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    Jem

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    Jem

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    🐍さんお誕生日おめでとう🎂の💎兄貴からの祝福です🥹

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    痺れ紅と天華「痺れ紅と天華」

    ――いた、いた。私服でも変わらぬ縞羽織。

     俺は、瓦屋根から一気に滑り降りて、伊黒の背後に着地した。
     銀座の通りを行く紳士淑女たちが、目を丸くしてこちらを見る。ま、派手な登場ってのはこういうもんだ。

     「よぅ、伊黒!派手を嫌うお前が、銀座デェトとはなぁ」

     「…!宇髄、なんでここに…?」

     伊黒が、びくりと振り返る。“デェト”の一語が効いたようだ。耳の端がほんのり赤らんでいる。

     「聞いたぜ?甘露寺とお前の誕生日祝いデェト。女に誘われたなら、男は派手に応えてみせねぇと」

     「そ、そんな特別なことは…いつも通り、だ…一緒に歩いて、おしゃべりして、甘味…でも…」

     声が小さくなっていくのを、俺はわざと追い打ちをかける。一歩寄って、耳元で囁いた。

     「そぉかぁ?甘露寺の方は、この日の記念に“オトナの階段”、一歩昇りたいんじゃないのか?お前の手で…」

     奴の左拳が鋭く動く。咄嗟に右手を挙げて受け止めようとしたが、こいつ、やたら体術に長けてるんだ。俺の手をすり抜けた裏拳は、胸に届く直前で勢いを殺し、ぽすん、と力無く当たった。

     「お前には、話した通りだ…。俺の育ちは鬼に穢されている。天女の傍にあるだけでも…浅ましい」

     俺は、伊黒の小さな拳を包んだ。本当は、こうやってコイツを包んでくれる奴が必要なんだ。

     「以前も言ったけどな、背負いすぎだろ。赤ん坊の頃に食った粥の出所まで、責任持たなくていいんだぞ」

     「…俺自身が、気になるんだ」

     致し方あるまい、と奴の手が俺の掌をすり抜けていった。

    ――なぁ、そんな細い背中に、全て一人で背負って、死にに行く気なのか?伊黒よ…

     生きてる間くらい、共に歩む女がいてもいいだろうに。



    「なぜ、ついてくる?」

     しばしの沈黙を破ったのは、伊黒だった。

    「別にぃ。同じ方向なだけだし。ほれ、この先の薬局。嫁たちの紅の材料買いにな」

     俺は小さく欠伸して答える。

    「紅を手ずから調合するのか?――まさか」

    「おう。くのいち御用達、口付け一つで毒を盛る。痺れ紅だ」

     伊黒は、足を止めた。
     人目を避けるようにして、小声で問う。

    「…愛する女に、そんな物を使わせるのか」

     俺は笑った。派手にな。

    「当たり前だろ。俺は嫁たちを守る。が、いくら俺が神だってな、戦場じゃいつ死んじまうかわからねぇ。――それでも、嫁たちには生き延びてほしいんだよ。牙を隠すくらいなら、紅に毒を仕込む。それが俺の愛し方よ」

     伊黒は視線を伏せる。唇が小さく震えた。

    「…俺は…俺なら、たとえば、甘露寺の…無垢な唇に毒を贈ることなどできない…ただ、天上の花のままに笑っていてほしい」

     二人の歩調がしばし重なる。

    「…だから、お前の過去も何も聞かせねぇってか。甘露寺は知りたいだろうに」

    「いらない。彼女の清純な世界を穢す話など」

    ――なるほど、潔癖なコイツらしい。俺から見ると、その覚悟は美しい…痛ましいほどに。

    「それが、お前の決意か…。よーし!俺様が二人の仲をもっと派手に近づける銀座名所を教えてやろう。まず、二階が静かな蕎麦屋は――」

     伊黒が大きな目を剥いた。

    「銀座名所なら調査済みだ。それに、なんだ貴様!いきなり蕎麦屋の二階とは、いやらしい!!」

     蕎麦屋の二階、鰻屋の二階といやぁ、男女がしっぽり睦み合う定番だ。伊黒がプイと顔を逸らすが、赤くなった首筋は隠せねぇ。可愛い奴だ。

     時計塔が近づいてきた。伊黒の歩調が緩む。おそらく、ここで待ち合わせなんだろう。
     俺は、ポンと伊黒の肩を包んで送り出す。

    「…よし、あとは任せたぞ。派手に決めてこいよ」

    ――生きてるうちに。全力で愛するもんだぞ、男ってのはな。

     じゃあな、と俺は背を向け、銀座の華やかな雑踏に紛れていく。
     ふと振り向くと、伊黒は真っ赤な顔を文庫本に埋めていた。

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    Jem

    DOODLEハリポタパロなら書かなきゃ!クィディッチ杯!肉体派🍃さんvs知略派🐍さん。🔥さん💎さんも参戦❣️
    安らかなれ、マイ・レディ④思い出のクィディッチ杯 じっとりと霧をまとう冬。あの日も、こんな風に暗かった。突然、家に黒い服を着た大人たちが大勢入ってきた。彼らは、幼いケイトの頭を撫でて抱きしめ、とても悲しそうな顔で告げた。

    ――もう、パパとママは帰ってこない。

     教会の鐘。閉じられた2つの棺が埋められていくのを、ケイトはじっと見つめていた。

    ――可哀想なケイト。あの日から、パパとママを恋しがり、寂しくて…お布団の中で抱き合って泣いた。私はそばに寄り添うことしかできなかった。



     暖かく燃える暖炉前に、不死川が濡らしたタオルを掛けた。部屋が乾きすぎないように。いつもの野郎2人住まいなら気にすることはないが、今日は、失神したケイティをソファに寝かせている。
     ブラックフェン村での闘いのあと、不死川と伊黒は気を失ったケイティを連れて、ベイカー街のタウンハウスに戻った。失礼して、ケイティの小さなバッグを検分したが、身元につながるような小物は一切持っていなかった。結局、どこに連絡することもできないまま、ケイティは丸1日、眠り続けている。
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    冴羽獠×槇村香
    原作以上の関係

    背中合わせに座ってる二人を書いてみたくて、書いてみた(*´ω`*)

    話の中で二人は服を着てませんが、ほぼ会話だけなので全年齢とします。
    We are Buddy. ふと目が覚めてみると、大きな背中が視界に入った。広々と、そして隆々とした、傷だらけの背中。少し背を丸くして、獠はベッドサイドに腰掛けていた。その肩は一定のリズムを刻みながら、静かに上下を繰り返している。あたしは、身体に掛けられていたシーツを払って起き上がった。
     獠の背中には、今夜あたしが残した傷以外にも、生々しい打撲の痕が残っていた。それは、あたしを庇ったがために受けた傷だった。獠はいつも、依頼人やあたしが爆発に巻き込まれたとき、必ず庇ってくれる。その大きな身体を盾にして、爆風や瓦礫から守ってくれるの。今日だって、そうやってあたしを守り、獠は負傷した。
     それが、獠の仕事。それが、獠の生業。あたしも、頭ではわかっている。けれど、こうして獠の背中を見ていると、あたしのせいで傷つけてしまった事実を、改めて突きつけられた気がした。あたしは、獠の背中へ手を伸ばした。でも、その肌へ触れる直前で、あたしの手が止まった。――触れたからと言って、何が変わるのだろう。謝ったって、慰めたって、感謝したって、この傷が消えるわけじゃない。そもそも、獠自身はそんなことを望んでいない。それは、誰よりもあたしが一番よくわかっている。だからあたしは、その傷に触れることも、その傷ついた背中を抱きしめることもできなかった。それならば、せめて――。
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