さかぐちやえこ
DONE平和な町に暮らす新渡米先輩と、ちょっとワケありな町に住んでる小学生喜多くんの話です。腐向け。深夜廻というホラーゲームから設定をお借りしていますが、知らない方でもお読みいただける感じには解説を織り込んでいます。とても素晴らしいゲームなので公式サイトを是非見て雰囲気味わってみてください。
ちなみにタイトル◼️は、本文最後の一文見たらわかります。
■の■■で■■■が■■■る。夏休みが終わって、きらめく日なたの時間が短くなり、そうこうしている間に時は過ぎゆき、あっという間に日が落ちるのが早く、肌寒くなった。
部活の完全終了時間が夕方5時半時、そこから着替えをしたりして完全下校が6時15分なので、帰る時間にはすでに辺りは暗くなりかけてくる。
「先輩、帰りましょう」
一つ後輩の喜多が、すっかり帰り支度を整えて、昇降口の前で軽く上下にホッピングしながら俺を待っていた。
「部活中は動いてるから暑いけど、汗かいた後って止まると途端に冷えますよね」
だからずっと飛び跳ねていた、と彼は言う。
「今そんなに寒がってたら、冬はもっときついよん。この学校、地味に山の上にあるから冬の寒さエグい」
「うわ、知りませんでした。最悪。俺、寒さにあんまり強くないんですよ。ほら、体温低いでしょ」
6965部活の完全終了時間が夕方5時半時、そこから着替えをしたりして完全下校が6時15分なので、帰る時間にはすでに辺りは暗くなりかけてくる。
「先輩、帰りましょう」
一つ後輩の喜多が、すっかり帰り支度を整えて、昇降口の前で軽く上下にホッピングしながら俺を待っていた。
「部活中は動いてるから暑いけど、汗かいた後って止まると途端に冷えますよね」
だからずっと飛び跳ねていた、と彼は言う。
「今そんなに寒がってたら、冬はもっときついよん。この学校、地味に山の上にあるから冬の寒さエグい」
「うわ、知りませんでした。最悪。俺、寒さにあんまり強くないんですよ。ほら、体温低いでしょ」
ライサ
DONE喜多が新渡米と映画に行くのが好きという話。デートの映画はストーリーを楽しむだけじゃないのだ。キネマトグラフ今日は少女漫画が映画になったやつをみるのだ。
「喜多はぜったいポップコーン買うよねん」
先輩はそう言って席に座る。体つきが小さいからぴったりおさまる。ピーコートを脱いだ自分は通路側。灰色のシートの手すりにポップコーンとオレンジジュースのトレイをレゴブロックみたいにはめこむ。もうよそ見しても倒れない。
「家で見るときは飲みもんしか持たないじゃん。持ち込むのおれのほう」
「そりゃ映画みてますし」
「今はぁ?」
「し、しーえむ中ですよね。新渡米先輩もハイ、どうぞ」
「なに味」
先のとがった鼻がしゅっと息をする。
「キャラメルです」
喜多は先にガシャとポップコーンカップに手を入れる。
「だって映画館だと楽しいんですよ」
新渡米せんぱいは、ポップコーンをひと粒ずつ食べる。
638「喜多はぜったいポップコーン買うよねん」
先輩はそう言って席に座る。体つきが小さいからぴったりおさまる。ピーコートを脱いだ自分は通路側。灰色のシートの手すりにポップコーンとオレンジジュースのトレイをレゴブロックみたいにはめこむ。もうよそ見しても倒れない。
「家で見るときは飲みもんしか持たないじゃん。持ち込むのおれのほう」
「そりゃ映画みてますし」
「今はぁ?」
「し、しーえむ中ですよね。新渡米先輩もハイ、どうぞ」
「なに味」
先のとがった鼻がしゅっと息をする。
「キャラメルです」
喜多は先にガシャとポップコーンカップに手を入れる。
「だって映画館だと楽しいんですよ」
新渡米せんぱいは、ポップコーンをひと粒ずつ食べる。
ライサ
DONEキタニトの小話、学校です煙水晶第二校舎のドアを開けた。
喜多は鼻の頭をクシャッとさせた。首を左右に振る。跳ねた髪の毛が新渡米のほほをぴしんと打った。鉄のドアに至るまでの階段で肩を抱いて歩いていたのだ。
「猫みたい」
喜多の先輩は片目を閉じた。おどる髪はよけない。
「だってータバコの臭いして、強くて」
「たしかに残ってるねん屋上なのに」
「さっきまでいたんだ」
「喜多、探偵みたいなこと」
新渡米は温かい初夏のコンクリートに座った。両足を投げ出して弁当箱を乗せる。
「うーん、亜久津先輩かな」
「違うね」
「えっ」
「タバコがちがう」
喜多が下を向くと新渡米もまた上向いていて顔が近かった。先輩の前髪が風に流されて半分おでこが見えていた。でも風が手をやすめればあっという間に元通りだ。
512喜多は鼻の頭をクシャッとさせた。首を左右に振る。跳ねた髪の毛が新渡米のほほをぴしんと打った。鉄のドアに至るまでの階段で肩を抱いて歩いていたのだ。
「猫みたい」
喜多の先輩は片目を閉じた。おどる髪はよけない。
「だってータバコの臭いして、強くて」
「たしかに残ってるねん屋上なのに」
「さっきまでいたんだ」
「喜多、探偵みたいなこと」
新渡米は温かい初夏のコンクリートに座った。両足を投げ出して弁当箱を乗せる。
「うーん、亜久津先輩かな」
「違うね」
「えっ」
「タバコがちがう」
喜多が下を向くと新渡米もまた上向いていて顔が近かった。先輩の前髪が風に流されて半分おでこが見えていた。でも風が手をやすめればあっという間に元通りだ。