Jem
СДЕЛАНО拳と拳「拳と拳」
九月半ばの空は高い。俺は、伊黒に飛ばした爽籟を見送って、まだ暑さの残る陽光に眼をすがめた。今日は、あいつの…誕生日?らしい。甘露寺が一月も前からキャァキャァと大騒ぎしてて、俺はそんな西洋かぶれの祭りなどどうでもいいと思っていたんだが。…そういうものがある、ってなると、気になるのが人情なんだよなァ。
やがて、爽籟がごく簡単な手紙を持って戻ってきた。伊黒と俺のやりとりは、いつもそんなんだ。俺は字が書けないから、爽籟が覚えて喋れる程度のことを吹き込んで飛ばし、伊黒は俺が読める程度の手紙を寄越す。この時も“午後に来い”。それだけだった。
午後早く、俺は気にいりの甘味処で手土産を物色していた。といっても、伊黒は食べねェからなァ。結局俺の腹に収まるんだが、それでも相手の特別な日に手渡す品を選ぶのは、ほのかに心が浮き立つ気がした。
2069九月半ばの空は高い。俺は、伊黒に飛ばした爽籟を見送って、まだ暑さの残る陽光に眼をすがめた。今日は、あいつの…誕生日?らしい。甘露寺が一月も前からキャァキャァと大騒ぎしてて、俺はそんな西洋かぶれの祭りなどどうでもいいと思っていたんだが。…そういうものがある、ってなると、気になるのが人情なんだよなァ。
やがて、爽籟がごく簡単な手紙を持って戻ってきた。伊黒と俺のやりとりは、いつもそんなんだ。俺は字が書けないから、爽籟が覚えて喋れる程度のことを吹き込んで飛ばし、伊黒は俺が読める程度の手紙を寄越す。この時も“午後に来い”。それだけだった。
午後早く、俺は気にいりの甘味処で手土産を物色していた。といっても、伊黒は食べねェからなァ。結局俺の腹に収まるんだが、それでも相手の特別な日に手渡す品を選ぶのは、ほのかに心が浮き立つ気がした。
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СДЕЛАНО🔥🐍!🐍さん生誕祭小説3本目です✨白萩の君へ「白萩の君へ」
流れる黒髪。父上の羽織の陰からじっと、こちらを見つめていた金と碧の瞳。
俺は、あの瞬間――初めての恋に落ちた。
嫋やかな風情は、秋風に揺れる尾花のよう。艶やかな髪に見え隠れする白い頬は、叢雲にそっと身を隠すお月様のようだった。
その子の名は、伊黒小芭内。
「小芭内ーッ!おめでとう!起きているか!?君の誕生日だ!!」
俺は大量の芋羊羹を携えて、小芭内宅の玄関を引き開けた。
九月半ば。朝は、少し冷えるようになった。朝つゆが玄関先の竜胆に輝いている。
「爽やかな朝だ!小芭内!」
勝手知ったる幼馴染の家。居間、書斎。最後にガラリと寝所の襖を開けると、布団の上に小芭内が身を起こしていた。まだ、目が覚めきらないのだろう。白い頬はなお白く、ぐったりと額に手を当てている。
1795流れる黒髪。父上の羽織の陰からじっと、こちらを見つめていた金と碧の瞳。
俺は、あの瞬間――初めての恋に落ちた。
嫋やかな風情は、秋風に揺れる尾花のよう。艶やかな髪に見え隠れする白い頬は、叢雲にそっと身を隠すお月様のようだった。
その子の名は、伊黒小芭内。
「小芭内ーッ!おめでとう!起きているか!?君の誕生日だ!!」
俺は大量の芋羊羹を携えて、小芭内宅の玄関を引き開けた。
九月半ば。朝は、少し冷えるようになった。朝つゆが玄関先の竜胆に輝いている。
「爽やかな朝だ!小芭内!」
勝手知ったる幼馴染の家。居間、書斎。最後にガラリと寝所の襖を開けると、布団の上に小芭内が身を起こしていた。まだ、目が覚めきらないのだろう。白い頬はなお白く、ぐったりと額に手を当てている。
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СДЕЛАНО🐍さんお誕生日おめでとう🎂の💎兄貴からの祝福です🥹痺れ紅と天華「痺れ紅と天華」
――いた、いた。私服でも変わらぬ縞羽織。
俺は、瓦屋根から一気に滑り降りて、伊黒の背後に着地した。
銀座の通りを行く紳士淑女たちが、目を丸くしてこちらを見る。ま、派手な登場ってのはこういうもんだ。
「よぅ、伊黒!派手を嫌うお前が、銀座デェトとはなぁ」
「…!宇髄、なんでここに…?」
伊黒が、びくりと振り返る。“デェト”の一語が効いたようだ。耳の端がほんのり赤らんでいる。
「聞いたぜ?甘露寺とお前の誕生日祝いデェト。女に誘われたなら、男は派手に応えてみせねぇと」
「そ、そんな特別なことは…いつも通り、だ…一緒に歩いて、おしゃべりして、甘味…でも…」
声が小さくなっていくのを、俺はわざと追い打ちをかける。一歩寄って、耳元で囁いた。
1678――いた、いた。私服でも変わらぬ縞羽織。
俺は、瓦屋根から一気に滑り降りて、伊黒の背後に着地した。
銀座の通りを行く紳士淑女たちが、目を丸くしてこちらを見る。ま、派手な登場ってのはこういうもんだ。
「よぅ、伊黒!派手を嫌うお前が、銀座デェトとはなぁ」
「…!宇髄、なんでここに…?」
伊黒が、びくりと振り返る。“デェト”の一語が効いたようだ。耳の端がほんのり赤らんでいる。
「聞いたぜ?甘露寺とお前の誕生日祝いデェト。女に誘われたなら、男は派手に応えてみせねぇと」
「そ、そんな特別なことは…いつも通り、だ…一緒に歩いて、おしゃべりして、甘味…でも…」
声が小さくなっていくのを、俺はわざと追い打ちをかける。一歩寄って、耳元で囁いた。
Jem
СДЕЛАНО🐍さんお誕生日おめでとう🎂今年は早く出来ました💖🐍🍡銀座デェトでございます。貴方の生まれた日「貴方の生まれた日」
「はわわ、素敵~…」
思わず、声が出た。鬼殺の合間、たまのお楽しみ。大好きな少女雑誌に、西洋の風習が紹介されていたのだ。日本では、お正月にみんなまとめて歳を取る。でも、西洋では一人一人の生まれた日を祝うのですって。お誕生日には、皆で集まって、ご馳走をいただいて、小さな贈り物をする。そして、お誕生日には、十二の星座が割り当てられていて――…
なんて浪漫があって、素敵な思いつき!私はご機嫌で手紙をしたためた。
――伊黒さんのお生まれになった日は、何月何日でせうか。
西洋では、それぞれの生まれた日をお祝いするのだそうでございます。
生まれ持った星座でその年を占うのも、素敵でございませう。
2144「はわわ、素敵~…」
思わず、声が出た。鬼殺の合間、たまのお楽しみ。大好きな少女雑誌に、西洋の風習が紹介されていたのだ。日本では、お正月にみんなまとめて歳を取る。でも、西洋では一人一人の生まれた日を祝うのですって。お誕生日には、皆で集まって、ご馳走をいただいて、小さな贈り物をする。そして、お誕生日には、十二の星座が割り当てられていて――…
なんて浪漫があって、素敵な思いつき!私はご機嫌で手紙をしたためた。
――伊黒さんのお生まれになった日は、何月何日でせうか。
西洋では、それぞれの生まれた日をお祝いするのだそうでございます。
生まれ持った星座でその年を占うのも、素敵でございませう。