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    短い話を放り込んでおくところ。
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    七夕の時思い出す宜野座さんの願い事のお話。
    800文字チャレンジ16日目。

    #PSYCHO-PASS
    #800文字チャレンジ
    800CharacterChallenge

    願いごと(七夕の話) たった一つ願いが叶うというのなら、彼よりも一呼吸先に死にたいと思っていた。そして死ぬ時は看取られたいと思っていた。それは俺が父と母を見て思ったことであり、狡噛が健全な愛情を向けてくれる度に、そんな薄暗いことを思った。狡噛は輝く太陽のようだ。そして俺はその影に入って、暑い日をやり過ごす人間のようだった。狡噛を愛している。最後まで一緒にいたい。けれど、この薄ら寂しい心の中に、俺が死んですぐ彼を引き摺り込みたい、俺はそう思っていたのだ。
     
    「はい、今日はこれで仕事はおしまい。私は上と飲みに行くから、みんな適宜解散してね」
     花城がそう言うと、俺たち行動課に所属する三人は、皆それぞれ頷いた。出島に来て長いが、今日はどうしようか。飲みにでも行くか。それとも家に帰って食事でも作るか? デリバリーもいいな。
    「自分はこれから予定があるので失礼します。それでは」
     そんなことを考えていると、須郷が鞄を担いで抜けてしまった。彼にもプライベートがあると思っていたけれど、いつも俺たちに合わせるから忘れてしまっていた。花城なら女が出来たかとからかっているところだ。
    「それじゃあ、帰るとしますか」
     狡噛がコンピュータの電源を落とす。そうして、俺たちは官舎に戻ることにしたのだった。
     
     官舎に戻る最中、七夕の願い事を書く短冊が吊るされていた。昇級しますように、とのポジティブなものもあれば、上司が酷い目に遭いますように、とのどぎついものもある。狡噛はそれを見て、「願い事なんて考えたこともなかったな」と言った。俺はずっとその願い事に取り憑かれていたのに、だ。俺は苦しくなって、彼が短冊を読むのを待っていた。でも耐えきれずに、俺は彼に言ってしまった。「お前より一呼吸先に死にたいと思ってた、お前に看取られたいと思ってた」って。今じゃあそんなの無理だと分かっているから、流石にそこまでは思わないが。狡噛は少し驚いた顔をした。けれどすぐに俺の手を取って、「それくらい叶えてやるさ」と言った。そこには嘘はないように思えた。
     狡噛が歩き出す。俺は彼の後ろをのろのろとついてゆく。彼がどういう気持ちでそう言ったのかは知らないが、俺をそこまで思ってくれていたって、その事実に顔を赤くしながら。
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    TRAININGお題:「昔話」「リラックス」「見惚れる」
    盗賊団の伝説を思い出すネロが、ブラッドリーとの初めてのキスを思い出すお話です。軽いキス描写があります。
    かつての瞳 ブラッドは酔うと時折、本当に時折昔話をする。
     普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
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    TRAININGお題:「花火」「熱帯夜」「一途」
    ムルたちが花火を楽しむ横で、賢者の未来について語ろうとするブラッドリーとそれを止めるネロのお話です。
    優しいあなた 夏の夜、魔法舎に大きな花火が上がった。俺はそれを偶然厨房の窓から見ていて、相変わらずよくやるものだと、寸胴鍋を洗う手を止めてため息をついた。食堂から歓声が聞こえたから、多分そこにあのきらきらと消えてゆく炎を作った者(きっとムルだ)と賢者や、素直な西と南の魔法使いたちがいるのだろう。
     俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
     しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
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