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    Jem

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    Jem

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    🐍さんお誕生日おめでとう🎂今年は早く出来ました💖🐍🍡銀座デェトでございます。

    #伊黒小芭内
    Iguro Obanai
    #鬼滅の刃
    DemonSlayer
    #甘露寺蜜璃
    ganryujiMiluri
    #おばみつ
    #伊黒小芭内誕生祭
    ikuoKobaneBirthFestival
    #伊黒小芭内生誕祭
    ikuoKobaneBirthFestival

    貴方の生まれた日「貴方の生まれた日」

    「はわわ、素敵~…」

     思わず、声が出た。鬼殺の合間、たまのお楽しみ。大好きな少女雑誌に、西洋の風習が紹介されていたのだ。日本では、お正月にみんなまとめて歳を取る。でも、西洋では一人一人の生まれた日を祝うのですって。お誕生日には、皆で集まって、ご馳走をいただいて、小さな贈り物をする。そして、お誕生日には、十二の星座が割り当てられていて――…
    なんて浪漫があって、素敵な思いつき!私はご機嫌で手紙をしたためた。

    ――伊黒さんのお生まれになった日は、何月何日でせうか。
    西洋では、それぞれの生まれた日をお祝いするのだそうでございます。
    生まれ持った星座でその年を占うのも、素敵でございませう。
    私も、伊黒さんのお誕生日を祝いたくなってしまいました。


     ややあって、伊黒さんからのお返事が返ってきた。九月十五日ですって!私は、慌てて暦をめくる。
     ああ、ドキドキしてしまう。伊黒さんの柔らかな微笑み。静かに、低くお話しする声。あんなに素敵な殿方が、小さな赤ちゃんとしてこの世に生を授かった日!
     九月十五日なら、もうすぐだ。お盆も終わって、陽射しもほんの少し柔らかくなった近頃。こんな日々は、いかにも伊黒さんが生まれ落ちるのに相応しい気がした。

     ――ねぇ、伊黒さん。どんな場所でお生まれになったの?
       お母様は、どんな方?可愛い赤ちゃんの来訪を、どれほど心待ちになさっていたかしら?



     甘露寺から来た手紙は、わずかに俺を困惑させた。自分の生まれた日、と言われても…俺の生家では、記録を取っていたかも怪しいものだ。放縦な女達は、適当にゆきずりの男とまぐわい、孕んだ子は蛇鬼に食わせていた。俺は、色違いの目に男だったことを珍しがられて取っておかれただけだ。
     仕方なく、俺を八丈島から連れ出した前炎柱様が戸籍を作ってくれた日を答えておいた。戸籍が付いたのなら、まぁ、それが人としての誕生日になるのだろう。それ以前の俺は、贄に過ぎなかったのだから。



     九月十五日。その日にこだわって、私は伊黒さんと出かける約束を取り付けた。伊黒さんは優しい方だから。いつも、私の突飛な思いつきに快く付き合ってくれるのだ。
     待ち合わせは洒落た銀座の時計塔下。ショウウインドウに映る帽子や洋服が、まるで星のよう。チンチン電車を降りた私は、ウキウキと伊黒さんの姿を探した。
     ああ、いた…!艶やかな黒髪が頬にかかっている。伊黒さんは、紺の和服にいつもの縞の羽織で、立ったまま文庫本を読んでいた。

    「伊黒さん…!」

     顔を上げた伊黒さんが、一瞬綺麗な瞳をすがめて、微笑んだ。

    「君の外出着は洋装なんだな。…素敵だよ」

     えへへ。褒められちゃった♡鬼殺ばかりでなかなか着る機会はないけれど、憧れて仕立てておいて、良かった!
     伊黒さんが軽く腕を差し出す。西洋式の、淑女をエスコートする仕草だ。私はドギマギと伊黒さんの腕に手を絡めた。

    「どこへ行きたい?カフェー・ライオンで食事にしてもいいし、新しくできた松屋銀座でも散歩するか?」

     柔らかなお声。でも、今日の私は、自分の行きたいところへ行くんじゃないの。

    「伊黒さん次第、です」

     伊黒さんが、大きな瞳を瞬いて私を見上げた。

    「あの、今日は、伊黒さんのお誕生日を祝う贈り物をしたいの。だから、伊黒さんの行きたいお店に…」

     伊黒さんは、少し考えるみたいに、お袖で口元を覆って小首を傾げた。いつもの仕草。
     ――大好きな、仕草。
     やがて、ふ、とお笑いになる。

     「…では、万年筆を。三越銀座店に行こうか」

     「ええ…そんな日用品でいいの?何でも、いいのよ。伊黒さんの宝物になるようなものを、贈りたいの」

     伊黒さんは、また眩しそうに目をすがめて、私を見た。

    「宝物だよ。懐に入れておけば、いつでも君との通信を繋いでくれる」

    「私のお手紙なんて、そんな…珍しいお話を書いているわけでもないのに」

     そっと、伊黒さんは腕に絡めた私の手を包んだ。

    「君の、息吹も笑顔も手に取るように伝わってくるよ。俺にとっては、それが一番の宝物だ」

     私の頬が、フワーッと熱くなった。もう!伊黒さんたら!

    「じゃ、じゃあ、三越で万年筆を買って…その後、資生堂パーラーへ行きましょう。いっぱい、伊黒さんのお話を聞きたいわ!生まれた場所とか、お母様の思い出とか、幼い頃の」

     伊黒さんの、細いお指が優しく私の口元を封じた。

    「もう一つ、誕生日の贈り物だ。君の話を聞きたい。ご実家の話、猫達の話、女学校の思い出話」

    「…それじゃ、いつもと同じだわ」

     私ばっかりお喋りして、私の方は伊黒さんのことを何にも知らない。

    「いつもと同じがいいんだよ。…甘露寺。君の話が、俺には最高の贈り物だ」

     いつも通り静かに微笑って、いつも通りの落ち着いたお声で、いつも通りの涼しげな横顔で――…

    ――ねぇ、伊黒さん。私はいつか、貴方のお話、聞けますか…?

     燦く銀座の街の中で、その答えはただ、静かな微笑みに隠されていた。

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    Jem

    DOODLEハリポタパロなら書かなきゃ!クィディッチ杯!肉体派🍃さんvs知略派🐍さん。🔥さん💎さんも参戦❣️
    安らかなれ、マイ・レディ④思い出のクィディッチ杯 じっとりと霧をまとう冬。あの日も、こんな風に暗かった。突然、家に黒い服を着た大人たちが大勢入ってきた。彼らは、幼いケイトの頭を撫でて抱きしめ、とても悲しそうな顔で告げた。

    ――もう、パパとママは帰ってこない。

     教会の鐘。閉じられた2つの棺が埋められていくのを、ケイトはじっと見つめていた。

    ――可哀想なケイト。あの日から、パパとママを恋しがり、寂しくて…お布団の中で抱き合って泣いた。私はそばに寄り添うことしかできなかった。



     暖かく燃える暖炉前に、不死川が濡らしたタオルを掛けた。部屋が乾きすぎないように。いつもの野郎2人住まいなら気にすることはないが、今日は、失神したケイティをソファに寝かせている。
     ブラックフェン村での闘いのあと、不死川と伊黒は気を失ったケイティを連れて、ベイカー街のタウンハウスに戻った。失礼して、ケイティの小さなバッグを検分したが、身元につながるような小物は一切持っていなかった。結局、どこに連絡することもできないまま、ケイティは丸1日、眠り続けている。
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