ミヤシロ
DONEベイX68話『表と裏』よりシエルメインのお話です。シエルがエクスに対して思うところがあるというIF話。シエルがアニメより鬱々としています。
エクスと対峙したシエルに「意外とあっさりしてるな…!」と思って書きました。
心に仮面を被せて 魚を釣って戻ってきたシエルは、予想外の来客を前に棒立ちになった。
銀狼の許に押し掛け弟子入りを志願して数日、彼は眼前に業深き者を見出す。仮面Xを名乗るブレーダー――黒須エクスはこのとき、人目に触れる屋外にて素顔を晒していた。銀狼と何やら話し込んでいたところに出くわしシエルは呆然とする。来客はエクス以外にバードと侍姿の少女が居たが、少年は驚きのあまり二人を意識の外に追いやった。
シエルの脳にエクスのみが強烈に刻みつけられる。正体を隠しているはずの子供は理由は不明だが仮面を脱ぎ、眩い笑みを振り撒いていた。明るく無邪気な、悪意というものを持ち合わせていないと言いたげな表情だ。しかしシエルは黒須エクスが一人の人間を狂わせた事実を知っていた。
8452銀狼の許に押し掛け弟子入りを志願して数日、彼は眼前に業深き者を見出す。仮面Xを名乗るブレーダー――黒須エクスはこのとき、人目に触れる屋外にて素顔を晒していた。銀狼と何やら話し込んでいたところに出くわしシエルは呆然とする。来客はエクス以外にバードと侍姿の少女が居たが、少年は驚きのあまり二人を意識の外に追いやった。
シエルの脳にエクスのみが強烈に刻みつけられる。正体を隠しているはずの子供は理由は不明だが仮面を脱ぎ、眩い笑みを振り撒いていた。明るく無邪気な、悪意というものを持ち合わせていないと言いたげな表情だ。しかしシエルは黒須エクスが一人の人間を狂わせた事実を知っていた。
ミヤシロ
DONE桜ネタ、今回はシエルが桜にさらわれる役です。クロシエと言うよりはシエクロでしょうか。
桜嵐 この日クロムとシエルは桜並木を二人並んで歩いていた。
まだ夜が明けてさほど経たぬ、冷たい空気が身を竦ませる時間帯だ。二人は目覚めて間もない街を行き、誰にも邪魔されない空間を独占した。満開の桜が咲き誇っている。薄紅の花弁がはらはらと散り始めるさまを、クロムとシエルは柔和な笑みを顔に乗せながら眺めていた。
「綺麗ッスね」
「ああ」
桜は今年もまた花を咲かせ、見る者の心を和ませる。開花予想が茶の間に流れるようになって半月、桜はほぼ予報通りの日にちに花を開いていった。盛りを迎えた途端散り始める潔さが胸に訴えるものがあるのだろう、桜は人々の心を惹きつけてやまなかった。青年と少年の心も、また。彼等は穏やかな心持ちで歩を進めていく。このときはまだ風がなく、花びらも重力に任せて静かに舞い降りるのみだった。
2071まだ夜が明けてさほど経たぬ、冷たい空気が身を竦ませる時間帯だ。二人は目覚めて間もない街を行き、誰にも邪魔されない空間を独占した。満開の桜が咲き誇っている。薄紅の花弁がはらはらと散り始めるさまを、クロムとシエルは柔和な笑みを顔に乗せながら眺めていた。
「綺麗ッスね」
「ああ」
桜は今年もまた花を咲かせ、見る者の心を和ませる。開花予想が茶の間に流れるようになって半月、桜はほぼ予報通りの日にちに花を開いていった。盛りを迎えた途端散り始める潔さが胸に訴えるものがあるのだろう、桜は人々の心を惹きつけてやまなかった。青年と少年の心も、また。彼等は穏やかな心持ちで歩を進めていく。このときはまだ風がなく、花びらも重力に任せて静かに舞い降りるのみだった。
n_n_avs
MOURNING🐉と🐢。アニメ本編の🚁搬送シーン以降のあれこれを妄想。🐉視点。pixivに掲載していたものをこちらに下げました。
黎明のポラリス『────、────』
『────! ────!』
ブラックアウトした意識の静寂(しじま)が、端の方から徐々に明ける。水中を縫うかのように不明瞭な音が、ぼんやりと覚醒を始めた聴覚を刺激した。
「────、…………、Xタワー…………離陸…………これより……、……搬送……」
途切れ途切れに聞こえてくる人の声には、淡々とした緊迫感漂っている。
『……了解。……、救急……待機します』
無線機越しにノイズが混じる。これもまた人の声だ。
次第に全身の感覚が鮮明になる。
体の芯を揺るがすような振動、空気がうねる音、そして浮遊感──。現状況が何であるかを、過去の体験から掘り起こした。
ここはヘリの機内だ。
消毒液の匂いが鼻を掠める。そして今、己の肉体は妙に安定した床面に横たわっている。
8368『────! ────!』
ブラックアウトした意識の静寂(しじま)が、端の方から徐々に明ける。水中を縫うかのように不明瞭な音が、ぼんやりと覚醒を始めた聴覚を刺激した。
「────、…………、Xタワー…………離陸…………これより……、……搬送……」
途切れ途切れに聞こえてくる人の声には、淡々とした緊迫感漂っている。
『……了解。……、救急……待機します』
無線機越しにノイズが混じる。これもまた人の声だ。
次第に全身の感覚が鮮明になる。
体の芯を揺るがすような振動、空気がうねる音、そして浮遊感──。現状況が何であるかを、過去の体験から掘り起こした。
ここはヘリの機内だ。
消毒液の匂いが鼻を掠める。そして今、己の肉体は妙に安定した床面に横たわっている。