michiru_wr110
PASTstmy 初出2023.2.#stmy元カノアンソロ 「甘い葡萄」にて寄稿させていただきました早乙女さん+名前有モブ♀の作品です。
早乙女さんと中学の同級生だったモブ♀から見た過去と現在。
郁玲前提・捏造多数
アンソロ詳細はこちらからどうぞ
https://twitter.com/hero_inhermind/status/1633456544955392000
写真を巡る想い出(郁玲+モブ♀)「……ポン」
今でもふざけた名前が口をついて出ることに自分でも驚きを隠せない。中学時代の女友達二人と飲んだ帰り道、喧騒の止まないスクランブル交差点を渡り終えてすぐのことだった。急ぎ足の誰かが追い越しざまにぶつかってきて、よろめいたところを反対側にいた男性が受け止めてくれたのだ。訪れた再会は客観的に見ても唐突かつ運命的なシチュエーションだったと思う。
謝罪とお礼を伝えようと咄嗟に顔を上げて、ぶつかる視線。さらさらな黒髪の隙間から見え隠れする切れ長の目には見覚えしかなく、開口一番に馴染みのある呼び名を叫んだ。
「……」
僅かに眉根を寄せた後に、彼は貼り付けたような愛想笑いを浮かべる。
「大変ご無沙汰しております」
8591今でもふざけた名前が口をついて出ることに自分でも驚きを隠せない。中学時代の女友達二人と飲んだ帰り道、喧騒の止まないスクランブル交差点を渡り終えてすぐのことだった。急ぎ足の誰かが追い越しざまにぶつかってきて、よろめいたところを反対側にいた男性が受け止めてくれたのだ。訪れた再会は客観的に見ても唐突かつ運命的なシチュエーションだったと思う。
謝罪とお礼を伝えようと咄嗟に顔を上げて、ぶつかる視線。さらさらな黒髪の隙間から見え隠れする切れ長の目には見覚えしかなく、開口一番に馴染みのある呼び名を叫んだ。
「……」
僅かに眉根を寄せた後に、彼は貼り付けたような愛想笑いを浮かべる。
「大変ご無沙汰しております」
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PASTstmy 初出2021.5.イベント「一ヵ罰ヵ 鬼札ニ戀々」後の捏造・悶々とする早乙女さんと、何も気づいていない玲ちゃんのお話
※当該スト微バレ有・スト内登場キャラが喋っています
確かに好きだった(郁玲) 泉は手の届かないところにいる。昔も……今だって。
だから心を通じ合わせることなど、とうの昔に諦めていた。
* * *
新進気鋭の写真家であるイッセー・ニコ。紆余曲折を経てプレオープンしたギャラリーでは、話の流れから撮影会が開かれることになった。
「花札の絵柄になぞらえた世界観とは、思い付きにしてはできすぎた話だねえ」
服部さんの呟きを聞き流しつつも、泉を呼び出すべくスマホを手に取る。俺は早々に『芒に月』のモチーフとして撮られることが決まったものの、彼の熟考の末隣に女性を写したいという話になったのだ。
お人好しらしく呼び出しを二つ返事で受けた泉は一時間ほどで到着し、挨拶もそこそこに早速着替えへと引っ張り出されている。
5243だから心を通じ合わせることなど、とうの昔に諦めていた。
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新進気鋭の写真家であるイッセー・ニコ。紆余曲折を経てプレオープンしたギャラリーでは、話の流れから撮影会が開かれることになった。
「花札の絵柄になぞらえた世界観とは、思い付きにしてはできすぎた話だねえ」
服部さんの呟きを聞き流しつつも、泉を呼び出すべくスマホを手に取る。俺は早々に『芒に月』のモチーフとして撮られることが決まったものの、彼の熟考の末隣に女性を写したいという話になったのだ。
お人好しらしく呼び出しを二つ返事で受けた泉は一時間ほどで到着し、挨拶もそこそこに早速着替えへと引っ張り出されている。
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PASTstmy 初出2021.7.早乙女さんと玲ちゃんの関係性にまつわるひかるくんの所感について
アンビバレンスの見本 (郁玲・ひかる目線) まるで、郁人さんの為にあるような言葉だと思う。
ブロイラーが用語を作り出し、フロイトが精神分析理論に組み入れたとされるそれは、対象人物に向けて相反する感情を抱くことを指している。
* * *
とんでもなく乱暴な口調と悪口の応酬。
理路整然となじりながら、テーブルの下、足先は対象人物のヒールにさりげなく触れている。
眉間に皺を寄せてつく、これ見よがしのため息。そして。
「休憩を入れてやるから消費に付き合え」
「え……っと?」
ああ。あのシュークリーム。朝から並んで買ったって話してた、期間限定フレーバーの。
立ち上がった郁人さんがこちらを一瞥したので、僕もさりげなくパソコンのモニターに視線を戻した。〝対象人物〟との仕事の話が終わるまでは、こちらに火の粉が降りかかることはないと踏んでいる。
1614ブロイラーが用語を作り出し、フロイトが精神分析理論に組み入れたとされるそれは、対象人物に向けて相反する感情を抱くことを指している。
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とんでもなく乱暴な口調と悪口の応酬。
理路整然となじりながら、テーブルの下、足先は対象人物のヒールにさりげなく触れている。
眉間に皺を寄せてつく、これ見よがしのため息。そして。
「休憩を入れてやるから消費に付き合え」
「え……っと?」
ああ。あのシュークリーム。朝から並んで買ったって話してた、期間限定フレーバーの。
立ち上がった郁人さんがこちらを一瞥したので、僕もさりげなくパソコンのモニターに視線を戻した。〝対象人物〟との仕事の話が終わるまでは、こちらに火の粉が降りかかることはないと踏んでいる。