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TRAINING日常の何でもない日の話。800文字チャレンジ52日目。
なんでもない日常(単なるシミュレーション) 行動課に所属しているからといって、ずっと仕事があるわけではない。俺たちは実働部隊だったから日々はほとんど訓練に費やされていて、それが終われば官舎に買える生活だった。それはサラリーマンの生活にも似ていて、狡噛はよく出島のマーケットに行っては自然派食材を買って俺に料理をしてくれた。煙草の匂い、香辛料の匂い、ビールやチェリーコークの匂い。石鹸の匂いにボディクリームの匂い。出島で掘り起こしてきたレコードを聴きながら俺たちはそんな匂いに囲まれて、一日を終える。多くの場合は、セックスをしてから。
これらがなんでもない日常になったのは、運命の巡り合わせというしかない。執行官はこれほど自由はないし、監視官だった頃だってこれほど幸せではなかった。狡噛も放浪中より自由そうで、俺たちは管理されているというのにそれを感じなかった。それは全て花城の手腕なのだろう。俺たちを生かさず殺さず猟犬として躾けて、うまく使うのだ。
989これらがなんでもない日常になったのは、運命の巡り合わせというしかない。執行官はこれほど自由はないし、監視官だった頃だってこれほど幸せではなかった。狡噛も放浪中より自由そうで、俺たちは管理されているというのにそれを感じなかった。それは全て花城の手腕なのだろう。俺たちを生かさず殺さず猟犬として躾けて、うまく使うのだ。
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TRAINING思い出と今の星の違い。800文字チャレンジ48日目。
星空デート(プラネタリウム) 出島では星が見えない。それは夜も煌々と明かりを灯すイルミネーションのせいだったりするのだが、俺はそれが別に嫌いではなかった。東京も似たようなものだったし、防犯のためには明かりは多い方がいい。それでもふと裏路地に入る時、空に見える星が俺は好きだった。かつて紛争国で見た星々のようで、とても美しくて。
ギノとは学生時代に何度か旅行に行ったことがある。彼は唯一コンタクトを取れる肉親である祖母とは別居していたから、ギノを縛る者は誰もいなくて、俺は気まぐれに恋人を誘っては放棄された土地にキャンプを張ってひと夜を過ごすことが多かった。もちろん移動はバイク、と行きたかったのだが、彼の愛犬がいることでそれは却下になった。ダイムは珍しい自然の匂いに興奮して喜んでいて、いつもいろんなところを走り回っていたように思う。俺たちはそんな中で肉を焼き、秘密だとビールを空け、酔っ払って何度もキスをした。セックスもした。でも、最後に見るのは、いつだって星空だった。まんてんの星空。びっしりと宝石で埋め尽くされたような星空。俺たちはそんなところでいつも好きだとか愛しているとか、そんな切実な言葉を交わしたのだった。
965ギノとは学生時代に何度か旅行に行ったことがある。彼は唯一コンタクトを取れる肉親である祖母とは別居していたから、ギノを縛る者は誰もいなくて、俺は気まぐれに恋人を誘っては放棄された土地にキャンプを張ってひと夜を過ごすことが多かった。もちろん移動はバイク、と行きたかったのだが、彼の愛犬がいることでそれは却下になった。ダイムは珍しい自然の匂いに興奮して喜んでいて、いつもいろんなところを走り回っていたように思う。俺たちはそんな中で肉を焼き、秘密だとビールを空け、酔っ払って何度もキスをした。セックスもした。でも、最後に見るのは、いつだって星空だった。まんてんの星空。びっしりと宝石で埋め尽くされたような星空。俺たちはそんなところでいつも好きだとか愛しているとか、そんな切実な言葉を交わしたのだった。
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TRAINING七夕の時思い出す宜野座さんの願い事のお話。800文字チャレンジ16日目。
願いごと(七夕の話) たった一つ願いが叶うというのなら、彼よりも一呼吸先に死にたいと思っていた。そして死ぬ時は看取られたいと思っていた。それは俺が父と母を見て思ったことであり、狡噛が健全な愛情を向けてくれる度に、そんな薄暗いことを思った。狡噛は輝く太陽のようだ。そして俺はその影に入って、暑い日をやり過ごす人間のようだった。狡噛を愛している。最後まで一緒にいたい。けれど、この薄ら寂しい心の中に、俺が死んですぐ彼を引き摺り込みたい、俺はそう思っていたのだ。
「はい、今日はこれで仕事はおしまい。私は上と飲みに行くから、みんな適宜解散してね」
花城がそう言うと、俺たち行動課に所属する三人は、皆それぞれ頷いた。出島に来て長いが、今日はどうしようか。飲みにでも行くか。それとも家に帰って食事でも作るか? デリバリーもいいな。
939「はい、今日はこれで仕事はおしまい。私は上と飲みに行くから、みんな適宜解散してね」
花城がそう言うと、俺たち行動課に所属する三人は、皆それぞれ頷いた。出島に来て長いが、今日はどうしようか。飲みにでも行くか。それとも家に帰って食事でも作るか? デリバリーもいいな。
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TRAINING狡噛さんが初めてプロポーズした日の話。800文字チャレンジ13日目。
未来予想図(プロポーズ)「厚生省に上がったら、一緒に住まないか?」
狡噛がそう言ったのは、俺が部下の文句を言いながらランチを口に運んでいた時のことだった。俺は少しの間ぼうっとした。それは少し考えにくいように思えたからなのだが、何年もずるずると学生時代から付き合っていて、先のことを考えないのも、そう言われればおかしいような気もする。
「それは友人として? 恋人として? それとももっと深い間柄として?」
公安局のランチスペースじゃなく、外の店を選んだのはこれか、と俺は思う。狡噛は少し赤い顔をしていて、それは寒空の元可愛らしく俺に映った。これじゃあまるでプロポーズを催促しているみたいだな、なんて思う。恋人としてじゃなく、もっと先に進みたいっていうんなら俺だってやぶさかじゃない。俺は魚のフリッターを食べる。狡噛はパンをちぎる。プロポーズみたいなものは何度もされているが、直接こんなふうに言われようとしていたのは初めてのことだった。最近は血生臭い事件が多くて、俺たちは駆り出されてばかりだったし。
972狡噛がそう言ったのは、俺が部下の文句を言いながらランチを口に運んでいた時のことだった。俺は少しの間ぼうっとした。それは少し考えにくいように思えたからなのだが、何年もずるずると学生時代から付き合っていて、先のことを考えないのも、そう言われればおかしいような気もする。
「それは友人として? 恋人として? それとももっと深い間柄として?」
公安局のランチスペースじゃなく、外の店を選んだのはこれか、と俺は思う。狡噛は少し赤い顔をしていて、それは寒空の元可愛らしく俺に映った。これじゃあまるでプロポーズを催促しているみたいだな、なんて思う。恋人としてじゃなく、もっと先に進みたいっていうんなら俺だってやぶさかじゃない。俺は魚のフリッターを食べる。狡噛はパンをちぎる。プロポーズみたいなものは何度もされているが、直接こんなふうに言われようとしていたのは初めてのことだった。最近は血生臭い事件が多くて、俺たちは駆り出されてばかりだったし。