーゴーランド、夜気をたたえたコーヒーカップ、明日に備えて身を休めるジェットコースター。観覧車はその真ん中に堂々と立ち、湿った月明かりが、ゴンドラを静かに濡らしている。
「……やっぱり、鍵が要るのかぁ」
観覧車の頂上で静止しているゴンドラの扉を引いてみて、僕は肩を竦めた。ひとつ隣のゴンドラの上に立ったピッコロさんは、呆れたように僕を見ている。
「動かない遊具に乗って、どうするつもりだったんだ?」
「……上からの景色を見たかったって、だけです」
ピッコロさんは首を傾げる。確かに、今の誤魔化し方はよくなかった。神殿は、この観覧車より何十倍も高いところにある。
1753「……やっぱり、鍵が要るのかぁ」
観覧車の頂上で静止しているゴンドラの扉を引いてみて、僕は肩を竦めた。ひとつ隣のゴンドラの上に立ったピッコロさんは、呆れたように僕を見ている。
「動かない遊具に乗って、どうするつもりだったんだ?」
「……上からの景色を見たかったって、だけです」
ピッコロさんは首を傾げる。確かに、今の誤魔化し方はよくなかった。神殿は、この観覧車より何十倍も高いところにある。
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LÀM XONG #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負お題【荒野】
荒野は原点!
【飯P】覚えているか? 荒野の夕空は、いつも極限まで煮詰まっている。網膜を灼く茜色が、色の少ない大地をひととき溶岩流のように染め上げる。
砂と石、岩と風しかない、うら寂しく殺風景な荒野。けれどここは、僕にとって特別だった。
「やっと来たか。十四時と言わなかったか?」
大小二つ並んだ岩に腰掛けて、ピッコロさんが僕を睨みつける。夕陽を背負っているせいで、その姿の輪郭がくっきりと眩しくて、幻のようだった。
「すみません、仕事のトラブルで……久し振りに来たくなったんです、ここ。組手するには遅くなっちゃいましたね。待ちぼうけさせて、本当にごめんなさい」
「まぁいい。瞑想はどこでも同じだ……それよりこの岩、覚えているか? お前がいつも、座って泣いていた」
1955砂と石、岩と風しかない、うら寂しく殺風景な荒野。けれどここは、僕にとって特別だった。
「やっと来たか。十四時と言わなかったか?」
大小二つ並んだ岩に腰掛けて、ピッコロさんが僕を睨みつける。夕陽を背負っているせいで、その姿の輪郭がくっきりと眩しくて、幻のようだった。
「すみません、仕事のトラブルで……久し振りに来たくなったんです、ここ。組手するには遅くなっちゃいましたね。待ちぼうけさせて、本当にごめんなさい」
「まぁいい。瞑想はどこでも同じだ……それよりこの岩、覚えているか? お前がいつも、座って泣いていた」
summeralley
LÀM XONG転機となるお話です。客🍚とマスター💅のバーテンダーぴ取り合い。取り合いと書いてますがギスギス激しい対立はしません。ネイP描写多めで書きますがラストは飯P予定。
【飯PネイP】煙るバーカウンターにて/09ウィンナーコーヒー 『Veil』の入口で、店内を振り返ったデンデが中の誰かに話しかけている。また来ますね、と挨拶をして、こちらへ向き直った。
「こんばんは。もう帰っちゃうの?」
「悟飯さん! 今日は……いえ、どうぞお店へ! 歓迎してくれますよ、きっと!」
明るく話しながら、デンデが僕の手を引く。一体なんだか分からずにいると、店の扉が細く開いてピッコロさんが顔を出した。いつもと違い、ベストはなく、シャツの袖を捲ってアームバンドで留めている。襟元のボタンも二つ外され、リラックスした出で立ちだ。
「デンデ、どうした? 話し声が……ああ、お客様」
よく見ると、扉にはCLOSEDの看板が下げられている。ずいぶん早い閉店だ。僕の視線に気付いて、ピッコロさんが肩を竦める。
3741「こんばんは。もう帰っちゃうの?」
「悟飯さん! 今日は……いえ、どうぞお店へ! 歓迎してくれますよ、きっと!」
明るく話しながら、デンデが僕の手を引く。一体なんだか分からずにいると、店の扉が細く開いてピッコロさんが顔を出した。いつもと違い、ベストはなく、シャツの袖を捲ってアームバンドで留めている。襟元のボタンも二つ外され、リラックスした出で立ちだ。
「デンデ、どうした? 話し声が……ああ、お客様」
よく見ると、扉にはCLOSEDの看板が下げられている。ずいぶん早い閉店だ。僕の視線に気付いて、ピッコロさんが肩を竦める。