はんじゅく/さち
PAST※10年以上前に描いたものですので矛盾や解釈違いがあると思いますので予めご了承ください。私もなぜ食満先輩の前髪をこう描いたのか今思うと不思議です。
20140112発行
【お手柔らかに!】五年生+食満
Web再録 16
あおば
DONEにんらいの再掲五年生のある日の話
寒い夜 月が高くなり始めた頃、紙に筆を滑らせていた勘右衛門が、しまった、と声を上げた。
「三郎から資料もらうことになってたんだった」
「資料が無いと出来上がらないの?」
布団が擦れる音がして、同室の兵助が振り返ったのを背で感じながら勘右衛門は静かに筆を置いた。
「うーん、ちょっとね、新しく調べるのに時間がかかりそうなやつだから……」
明日までに仕上げたいんだよなと言いながら手元の硯と筆を整えると、小さく息を吐いた。こんな夜遅くに三郎が起きているかは分からないがひとまず部屋の前まで行ってみようと立ち上がる。そして同室に一声かけてから、かた、と部屋の戸を開けた。
「さむっ」
勘右衛門がぶるりと身震いした。ほんの少し開けただけで一気に部屋に入りこんだ冷たい風に、室内にいた兵助も咄嗟に全身を布団に突っ込んだ。まだ起きていた兵助は手元に本を抱えていた。いつもは机に向かって本を読む兵助だったが、今日はあまりの寒さに布団の横に灯りを持ってきており、布団に潜り込んだまま紙を繰っていた。
1544「三郎から資料もらうことになってたんだった」
「資料が無いと出来上がらないの?」
布団が擦れる音がして、同室の兵助が振り返ったのを背で感じながら勘右衛門は静かに筆を置いた。
「うーん、ちょっとね、新しく調べるのに時間がかかりそうなやつだから……」
明日までに仕上げたいんだよなと言いながら手元の硯と筆を整えると、小さく息を吐いた。こんな夜遅くに三郎が起きているかは分からないがひとまず部屋の前まで行ってみようと立ち上がる。そして同室に一声かけてから、かた、と部屋の戸を開けた。
「さむっ」
勘右衛門がぶるりと身震いした。ほんの少し開けただけで一気に部屋に入りこんだ冷たい風に、室内にいた兵助も咄嗟に全身を布団に突っ込んだ。まだ起きていた兵助は手元に本を抱えていた。いつもは机に向かって本を読む兵助だったが、今日はあまりの寒さに布団の横に灯りを持ってきており、布団に潜り込んだまま紙を繰っていた。