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    nicola731

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    nicola731

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    生前の顕光殿と道満
    「山上の垂訓焉んぞ狐に人心を与えんや( https://privatter.net/p/7210021 )」のボーナストラック。

    #顕蘆
    dazzlingReeds
    #顕道
    keyence

    疑うらくは是れ銀河の九天より落つるかと 奇怪な法師陰陽師が播磨から出て来た、なんて話は顕光の耳にも入っていた。親しい官吏などいないので家司に教えてもらった。
     なんでも顔は天女のようで、鬼か何かのような体躯をしているらしい。「じゃあ鬼やろ」と顕光は思ったが、なんでも人を助け人に優しいらしい。「じゃあ優しい鬼やろ」と思った。家司には「んなワケないでしょうが」と言われた。特に興味が無かった。都を害さず、帝を害さず、彼の家を害さなければ内裏に鬼が出ようが構わない。
     老いさらばえてみっともない愚か者。顕光はそう思われ、そう思っていた。辣腕を振るう従兄弟の影に覆われて我が家は翳るばかり。顕光は従兄弟を憎しと思いつつも、頭の内で許容している。息子、娘等が生きるに困らずに済めば最悪それでも良かった。
     極論、同じ血であればどちらが豊かになろうと家名は変わらないのだから。

     労働意欲はあるので今日も元気に参内した。相変わらず集まりの悪い会議を済ませて、かったるい気持ちで顕光は庭を歩いていた。催事の日取りを決めねばな、娘の風邪避けに護符が欲しいな、等と物思いに耽りながら歩いていた。
     気付くと彼の足元に大きな影が差していた。「えっ?」と顔を上げれば綺麗な顔の化物が立っていた。化物は硬直する顕光を見て静かに礼をした。それで漸く「あ、此奴か」と我に帰った。
    「お、驚いた……お前があれか、播磨から来た法師陰陽師か。いやぁ、噂に違わず背があるな」
     口からでまかせを交えつつ名を訊ねる。
    「蘆屋道満と申します。藤原顕光殿」
     微笑めば釈迦仏の比丘尼も斯くやの美しさだった。「おおー」とつい顕光は声を上げてしまう。二人は少し立ち話をして、その日は別れた。


     聞いて回れば道満の噂は案外良いものが多く、実際に話せば頭の良さが伺えた。顕光は素直に「凄いな」と褒めるのだが、道満は謙遜する。拒むと言い換えても良い程に。
    「そうかそうか。道満法師、私なんぞに褒められるのはそうも不服か」
     そう揶揄えば道満は狼狽えて必死に首を横に振る。この辺りで、顕光はこの法師陰陽師の為人を把握した。
     道満は愚かなまでに素直で飼いやすい。首に綱を付けるのは随分容易いことだろう。彼は道満をそう評価する。それから懸念が浮かんでくる。従兄弟の子飼いに最優を誇る陰陽師がいる。まさかとは思うが、それが御し切れなかった時のための予備はいるだろう。道満は恐らく死ぬだろうが晴明も無事では済まないだろう。何かあった時のために対抗出来る手段は準備しておきたい。
     宮仕の老爺はそう考えた。
    「そうだ、道満法師よ。護符をくれまいか? 病避けの護符などあると良いのだが」
     顕光の依頼に道満は「拙僧で良ければ」と頷きつつも不可解そうな顔をする。
    「何故拙僧に? 陰陽寮の方々には優秀な方がいらっしゃるでしょうに。それこそ晴明殿に」
    「安倍晴明なぁ……確かに優秀だ。寸分の狂い無く私の欲しいものを寄越すだろう」
    「でしたら」
    「ただな、目の前で手を叩いて『はい出来ました』と渡されると『本当に効くのか?』と疑ってしまうものよ」
     「このような心持ちでは効くものも効くまい」と顕光は言う。確かにと道満は頷く。どれだけ完璧な道具でも、使う側に左右されることはある。
    「お前はあれこれ質問して、提案して、手間を掛けてくれるだろう? そうすると頼んだ側も安心するのだ」
    「成る程」
    「というわけで、頼むぞ道満法師。安倍晴明では出来ぬ仕事だ」
     顕光の言葉に得心して道満は改めて引き受けた。そんな法師を見て「本当に容易いな」と右大臣は思った。
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    nicola731

    DOODLE顕道(顕蘆)現パロ
    顕光殿がヤーさんで道満が腹心兼愛人みたいなポジの話。らくがき。https://twitter.com/nicola731/status/1367080549974609922?s=21 設定は上記の通り。参考文献は「デストロ246」と「来世は他人が良い」です。
    そろそろ鰆の旨い季節だと思いながら、顕光は夜の執務室で決算書類を処理していた。表稼業の不動産と輸入会社の書類だけで机は一杯になる。なのに裏稼業のほうまで膨大な書類になるのだからうんざりしてしまう。ただサインをするだけなのに朝からやってまだ終わらない。
     万年筆を広い机に放り、顕光は立ち上がった。卓上の電話で隣室にいる秘書に内線を掛ける。
    『はい、橘で御座います。お茶ですか? 旦那様』
    「まだ何も言ってないだろ。今日はもう仕事しないぞ俺は。疲れた、飯食ってくる」
    『お供しましょうか?』
    「いや、お前はもう帰りなさい。道満と寿司食ってくる。あれは今どこにいるんだ?」
     顕光が一番の腹心の居所を聞くと秘書は『地下で作業中です』と答えた。顕光は秘書に礼と労いを言い、電話を切った。上着を羽織って彼は執務室を出る。顕光が所有するこのビルには地下がある。執務室は最上階、道満がいる作業場は地下の一番下にある階だ。エレベーターに乗り、一番下へと下りていく。
     スマートフォンで最寄りの寿司屋を探している内に、エレベーターの箱は地底へと辿り着いた。
    「寿司、寿司屋……舟盛り出してもらえるところが良いな……道 2576

    nicola731

    DOODLE生前の顕光殿と道満の顕道。捏造。息抜き。
    おれのかんがえたさいきょうの顕光殿。
    内裏から帰る道中、顕光はうとうとしながら牛車の揺れに身を任せていた。もう日が暮れ始めていた。牛が一声吼えた。早く帰らなければ、夜はすぐに迫って来る。牛にさえ、夜の都は恐ろしいのだ。外の従者達も不安であろうと主人は案じる。
     顕光は微睡みを振り払おうと頭を振った。その時、揺れる牛車の音に混じって女の啜り泣きが聞こえた。空耳かと思って耳を澄ます。やはり、若い女が啜り泣いている。
    「おい、止めてくれないか」
     顕光が声を掛ければ車は止まる。家令が外から主人を呼んだ。
    「顕光様、何かありましたか?」
    「何処かで娘が泣いておらんか? 声が聞こえる」
    「見当たりませんが。もう黄昏ですよ。この辺りに住まう者であれば疾く帰る時分です」
    「お前、少しその辺を探してみなさい。いなければいないで構わんから」
     家令は主人の言葉に溜息を吐く。それから従者達の中から一人呼んで、二つ先の通りまで見に向かった。
     鬼の出る都で女の啜り泣きが聞こえる。娘を持つ顕光にとっては他人事ではないのだ。心配にもなる。
    「本当に心配だ。聞き間違いであればそれが一番良いのだが」
     誰に聞かすわけでもなくそう呟けば、若い女の声が物見 2814

    nicola731

    DOODLE顕道(顕蘆)まで行かない現パロ
    元ネタ
    https://twitter.com/nicola731/status/1382088577497001984?s=21
    「現パロ晴明さんの職業を映画監督にするともれなく主演俳優の道満がずっと「何言ってんだコイツ」って顔してるメイキング映像が浮かぶ(テネットのあれ)」
    今後道満は同級生の納言ちゃんに「それは推しだよ」とか教えてもらう。
    夏休みの間に行われる夏期講習は半日で終わってしまった。高校一年生だから今から必死に受験勉強をするのも、と教師はやんわりと生徒達を宥めた。道満もその一人で、真夏の昼過ぎに学校の外へと放り出された。図書室や自習室を使えれば良かったのだが三年生達で一杯だった。仕方なく道満は日陰を渡り歩いて駅まで向かう。
     まだ高校で友人はできていないし、そもそも道満はあまり人付き合いをしなくても平気だったから遡って友人らしい友人がいたことはない。だから一人で図書館にでも行こうと思った。駅まで真っ直ぐ大通りを進んでいく。道の日当たりは良くて、歳の割りにかなり身長の高い道満の頭はじりじりと灼かれた。酷く熱くて参ってしまう。
     涼しいところに行きたいと思った。それでふと駅の近くにある劇場の掲示が目に入った。平時であれば何とも思わないが、暑さのせいで変な気紛れを起こした。財布にはチケット代分の金額が入っている。高校生になったのだから「観劇」を経験してみるのも良いだろうと思った。子供らしい背伸びだった。
     チケット売り場で当日券を買い求めて、フライヤーと共に受け取って席へと向かうと最前列だった。道満は「マズい」と思っ 2331

    nicola731

    DOODLE顕道(顕蘆)現パロ
    顕光殿がヤーさんで道満が腹心兼愛人みたいなポジの話。前回の話
    https://poipiku.com/IllustViewPcV.jsp?ID=1112421&TD=4197
    https://twitter.com/nicola731/status/1367080549974609922?s=21 設定は上記の通り。参考文献は「デストロ246」と「来世は他人が良い」です。
    顕光は表向き、ビル屋の社長で中古車販売も手掛けていて飲食店を小規模ながらチェーン展開している、つまり実業家だった。だからその付き合いでパーティーに呼ばれることもする。人付き合いは疲れるが華やかな場は好きだ。可愛がっている自分の腹心を飾り立て、隣に侍らして来場客全員に自慢できる折角の機会が与えられる。可愛い養い子を自慢できるとなれば顕光も俄然行く気になる。秘書の呆れた視線を気にすること無く仕立屋を呼んであれこれと生地を体に当てさせて、それこそ道満が飽きてふて寝するまで注文を付ける。月一でパーティーにお呼ばれしたいくらいだった。
     反面、裏稼業の会合やら商談やらは嫌になる。駆け引きも面倒だし金勘定で一々ケチを付けてくる奴もいるので苛立つ。顕光は自分が賢い人間だとは思わないが馬鹿馬鹿しい話し合いはうんざりする。それに護衛の数は限定されるのでいつも道満を連れて行くのだが、相手方が道満を見て怯えるのもムカつく。


     今夜は嫌いな裏稼業の会合がある。顕光は行く前から嫌だったし、会場に到着してからも気分は底に落ちていた。壁の花を決め込んで、供に連れてきた道満の顔を眺めていないとやっていられない。道 1746

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