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    summeralley

    @summeralley

    夏路です。
    飯Pなど書き散らかしてます。

    ひとまずここに上げて、修正など加えたら/パロは程よい文章量になったら最終的に支部に移すつもり。

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    だんだん使いこなして動画とか録りまくってたらかわいいね……🥹

    ワンライ お題【携帯電話】

    #飯P
    #二次創作BL
    secondaryCreationBl

    【飯P】一行の返信 無事に就職した僕は、ピッコロさんに一台の携帯電話を渡した
     「こんなに忙しくなるなんて……大好きなピッコロさんに会えなくて、仕事に集中できません!」
     渋々と受け取ってくれたピッコロさんは、しかし返信は滅多にしてくれなかった。ピッコロさんの手には、携帯電話のキーは小さすぎるらしい。
     けれどそれ以来、僕のチャットアプリの上部にはいつもピッコロさんの名前がある。返信がなくとも、既読の表示がつくだけでも嬉しくて、些細なことも写真と共に送ってしまう。
     ある時、音声入力を教えたらほんの少しだけ返信が増えた。
     「通勤中にかわいい犬がいました」
     『大きい』
     「日替わり定食、量もあって美味しかったです!」
     『多い』
     「山頂からの景色です、少し疲れました」
     『寝ろ』
    、素っ気ない一行の返信も、ピッコロさんが見てくれている証拠で、何だかくすぐったい。
     その内、ピッコロさんの側からも写真が届くようになった。『デンデ』とだけ書かれた後ろ姿。『鳩』と添えられた、ブレた鳥。『虹』と書かれているが、薄すぎて青空にしか見えない。
     ――十分だった。僕がいないところで、僕を思い出して、送ってくれた。それ以上のことがあるだろうか?
     その日も僕は、翌日の予定を尋ねるメールを送った。
     『愛する弟子の、組手の相手してくれませんか? 明日、忙しくなければ』
     返信は来ないことも多いが、修業に関することだけは絶対に答えてくれる。それを逆手にとって、ふざけた書き方をした。いつ返信が来てもいいように、仕事中ずっと見えるところに携帯電話を置いていた。
     けれど夜になり、残業を終え帰る時間になっても、画面は沈黙したままだった。
     ……もしかすると、何か用事があって、断りあぐねているのかも。
     考えながら歩いていると、不意にポケットで着信音が鳴った。慌てて取り出して、すぐに画面を見る。
     そこには、いつものように一行の返信が光っていた。
     『愛してる』
     ……手が震えた。
     目を擦っても文字は変わらない。夢じゃない。本当に送られてきた。一度画面を伏せて、深呼吸する。
     再び見る。間違いない。
     これを送るか送るまいか迷って、こんなにも返信が遅かったのだ。
     考えるより早く、体が動いていた。夜風を切って、神殿まで一気に駆ける。
     ピッコロさんは石畳の向こうに立って、黒く塗り潰された地上を見下ろしていた。
     「ピッコロさんっ!」
     息を整える間もなく、舞い降りた僕は駆け寄る。ピッコロさんは振り向いて、驚いた顔をした。
     「悟飯? どうした」
     「返信……! 僕もです、いや、僕の方がずっと!」
     抱きついた身体のあたたかさ、確かな厚み。夜気に冷やされた手のひらが、優しく僕の背中を抱きとめる。それにしても、愛してるとまで送ってくれたのに、ずいぶん怪訝な顔だ。
     「ちゃんと返信をしただろう? 何故わざわざ……」
    「だからその返信で居ても立ってもいられなくて、僕」
    「明日の話だったろう、お前が尋ねてきたのは」
     ……どうも、話が噛み合わない。まさかと思いながら、僕は確かめる。
     「あの……僕になんて、返事しましたか?」 
    「だから……明日は『空いてる』と」
    「空いてる」
     やっぱり! 音声入力で、誤認識されてしまったのだ。それも、僕が心底喜びそうなことに……。
     「そんなに喜ぶとは……修業に熱心だとは、思わなかった」
     僕は脱力して、ピッコロさんに携帯電話を突きつけた。
     「これ……愛してるって! 送られて来たんです!」
     月明かりだけの薄暗い前庭に、画面が煌々と光る。ピッコロさんは画面を覗き込み、誤変換を確かめ、そして笑った。
     「間違いに気付かなかったのは謝るが、お前、これは会話になっていないのが分からないか?」
    「そう……まぁ、そうですけど……」
     何でもないことのように謝られて、何も言えなくなってしまう。確かに、指摘されれば全く会話になっていない。でも、嬉しくてそんな冷静な判断ができなかった。これが他の誰かから来たのであれば、僕もすぐ、誤入力だと気付いたはずだ。
     見るからにしょげた僕を眺めて、ピッコロさんは静かに言った。
     「……こんな大事なこと、おれは顔も見ずに伝えたりしない」
     夜空を融かしたような瞳が、真っ直ぐに僕を見つめている。一歩僕へ歩み寄って、静かに手を取る。少しだけ冷たい、僕の手を包んでしまえる手……まなざしで僕を縫いとめておいて、ごく静かに、形よい唇が開かれる。
     「愛している……悟飯」
     耳元での囁きと、やわらかな微笑に、僕の呼吸は止まりかける。
     返事もできない僕を意にも介さず、手のひらが今度は背中を軽く押した。
     「明日はお前が言い出した修業だぞ、遅れるなよ」
     ほとんど硬直していた僕は、はぁ、とかえぇ、とかなんとか返事らしき声を出して、ふらふらと神殿を飛び立つ。ピッコロさんの方は、振り返れなかった。いま目が合えば、きっと心臓が止まってしまう。
     ポケットの中には、画面を開いたままの携帯電話がある。確かに、これの一行の返信は、間違いだった。けれどそのために、まったくの不意打ちで、本当の言葉を受け取れた。
     神殿から家までは、いつもの速度で飛べばあっという間だ。けれど今夜ばかりは、ポケットが無闇と重たく感じられて、真っ直ぐに進むだけでも精一杯だった。
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