nicola731
DOODLEメリクリだオラァ!!!!顕蘆の思いつき短文 燈の火も消えて宵闇の中。御帳台からは脛の長い足が伸びていて、獣のような爪先が丸まったり開いたりしていた。浜床の上、帷の中で低く抑えられた囁きが這っていた。
「なんでも……玉などに呪を込める法があるとのことで……拙僧、とても興味がそそられ……」
真っ新な絹の色をした肌を露わにして、鍛え上げられ、引き絞られた弓のようにしなやかな肢体を横たえた法師は迦陵頻伽のように甘く美しい声で共寝の相手に囁いた。長い化生じみた黒と白の髪を寝床の上いっぱいに広げて、後朝のように悩ましげな溜息を吐きながら。
そんな共寝相手の老爺は殆ど寝落ちしていた。
「あ……? おお……どうまん……欲しいなら好きなだけ買うてやろう……」
953「なんでも……玉などに呪を込める法があるとのことで……拙僧、とても興味がそそられ……」
真っ新な絹の色をした肌を露わにして、鍛え上げられ、引き絞られた弓のようにしなやかな肢体を横たえた法師は迦陵頻伽のように甘く美しい声で共寝の相手に囁いた。長い化生じみた黒と白の髪を寝床の上いっぱいに広げて、後朝のように悩ましげな溜息を吐きながら。
そんな共寝相手の老爺は殆ど寝落ちしていた。
「あ……? おお……どうまん……欲しいなら好きなだけ買うてやろう……」
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DOODLE若顕光殿と道満の捏造小話。多分けものっくす晴道の閑話みたいなもの。顕蘆(顕道)。顕光殿の酒癖がこれくらい性質悪かったらイヤだなぁという妄想。顕蘆(顕道) 年若い故なのか、顕光はあまり酒癖が良いほうではない。だから普段から気を付けているのだが、これまで上手くいったことなど一度もない。
顕光の邸宅で月見の宴を開くことになって当日は多くの客が訪れた。白拍子もやって来て、賑やかで華やかな、大貴族の邸には相応しい宴だった。代替わりして数年経ったばかりの若造が亭主を務めるものであっても客は寛大だった。酒が飲めて歌い踊る女共が見られたら彼等は満足なのだった。
訪問客に一通り挨拶を済ませた顕光は上座で脇息に体を預けて、酒を飲み出した。白拍子達は誰も彼もが美しく、良い声をしていた。だが彼は些か物足りなかった。柔らかくしなやかな肢体も、張りのある麗しい声も、顕光は既に最上のものを知っている。だから何だか物足りない。元服する前からの知己である法師陰陽師のほうがずっと良い。
1632顕光の邸宅で月見の宴を開くことになって当日は多くの客が訪れた。白拍子もやって来て、賑やかで華やかな、大貴族の邸には相応しい宴だった。代替わりして数年経ったばかりの若造が亭主を務めるものであっても客は寛大だった。酒が飲めて歌い踊る女共が見られたら彼等は満足なのだった。
訪問客に一通り挨拶を済ませた顕光は上座で脇息に体を預けて、酒を飲み出した。白拍子達は誰も彼もが美しく、良い声をしていた。だが彼は些か物足りなかった。柔らかくしなやかな肢体も、張りのある麗しい声も、顕光は既に最上のものを知っている。だから何だか物足りない。元服する前からの知己である法師陰陽師のほうがずっと良い。
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PAST生前の顕光殿と道満「山上の垂訓焉んぞ狐に人心を与えんや( https://privatter.net/p/7210021 )」のボーナストラック。
疑うらくは是れ銀河の九天より落つるかと 奇怪な法師陰陽師が播磨から出て来た、なんて話は顕光の耳にも入っていた。親しい官吏などいないので家司に教えてもらった。
なんでも顔は天女のようで、鬼か何かのような体躯をしているらしい。「じゃあ鬼やろ」と顕光は思ったが、なんでも人を助け人に優しいらしい。「じゃあ優しい鬼やろ」と思った。家司には「んなワケないでしょうが」と言われた。特に興味が無かった。都を害さず、帝を害さず、彼の家を害さなければ内裏に鬼が出ようが構わない。
老いさらばえてみっともない愚か者。顕光はそう思われ、そう思っていた。辣腕を振るう従兄弟の影に覆われて我が家は翳るばかり。顕光は従兄弟を憎しと思いつつも、頭の内で許容している。息子、娘等が生きるに困らずに済めば最悪それでも良かった。
1477なんでも顔は天女のようで、鬼か何かのような体躯をしているらしい。「じゃあ鬼やろ」と顕光は思ったが、なんでも人を助け人に優しいらしい。「じゃあ優しい鬼やろ」と思った。家司には「んなワケないでしょうが」と言われた。特に興味が無かった。都を害さず、帝を害さず、彼の家を害さなければ内裏に鬼が出ようが構わない。
老いさらばえてみっともない愚か者。顕光はそう思われ、そう思っていた。辣腕を振るう従兄弟の影に覆われて我が家は翳るばかり。顕光は従兄弟を憎しと思いつつも、頭の内で許容している。息子、娘等が生きるに困らずに済めば最悪それでも良かった。
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DOODLE「顕光殿が死んだ時の道満書きたいけど怒られそうだからやめとく」と言ったがあれは嘘だ。生前顕光殿と道満の話。捏造過多。閲覧非推奨。北天に沈まず光る星 ともに滅びるという約束もまた /松野志保
心中に能わず 顕蘆(顕道) いよいよ明日は納棺であるが、顕光の臨終は物寂しいものだった。臨終の瞬間まで傍にいたのは道満と僅かな使用人ぐらいのものだった。老爺の死に水を取った道満は死の穢れに触れることのできない家人達のために湯灌を施した。そうして出棺の日も墓所の場所も占を行って指定した道満は、おいおいと泣きながらずっと骸の傍に侍っていた。殆ど物音のしない屋敷の奥から「顕光殿、顕光殿」と啜り泣く声が微かに聞こえてくる。使用人達は主人が道満にとても良く目を掛けていたことは知っていたので、二人きりにしてやった。あの化生のような見た目でも真面目で恩義に篤いことは分かっていた。
道満は大きな体を横たえて小さな老人の骸の傍で滂沱していた。板間に水溜まりができるほどに涙を流し、念仏を唱えることさえ忘れていた。遺骸は生前よりも痩せて縮まった気がする。既に顕光の魂はそこには無く、残り香が漂うばかりだった。
1638道満は大きな体を横たえて小さな老人の骸の傍で滂沱していた。板間に水溜まりができるほどに涙を流し、念仏を唱えることさえ忘れていた。遺骸は生前よりも痩せて縮まった気がする。既に顕光の魂はそこには無く、残り香が漂うばかりだった。