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DONE眠れない大雨 シーズン2 ひゅ、と喉が鳴り、暗い部屋に怪物の気配を感じる。隣で寝ている雨の息遣いさえも信じられなくなって、数分悩んだ後に手を伸ばした。雨、雨、どうしよう。いつも起きてるのか分からないようなぼんやりした男が、こういう時に限ってすぐに目を覚ます。それが、申し訳なくて、怖かった。
雨は目を閉じたまま俺の手を取ると、ねれないの、ともごもご口を動かす。ごめん、起こして。なんか怖くて。べつになんもないんだけど。ごめん。矢継ぎ早にそう話して、それでも手を離してほしくなくて、だけどやっぱり怖かった。雨は片目だけ開いて、俺のおでこを触る。俺は涙がこぼれるのを隠す。ああ、だめだ、ごめん、明日早いのにな。雨が体を起こすのに合わせてもう一度謝る。
808雨は目を閉じたまま俺の手を取ると、ねれないの、ともごもご口を動かす。ごめん、起こして。なんか怖くて。べつになんもないんだけど。ごめん。矢継ぎ早にそう話して、それでも手を離してほしくなくて、だけどやっぱり怖かった。雨は片目だけ開いて、俺のおでこを触る。俺は涙がこぼれるのを隠す。ああ、だめだ、ごめん、明日早いのにな。雨が体を起こすのに合わせてもう一度謝る。
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DONEお見合いをしてる恋人を攫う気合があれば続く
ミルクパズルを染めないで お見合い相手のやる気がないとき、どんな対応をするのが良いんだろう。
初めて私と会話をする時に私の目を見ない男性はいない。いたとしても体を見るか、下を向いて黙ってしまうかの二択だ。芸能人のように可愛いというわけではないけれど、容姿に悩んだことはなかった。いつだったか、愛される才能があるのだと友人に言われたことがある。きっとそうなんだろう。そしてその才能を持っていれば、この世界を上手く生きていくことができる。
愛されることを一番に考えなさいと母は言っていた。それさえ考えていれば幸せになれると。母にとってそれはきっと本当で、私にとっては半分足りない。残りの半分は、母の言うことを守るということだった。だから両親の選んだ学校に入り、両親がプレゼントしてくれる鞄で出かけた。短いスカートの女の子は本当の幸せを手に入れることができないのだと父は言って、男の子をコントロールしなさいと母は言う。父には秘密でそれなりの恋愛をしたし、男性という存在のこともそれなりに好きだった。私を求める恋人は可愛いと思っていた。
2144初めて私と会話をする時に私の目を見ない男性はいない。いたとしても体を見るか、下を向いて黙ってしまうかの二択だ。芸能人のように可愛いというわけではないけれど、容姿に悩んだことはなかった。いつだったか、愛される才能があるのだと友人に言われたことがある。きっとそうなんだろう。そしてその才能を持っていれば、この世界を上手く生きていくことができる。
愛されることを一番に考えなさいと母は言っていた。それさえ考えていれば幸せになれると。母にとってそれはきっと本当で、私にとっては半分足りない。残りの半分は、母の言うことを守るということだった。だから両親の選んだ学校に入り、両親がプレゼントしてくれる鞄で出かけた。短いスカートの女の子は本当の幸せを手に入れることができないのだと父は言って、男の子をコントロールしなさいと母は言う。父には秘密でそれなりの恋愛をしたし、男性という存在のこともそれなりに好きだった。私を求める恋人は可愛いと思っていた。
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DONEねむれない大雨「れーちゃん……」
「ん……」
「眠れない、どうしよ」
へら、と笑う表情が今にも泣き出しそうに見えて、彼の柔らかな短い髪を撫でる。全く手のかかる人だ。暗闇が怖いなら泣き喚いたって構わないのに、小さく名前を呼ぶくらいしか助けの求め方が分からない。
愛おしいな、と思う。長い間このひとに光を見ていたから、彼のしるべになれる喜びは最近になって知ったものだ。
「寝れないんですね」
「うん……」
「じゃあ、何しますか」
「でも、早く寝ないと……」
こういう時の先輩は大抵母親の話をする。彼はかつて神童だと言われていたらしく、凡人にはできないことをしなければならないという使命を持った天才なんだとか。小さい頃から優秀だったのはなんとなく分かるし、要領が良い人だとも思うが、正直あまりピンと来ていない。
685「ん……」
「眠れない、どうしよ」
へら、と笑う表情が今にも泣き出しそうに見えて、彼の柔らかな短い髪を撫でる。全く手のかかる人だ。暗闇が怖いなら泣き喚いたって構わないのに、小さく名前を呼ぶくらいしか助けの求め方が分からない。
愛おしいな、と思う。長い間このひとに光を見ていたから、彼のしるべになれる喜びは最近になって知ったものだ。
「寝れないんですね」
「うん……」
「じゃあ、何しますか」
「でも、早く寝ないと……」
こういう時の先輩は大抵母親の話をする。彼はかつて神童だと言われていたらしく、凡人にはできないことをしなければならないという使命を持った天才なんだとか。小さい頃から優秀だったのはなんとなく分かるし、要領が良い人だとも思うが、正直あまりピンと来ていない。